見に行こう!! 昼間のパパ

筑波研究所

私たちの身の回りには化学の製品がいっぱい。プラスチックや洗剤、繊維、医薬品など、数え上げればきりがないほどです。さらに次世代エレクトロニクスや宇宙開発など最先端の科学技術、技術開発を支えているのも化学や化学工業。こうした新しい技術や材料の多くは大学や化学会社の「研究所」から生み出されているのです。そこで住友化学の筑波研究所で高分子材料、電池材料の研究開発の仕事をしているお父さん(中根さん)のところに玄貴(ひろき)君、朱理(あかり)さんの兄妹に訪ねてもらい、“昼間のパパ"の仕事を見てもらいました。
2002年8月23日「化学工業日報」より転載

★今回の登場人物★
中根朱理さん 中根玄貴くん 中根堅次さん

小学1年生

小学3年生

住友化学 筑波研究所
主席研究員


▲住友化学 筑波研究所では快適な環境でさまざまな研究が行われている
▲研究って楽しいものをつくっているの?
さぁ研究室へ
パパ よく来たね。ここがお父さんたちが仕事をしている研究所だよ。お父さんたちの会社は宝塚や千葉などにもたくさん研究所があるけれど、ここの研究所では「新素材」といって、エレクトロニクスやエネルギーなどに使われる、いろいろな新しい材料を創り出すところなんだ。
朱理 きれいだね。あっ、そのガラス、向こうが見えたり、見えなかったりするよ。不思議だね。
玄貴 自動車のバンパーみたいなものもある。
パパ さぁ、お父さんたちの研究室に行ってみようか。
▲レッツゴー!
▲研究室っていろいろな機械があるよ
▲ここをクリックすると何がでるかな?あっ、線が踊ってる
どんな研究しているのかな?
玄貴 お父さんはどういう研究をしているの。
パパ 電池の正極材という新しい材料の開発に取り組んでいるんだ。電池にはプラスとマイナスがあるのは知っているね。プラスが正極、マイナスが負極というんだ。ここが研究室。メガネをかけて。
朱理 この黒い粉はなに。
パパ これが正極材というもの。これとこれとこれとを混ぜて、あることをするとできる。ではクイズです。どうすると黒い粉になるのでしょう。
玄貴 ウーン。
朱理 ウーン。
パパ ヒント。お母さんがスーパーで買い物をして料理を作るね。どうしていますか。
朱理 切ったりね、煮たり、焼く?
パパ ピンポン、正解。焼くことによって初めて正極材料になる。約七百度Cという高い温度なんだよ。
朱理 焼くと違うものになるんだ。
パパ そうなんだ。だからお父さんたちは良い正極材を作るために「何と何と何」を「どのくらい」「どうやって」混ぜ、「どうやって焼いたら」良いのかを研究している。研究というのは「考えて」「実験して」「確かめる」ということなんだ。
▲この黒い粉はなに?
黒い粉の正体は?
玄貴 でも電池には黒い粉なんて見えないよ。
パパ 水や空気と反応すると、だめになってしまうからね。正極と負極の材料をそれぞれシートにして、セパレーターという部品をはさんでサンドイッチみたいにしたものをくるくる巻いて、乾電池みたいなかたちにしたり、板のようにする。この後もれたり、外とふれないように固めてしまうんだよ。だからみんなには見えない。
玄貴 でも、どうしてこの黒い粉が電池になるの。
パパ 良い質問だ。電池というのは化学反応のエネルギーを電気のエネルギーに変えているものなんだ。
朱理 へェー、電池って化学なの。
ケミカル博士 そうなんだ。電池は化学なのだ。少しむずかしくなるが、プラス|正極では「還元」という電子を得る化学反応、マイナス|負極では逆に「酸化」という電子を失う化学反応が起こる。この電子の流れと逆の方向に電流が発生するのが電池。200年も前にイタリアのポルタという人が原理を発見しており、これが電池の原形となっているんだよ。みんながよく使っている乾電池もそうだよ。
パパ 玄貴がゲームボーイによく使っているのは。
玄貴 ゲームボーイアドバンスだよ。単3の乾電池だね。
パパ これはアルカリマンガン乾電池という乾電池。正極が酸化マンガン、負極が亜鉛で、電解液にアルカリを使うことで長時間使えるようにしたものなんだね。ここでも酸化・還元反応が起こっている。
今、お父さんたちが研究しているのは「リチウムイオン電池」という新しい二次電池の正極材料なんだよ。
玄貴 二次電池ってなーに。
パパ 乾電池は一次電池。電気のエネルギーを出すだけで、使い終わるとそれておしまい。それに対して二次電池というのは化学反応が進んで、電気エネルギーを使い終わっても、外から電気を入れてあげるとエネルギーをたくわえることができ、何度でもくり返し使える電池のこと。
将来のエネルギーや地球環境のことを考えると、クリーンで何回も使えるようなエネルギーを開発して、みんなが使う必要があるんだ。お父さんの会社は新しい材料を開発して、エネルギーに利用してもらいたいと考えているんだ。この一つがお父さんたちが研究しているリチウムイオン電池の正極材なんだよ。
リチウムイオン二次電池というのは、リチウムイオンというかたちでエネルギーをためることができるというもので、エネルギーをいっぱいたくわえる能力のある正極材料を発明すれば、それだけ性能の高い電池が開発できることになるわけだ。
朱理 リチウムイオンってどのくらいの大きさなの。
パパ 1ミリメートルの1千分の1のさらに1千分の1くらいかな。もっと工夫するとエネルギーをいっぱいたくわえられるようになる。だからお父さんたちは「どんなもの」を「どのくらいずつ」「どのように」混ぜるか工夫しているんだ。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やパソコンなんかに使われ始めているよ。お父さんたちはもっと良いリチウムイオン二次電池の開発を目指してがんばっているんだ。将来、家の電気や二次電池で動く自動車なんかができるかもしれないね。
ケミカル博士 玄貴君、朱理さん、面白かったかな?
化学って、いろいろなことができるんだね。お父さんたちの仕事もすごい。早く良い正極材ができて、超高性能の電池ができればいいね。