スミカエクセル PESの化学的安定性

  • スミカエクセル PESは、加水分解を起こしません。
  • 強酸には侵される場合がありますので注意を要します。
  • スミカエクセル PESは非結晶性ポリマーの中では、耐薬品性に優れますが、使用条件に応じて注意が必要です。ある種の有機薬品、特にケトン、エステルにより、ストレスクラッキングを受けます。さらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)、芳香族アミン、ニトロベンゼン、およびある種の塩素化水素(ジクロロメタン、クロロホルムなど)のような極性の強い溶剤には溶解します。
  • 脂肪族炭化水素、アルコール、ある種の塩素化炭素水素、一部の芳香族薬品、オイル類、グリースには優れた耐性をもちます。また使用条件次第では、たいていの漂白剤、殺菌剤の影響を受けません。
    実用にあたっては、実成形品での評価が必要になります。

耐熱水性

加水分解を起こさず、160℃の熱水、スチーム下でも適用できます。ただし、吸水に伴う特性変化に注意が必要です。

表1 熱水中、荷重下での耐性(熱水 90℃)

応力(MPa)
13 20 26 33 40
スミカエクセル PES 4100G R56.5 R20.2 R15.3 R12.5 -
4800G 989.6 R65.5 R18.7 - -
4101GL30(GF30%) - - 987.3 732.5 R25.5
PPS(GF40%) - - R130 R87 -

表中[R=Ruptured、数字は経過時間]
PES4100Gは、13MPaの荷重下では、56.5時間でクラック発生。
PES4101GL30は、26MPaの荷重下では、987.3時間まで問題なし
(987.3時間でクラックが発生することを意味しません)。

表2 140℃での耐熱水性(4100G)

期間(週) 引張強度(MPa) 変化率(%) シャルピー衝撃強度(J/m) 変化率(%)
コントロール 81 100 382 100
2 88 108 176 46
7 93 114 137 35
14 92 113 137 34
29 81 100 137 37
42 84 104 147 39
  • 140℃でのスチーム滅菌
    スミカエクセル PESを、140℃で24時間スチーム滅菌をしても引張強度は、なんら変化を示しません。
    重量増加は1%です。

※4100Gよりも高分子量である4800Gの方が苛酷な条件の熱水に耐えます。

耐薬品性

ガソリン、エンジンオイルなどのオイル、グリース類、およびクロロセン、フレオンなどの洗浄溶剤に耐えます。ただし、アセトン、クロロホルムなどの極性溶剤には侵されますので、使用にあたっては注意が必要です。一方、耐ストレスクラッキング性、非晶性樹脂の中で最も優れています。(表3)。
また、高温下でもアルカリ、酸に耐性があります。

表3 無機薬品に浸漬した場合の重量および引張強度の変化

薬品名 グレード 温度(℃) 重量変化 引張強度変化(%) 備考
浸漬時間 重量変化 浸漬時間(日)
(日) (Wt%) 14 30 90 180 360
4100G 室温 1 0.43 - -17.7 -16.6 -21.1 - -
4100G 50 - - - -13.5 -13.1 -17.7 - -
4100G 100 - - 7.0 7.4 9.8 9.2 9.5 -
10%塩酸 4100G 室温 180 1.95 -15.6 -14.9 -17.8 -21.1 - -
濃塩酸 4100G 室温 180 2.19 - -6.3 -12.2 -21.1 - -
15%塩酸 4100G 90 - - - - -40.4 -49.0 -53.0 かなりクレーズ発生
10%硫酸 4100G 室温 180 1.82 - -13.2 -17.7 -23.4 - -
50%硫酸 4100G 60 14 -0.39 6.3 - - - - -
50%硫酸 4101GL30 60 14 -0.20 - - - - - -
濃硫酸 4100G 室温 - - - - - - - 溶解
25%硫酸 4100G 90 - - - - 2.0 3.0 7.0 -
40%硫酸 4100G 60 14 -0.55 - - - - - -
40%燐酸
40%硫酸 4101GL30 60 14 -0.37 - - - - - -
40%燐酸
10%硝酸 4100G 室温 180 2.27 - - - - - -
濃硝酸 4100G 室温 - - - - - - - 溶解
5%硝酸 4100G 90 - - - - 0.0 -29.0 -24.0 わずかにクレーズ
10%苛性ソーダ 4100G 室温 180 1.79 - -13.9 -18.2 -22.3 - -
飽和苛性ソーダ 4100G 室温 180 0.82 - -4.8 -11.0 -14.2 - -
5%苛性ソーダ 4100G 90 - - - - 3.0 2.0 6.1 -
飽和塩化カリ 4100G 室温 120 1.46 - - - - - -
飽和次亜塩素酸ソーダ 4100G 室温 180 1.42 - -9.8 -15.8 -19.6 - -
25%飽和次亜塩素酸ソーダ 4100G 90 - - - -10.0 -9.0 -6.0 - -
10%水酸化アンモニウム 4100G 室温 120 1.63 - - - - - -
過酸化水素水 4100G 室温 120 2.52 - -9.8 - - - -
塩素化臭素水(PH4) 4100G 室温 180 1.42 - -9.8 -15.8 -19.6 - -
5%みょうばん 4100G 90 - - - - -8.0 -11.0 -12.0 わずかにクレーズ
亜硫酸ガス 4100G 室温 180 8.49 - -15.0 - -34.0 - -
二酸化窒素 4100G 室温 180 1.19 - -4.5 - -4.5 - -
六弗化硫黄 4100G 室温 30 -0.11 - 2.4 - -19.6 - -
塩素 4100G 室温 28 0.47 - -62.8 - - - クラック発生

耐有機薬品

耐ストレスクラッキング性

引張衝撃試験片(1.6mm厚)に一定荷重をかけ、各薬品に最大20分間浸漬し、試験片の状態を凡例にしたがい示します。

表4 耐ストレスクラッキング性

応力 10MPa 応力 19MPa
ポリエーテルサルホン ポリサ
ルホン
ポリカー
ポネート
変性
PPO
ポリエーテルサルホン ポリサ
ルホン
ポリカー
ポネート
変性
PPO
4100G 4800G 4101GL30 非強化 非強化 非強化 4100G 4800G 4101GL30 非強化 非強化 非強化
アセトン R1S R4S R2S R1S R1S R3S R2S R1S
メチルエチルケトン R1S R2S R1S R18 R1S R1S R1S R5 R20S
シクロヘキサノン R1S R19S D D D R1S R5S D D D
ベンゼン C20 R1S R4 D R2 C20 R1S R3 D
トルエン R1S R11 D R6 C20 R1S R3 D
キシレン R4S R15 D R2S R11 D
トリクロロエチレン C20 C20 D D R6 R11 D R17 D
1.1.1トリクロロエタン
(クロロセン)
R8S R3 D R3S R1 D
四塩化炭素 SLC20 R6S D R3 R3S D
1.2ジクロロエタン R1S R1S D D D R1S R1S D D D
パークロロエチレン C20 R1S D R8 R1S D
クロロフォルム R1S R1S D D D R1S R1S D D D
トリクロロトリフルオロエタン
(フレオン)
D D
メタノール
エタノール
n-ブタノール C20 C20
エチレングリコール C20 C20
2-エトキシエタノール C20 SLC20 C20 R17 C20 C20 C20 R10
プロパン1.2ジオール
ヘプタン SLC20 R19
酢酸エチル R31S C20 R3S R17S R7 R1S R4
ジエチルエーテル C20 SLC20 C20 R1 C20 C20 R7 R1 R15
二硫化炭素 R8S R1S D R5S R1S D
ガソリン C20 C20 R3 R1
軽油
(凡例) …試験片が20分間浸漬後も全く変化しなかった。 R8 …8分間浸漬後、割れた。
C20 …20分間浸漬後、クレージングが起こった。 R2S …2秒浸漬後、割れた。
SLC20 …20分間浸漬後、わずかにクレージングが起こった。 D …試験片が溶解した。

溶解性

スミカエクセル PESは極性ポリマーなので極性溶媒に溶けます。スミカエクセル PESの溶解性は、コーティング用途、溶剤接着において重要です。
スミカエクセル PESの溶剤には下記のものがあります。
ジメチルスルホキシド、N.N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド。

重量変化、引張強度変化

種々の有機薬品に浸漬した場合の重量変化を表5に示します。非溶媒に対しては浸漬温度、時間により、-0.5~2%の重量変化を起こしますが、寸法は安定です。部分溶剤に対しては一般に軟化、膨潤し、重量は著しく増大します。

表5 有機薬品に浸漬した場合の重量および引張強度の変化

商品名 グレード 温度
(℃)
重量変化 引張強度変化 備考
浸漬時間
(日)
重量変化
(wt%)
浸漬時間(日)
7 30 90 180 360
25%酢酸 4100G 90 - - - - -3.00 -27.00 -42.00 360日ではクレーズ発生
氷酢酸 室温 30 0.31 - - - - - -
5%フェノール 室温 90 6.66 -29.70 -35.70 -45.80 - - -
無水ヒドラジン 室温 14 3.50 - - - - - 軟化
ベンゼン 室温 180 1.48 -3.20 -3.10 -8.60 -13.50 - -
キシレン 室温 7 0.49 - - - - - -
ヘプタン 室温 180 0.21 -0.80 -1.00 -5.80 -10.00 - -
シクロヘキサン 室温 120 0.12 - - - - - -
メタノール 室温 14 2.09 - - - - - -
エタノール 室温 180 1.46 -2.20 -5.00 -13.60 -18.70 - -
エチレングリコール 室温 120 0.53 - - - - - -
プロピレングリコール 100 14 -0.36 - - - - - -
グリセリン 150 14 0.06 - - - - - -
ホワイトスピリット 130 7 -0.51 +21.90 - - - - わずかにクラック
酢酸エチル 室温 60 10.70 - - - - - 軟化
酢酸アミル 室温 120 -0.08 - - - - - -
ジエチルエーテル 室温 120 2.91 - - - - - -
四塩化炭素 室温 180 0.44 -0.40 -0.30 -6.40 -11.30 - -
1.1.1-トリクロロエタン
(クロロセン)
室温 120 1.01 -10.20 -19.20 -32.80 -51.60 - -
Genklene 室温 120 1.13 - - - - - -
パークレン 室温 120 0.78 - - - - - -
North Sea Gas 室温 180 0.01 -0.90 -0.34 - 0.20 - -
エチレンオキサイド 室温 190 7.59 - -14.00 - -39.10 - 140kg/cm2の応力下ではクラック
プロピレンガス 室温 180 0.21 -0.60 - - -0.11 - -

洗浄溶剤

特に塗装または接着などを行うときには、成形品表面のグリース、オイル、離型剤を除去することがしばしば必要になります。そのときには、アセトン、メチルエチルケトンなどの洗浄溶剤の使用は避けてください。表6に、4100Gへの洗浄溶剤の影響を示します。

表6 洗浄溶剤の影響(4100G)

洗浄溶剤(還流下) 時間(分) 硬度(初期値=98) 重量増加(%)
Arklone P 2 98 0
10 98 0
30 98 0
Arklone L 2 98 0
10 98 0
30 98 0
Genklene 2 98 0
10 98 0
30 98 0
Trinklone A 2 98 0
10 98 1
30 98 1
Trinklone N 2 98 1
10 表面にクラック発生 1
30 表面にクラック発生 2
パークロロエチレン 2 98 0
10 98 0
30 98 0
塩化メチレン 2 91 3
10 溶解
30 溶解

耐オイル、ガソリン(およびトランスミッションオイル)性

表7 オイル、ガソリン中での重量変化(4100G)

環境 浸漬時間(日) 温度(℃) 重量変化(%)
亜麻仁油 180 室温 0.63
Deep Flying Oil 2 180 -0.10
シリコーンオイル(ICI 190) 180 室温 0.37
Veedol ATF 3433(トランスミッションオイル) 365 130 0.38
Castrol ATF 90 160 -0.55
Shell Diala トランスオイル 180 室温 0.30
Castrol ATF Solvent flushing Oil 90 室温 0.50
Duckhams 20/50 Oil 90 160 2.84
Gunk 90 室温 0.55
98オクタンガソリン 180 室温 0.60
3 Star ガソリン 90 室温 0.20
ASTM II Oil 7 室温 0

図1 トランスミッションオイル中での機械的性質の変化(4100G)

トランスミッションオイル中での機械的性質の変化(4100G)

(浸漬条件)
トランスミッションオイル VEEDOL ATF
温度:130℃

表8 ガソリン中での耐ストレスクラッキング性(室温)

グレード 環境 応力(MPa)
9 19 28 37
4100G ディーゼルガソリン 20 20 20 20
4100G 97オクタンガソリン 20 20 SLC20 C20
4100G 100オクタンガソリン 20 R270h C20 R19
4100G パラフィン 2110h 2110h 2110h 2110h
4101GL30 97オクタンガソリン 20 20 20 20
4101LG30 100オクタンガソリン 360h 360h 20 20
R :クラック
C :クレーズ発生
SLC :わずかにクレーズ発生
h :時間 特に単位のないものは分
(凡例) 20 :20分間問題無し
R270h :270時間でクラック発生
2110h :2110時間まで問題なし

表9 オイル(Vactralite Oil)中での耐ストレスクラッキング性(100℃)

グレード ノッチ半径
(mm)
応力(MPa)
5 10 20 25 30 40
4100G 0.01 2000h R150h - - - -
4100G 0.25 2300h R110h - - - -
4100G 0.50 - 1450h R330h - - -
4100G 1.00 - 2000h 2000h - 3000h R790h
4100G 2.50* - - 2300h - 2000h R700h
4101GL20 0.50 - - - 1632h R460h R160h

*モールドノッチ
(*印のないものはマシーンノッチ)

(凡例) 20 :20分間問題無し
R270h :270時間でクラック発生
2110h :2110時間まで問題なし

表10 タービン・オイル中での耐ストレスクラッキング性(160℃)

グレード オイル ノッチ半径
(mm)
応力(MPa)
10 20 30 40
4800G Aeroshell 555 2.5 3000h R1h - -
4101GL20 Aeroshell 555 0.5* 250h R3h - -
4101GL30 Aeroshell 555 2.5 - 3700h - -
4800G Esso Turbo 2380 2.5 3200h - - -
4101GL30 Esso Turbo 2380 2.5 - - 1650h R2h
4800G Esso Turbo 2389 2.5 1400h R20h - -

*モールドノッチ
(*印のないものはマシーンノッチ)

(凡例) 20 :20分間問題無し
R270h :270時間でクラック発生
2110h :2110時間まで問題なし

表11 オイルの機械的性質に及ぼす影響(4800G)

オイルタイプ 温度(℃) 浸漬時間(週)
2 4 6 16 32 52
ミネラルオイル 100 + + + + + +
120 + + + + 0 0
140 + 0 0 0 0
合成炭化水素油 100 + + + + 0 0
120 + + + + 0 0
140 0 0 0 0 -
シリコーンオイル ジメチル 120 + + + + 0 0
160 + 0 0 0 0 0
メチルフェニル 120 + + + + + +
140 + + 0 0 0
160 + 0 0 0 0 0
180 + 0 - - - -
クロロフェニル 200 - - - - - -
160 0 0 0 0 0 0
180 - - - - - -
エステルオイル ジエステル 120 + + + + 0 0
ポリエステル 120 + + 0 0 - -
160 0 0 - - - -
180 0 - - - - -
ポリグリコールオイル 100 + + + + + +
120 + + + 0 0 0
140 0 0 0 0 0
フッ化アルキルエーテルオイル 180 0 0 0 - - -
200 - - - - - -
水性オイルエマルジョン 80 0 0 0 0 - -
ミネラルベースオイル
+シックナー
カルシウム石鹸 80 + + 0 0 0 0
リチウム石鹸 120 + 0 0 - - -
リチウム鉛石鹸 120 0 0 0 0 - -
カルシウムコンプレックス石鹸 120 + + + + + -
ナトリウム五世石鹸 120 0 0 0 - - -
ポリ尿素 120 0 0 0 0 - -
ジエステル+リチウム石鹸 120 + + + + 0 0
シリコンベースオイル ジメチル+変性アミド 120 + 0 0 0 0 0
メチルフェニル+リチウム石鹸 120 + + + + 0 0
140 + + + +
160 + + 0 0
凡例 耐性 保持率
+ 75%以上
0 50%以上
- 不可 50%未満

表12 種々のタービン・オイル中で一定変形を与えた場合の耐ストレスクラッキング性(4800G)

オイル 温度
室温 150℃ 160℃
変形量
3% 2% 1% 0%
Aeroshell 500 0.05 R5 0.15 15
Aeroshell 555 5 R5 15* 15
Aeroshell 750 5 R5 15 -
Castrol 580 5 R5 15 -
Esso Turbo 25 5 R5 25 -
Esso Turbo 274 5 R5 25** 15
Esso Turbo 2380 5 R5 25** 15
Esso Turbo 2389 5 R5 - -
(凡例) * 表面のクラックは樹脂の流れ方向に平行。
** 15分ではクラックは発生しなかった。

耐漂白剤、滅菌液

スミカエクセル PESは、その濃度が特に濃くなければたいていの漂白剤および滅菌液の影響を受けません。滅菌液に浸漬後、スミカエクセル PES成形品を引き続いてスチーム滅菌または、乾熱滅菌する場合には、充分に水で洗浄しなければなりません。

表13 漂白剤、滅菌液の影響(4100G)

溶液 重量変化 引張強度変化(%)
10% Lissapol N 1.46 -11.6
2% Ivisol 1.35 -14.6
0.5% Gevisol 1.40 -14.8
2% Instrusan 1.42 -15.6
1% Bentenol 1.30 -13.6
1% Soilay 901-SD 1.36 -14.7
家庭用漂白剤 1.27 -

浸漬条件:室温 1カ月

アニーリング

成形品中の残留応力は、アニーリングによって緩和することができ、耐薬品性の向上に効果があります。このことは、トルエンあるいはMEKに浸漬すれば容易に確認できます。

吸水による寸法変化

スミカエクセル PESは吸水性があり、成形直後の部品は、1.1%の吸湿による寸法変化は飽和状態(1.1%)で0.15%と小さな値です。

図2 寸法変化の吸水率依存性

図2 寸法変化の吸水率依存性
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