スミカエクセル PESのパウダー製品の応用

はじめに

スミカエクセル PESのパウダーグレードは以下の用途に好適なグレードです。

  • 溶媒に溶解させて接着剤、塗料・コート剤として使用
  • 溶媒に溶解させて中空糸膜やキャスト膜(平膜)に加工
  • スミカエクセル PESベースの各種コンパウンド用途やエポキシ強化用途

パウダーグレードとして次のグレードを取り揃えています。

表1 スミカエクセル PESパウダーグレード

パウダーグレード RV(還元粘度) 主用途
3600P 0.36 コンパウンド
4100P 0.41 塗料・コート剤、接着剤
4800P 0.48 中空糸膜、接着剤
5003P 0.50 塗料・コート剤、接着剤、エポキシ強化剤
5200P 0.52 中空糸膜

*還元粘度はDMF1%溶液中で測定したものです。

スミカエクセル パウダーグレードの物性

スミカエクセル 3600P、4100P、4800Pおよび5200Pの性質

3600P、4100P、4800P、5200Pの物性値はぺレットタイプの3600G、4100G、4800G、5200Gの物性値(表2)を参考にしてください。

表2 3600G、4100G、4800G、5200Gの物性値

テスト方法
(ASTM)
単位 3600G/4100G
4800G/5200G
一般的物性 比重 D792 - 1.37
成形収縮率 MD
        TD
D955
D955
%
%
0.6
0.6
吸水率(23℃、24hr) D570 % 0.43
屈折率 - - 1.65
機械的性質 引張強度(23℃) D638 MPa 85
破断伸び D638 % 40~80
曲げ強度 D790 MPa 130
曲げ弾性率(23℃) D790 GPa 2.6
圧縮強度 D695 MPa 109
圧縮弾性率 D695 MPa 1.625
アイゾット衝撃強度(6.4m/m. ノッチ付き)
             (6.4m/m. ノッチなし)
D256
-
J/m
J/m
85
破壊しない
ロックウェル硬度
            
D785
-
-
-
M88
R120
テーバー摩耗(1kg加重 CS17Wheel) D1044 mg/1000rev 20
熱的性質 荷重たわみ温度(0.46MPa) D648 210
荷重たわみ温度(1.82MPa) D648 203
ピカット軟化点(1kg) D1525 226
ピカット軟化点(5kg) D1525 222
線膨張係数 MD
        TD
D696
D696
10-5/K
10-5/K
5.5
5.7
熱伝導率 C177 W/(m・K) 0.18
比熱 - J/(kg・K) 1.121
温度インデックス UL746 180
電気的性質 誘電率(23℃. 60Hz) D150 - 3.5
誘電率(23℃. 106Hz) D150 - 3.5
誘電率(23℃. 2.5×109Hz) D150 - 3.4
誘電正接(23℃. 60Hz) D150 - 0.001
誘電正接(23℃. 106Hz) D150 - 0.0035
誘電正接(23℃. 2.5×109Hz) D150 - 0.004
体積固有抵抗 D257 Ω・m 1015
絶縁破壊電圧 D149 kV/mm 16
耐トラッキング性 DIN53480 V 150
耐アーク性(タングステン電極) D495 sec 70
高電圧アークイグニッション UL746 sec 300
高電流アークイグニッション UL746 sec 200
燃焼性 難燃性 UL94 - V-O
限界酸素指数(1.6m/m) D286 - 38
ホットワイヤイグニッション UL746 sec 80

スミカエクセル 5003Pの性質

  • ガラス転移点、230℃を有する非晶性樹脂です。
  • 100重合繰り返し単位当たり、0.6~1.4と多くの末端水酸基を有しているために接着性が良好です。
  • 他の性質はスミカエクセル PESの他のグレードと同等です。

塗料・コート分野

塗料・コート分野にはスミカエクセル 4100P、5003Pが使用されています。特に、5003Pは熱時硬度、耐薬品性と金属との接着力を強化したグレードです。
スミカエクセル 5003Pを使用した塗料・コート剤について述べます。

スミカエクセル 5003P使用塗料・コート剤の特徴

  • 空気中で250℃の長期使用、あるいは冷熱サイクル(0℃⇔250℃)使用に対しても安定です。
  • 接着性、密着性=ガラス、セラミックス、鉄、ステンレス、アルミニウム或いはアルミニウム合金等に対して優れた接着性を発揮します。
  • 耐溶媒性=非晶性樹脂の中では最高レベルの耐溶媒性を示します。
  • 耐加水分解性=ポリエーテルサルホン樹脂自体、耐加水分解性に優れた樹脂であり、PES 5003Pは更に優れた耐加水分解性を示します。
  • 良成膜性=成膜性に優れ、基材を十分に保護します。
  • 難燃性=難燃剤無添加で高い難燃性を有しております。
  • 透明性=優れた透明性を有しており、コート後も基材のままの外観を保持します。
  • 衛生性=可塑剤等の添加剤を含まず衛生的です。

スミカエクセル 5003P塗布方法(溶液法の例)

  • 基材を脱脂、必要に応じてブラスト又はエッチングを行う。
  • スミカエクセル 5003Pを溶媒に溶解させる。
  • この溶液を浸漬、はけ塗り、スプレー法等で基材に塗布し、風乾する。
  • 350~400℃、空気中で30分間熱処理を行う。

アルミニウム板におけるスミカエクセル 5003Pコートの耐熱性(例)

表3 連続使用耐熱性(250℃空気中)

評価項目 時間(hr)
0 115 235
外観変化 - 変化なし 変化なし
基盤目試験(*1) 100/100 100/100 100/100
耐蝕テスト(*2) 腐蝕なし 腐蝕なし 腐蝕なし

表4 冷熱サイクルテスト(0℃ 氷水中、2分⇔250℃ オーブン、2分)

評価項目 サイクル回数(回)
0 25 50
外観変化 - ほとんど変化なし エッジ部若干発砲
基盤目試験(*1) 100/100 100/100 100/100
耐蝕テスト(*2) 腐蝕なし 腐蝕なし 腐蝕なし

(*1) スミカエクセル 5003Pコート層を基材にいたるまで、安全かみそりで100mm2の面積にわたり1mm×1mmの交差碁盤目状に刻みを入れ、次いでセロハン粘着テープを押しつけて押圧後、剥離して、基材に残ったスミカエクセル PES切片の個数。
(*2) スミカエクセル 5003Pコート面に15vol%硫酸溶液を滴下後、ガラス板を重ねて、24時間放置後、表面の変化状態を観察することにより判断。

エポキシ系強化システム用途

従来よりスミカエクセル 5003Pはエポキシ系複合材に使用されてきました。5003P使用のメリットは次のとおりです。

  • エポキシの破壊強度を向上させます。
  • 非常に高いTg(230℃)を有します。
  • 優れた機械的性質を有しています。

エポキシ樹脂の靭性強化

スミカエクセル 5003Pは本質的に靭性があり、高いTgと弾性率を有しているので、システム全体の性能を低下させることなく、エポキシに靭性を付与することができます。

表5 TGDDM/4,4-DDS系での効果

5003P濃度 (%) 曲げ弾性率 (GPa) Tg (℃) G1c (kJ/m2)
0 3.34 205 0.28
10 3.21 205 0.41
15 3.07 200 0.47

(注)
1)G11cは-65℃で平面歪み条件下で測定
2)Tgは捻れDMAで測定

上記表より大幅な破壊強度(G1c)の増加が見られ、Tgはそれほど低下していないことがわかります。

表6 スミカエクセル PESとPEIの比較

エポキシレジン/As4CF系、ポリマー濃度30wt%での比較検討結果

PEI 5003P
CAI(Compressive strength after impact) MPa 194 223
圧縮強度                    MPa
         (室温)
         (82℃)
         (82℃)/Wet

1697
1434
N/A

1731
1648
1076
8℃粘度    (Pa・s) 130 100

N/A:分析データなし

航空機・スポーツ用品分野へのスミカエクセル PESの応用

CFRP(カーボン繊維と樹脂とからなる複合材料)のマトリックス樹脂には熱硬化性エポキシ樹脂が使用されています。エポキシ樹脂は機械的、熱的特性は優れていますが熱可塑性樹脂に比べると脆い欠点があります。航空機・スポーツ用品分野での利用においては破壊靭性(残存圧縮強さ:CAI=Compressive Strength After Impact)の向上が必須とされます。5003Pを添加することによりエポキシ樹脂と反応してマトリックス樹脂中の層間剥離を伴う衝撃破壊に対して高靭性を持たせることができます。

  • スミカエクセル PES の使用法

    エポキシ主剤に5003Pを溶解し、均一系とします。これに硬化剤を加えて、硬化させると5003Pの水酸基と反応して、海島構造の特殊なモルホロジーを形成して耐衝撃性が改善されます。エポキシ主剤に5003Pを溶解して、均一系を得るには、5003Pを微粉砕して、直接エポキシ主剤にN2雰囲気下、150℃程度で溶解させるか、溶媒に5003Pを均一溶解させ、その後溶媒を留去した後にエポキシ主剤を加えて均一系を得る方法があります。

  • 単位コンポジット当たりのスミカエクセル PES 使用量(例)
    • 単位マトリックスレジン当たり
      エポキシ主剤(100部):硬化剤(30~40部):5003P(30部)
    • 単位プリプレグ当たり
      ~10wt%
  • 航空機用構造材としての使用法

    実際に航空機等の構造材としての使用に当たっては上記"スミカエクセル 5003Pの使用法"で調製して得られるCFプリプレグの表面に5003Pの粒度調整した粒子(Tough ball)をまぶして、数十枚積層して成形すると、界面にあるPES ballによって耐衝撃性が更に向上します。積層の方法については、種々の工夫がなされています。

    (例:Boeingの航空機構造材としての規格)
    • CAI(Compressive strength after impact)値が310MPa以上
    • CS(Compressive Strength.Hot/Wet Condition)値が1100MPa(82℃)以上

接着剤用途

スミカエクセル PESは耐熱接着剤として利用できます。特に、金属同士の接着では優れた接着強度を有しています。

特徴

  • 接着層は高い引張せん断接着強度と、T剥離接着強度を有し、剛性と可撓性を併せもつバランスのとれた特性を示します。
  • 市販熱可塑性樹脂接着剤の中では最高の耐熱性を有し、200℃においても実用的な引張破断接着強度は20MPaと非常に高いものです。また、短時間であれば250℃までの温度でくり返し使用できます。
  • 耐薬品性、耐熱性が優れています。
  • 溶剤または揮発成分を含まず、アルミニウム、ステンレス、鋼、真ちゅう等の広範囲の材料に対してプライマーなしで優れた接着性を示します。

接着方法

スミカエクセル PESフィルム使用のホットメルトタイプ接着方法

  • 被着体の大きさにフィルムを切断します。
  • 必要に応じて被着体表面をサンドペーパー、ディスクサンダー等で粗面化し、アセトン、トルエン等で清浄します。
  • 被着体の間にフィルムを挟み、治具を使用して軽く圧着して300~360℃で10~30分加熱します。圧着の程度は溶融した樹脂が被着体の間から僅かにバリとして出る程度で十分です。
  • 放冷すれば強固な接着体が得られます。

接着溶液を用いる接着方法

スミカエクセル 5003Pの溶媒系
PES 5003Pを単一溶媒に溶解した場合、不安定でPESが析出してきますので、通常混合溶媒系(例を表7に示す)を使用します。(単一溶媒では溶液安定性が低くゲル化します。)

表7 スミカエクセル 5003Pの混合溶媒系の例

溶媒 溶媒 混合比(体重比)
A 1.1.2-トリクロロエタン
ジクロロメタン
1
1(重量比)
B ジメチルホルムアミド
シクロヘキサノン
メチルエチルケトン
20
80
25
C N-メチル-2-ピロリドン
トルエンまたはキシレン
2
1
D N-メチル-2-ピロリドン
ジクロロメタン
1
1
E N-メチル-2-ピロリドン
トルエンまたはキシレン
シリコン流動調節剤
メチルエチルケトン
60
30
0.5~1
35

接着方法
PES接着剤の接着強度は、熱処理条件によって変化するため、使用方法に応じた条件設定が必要です。
(条件例1) 130℃、2時間乾燥
(条件例2) 100℃、1時間後に350℃で15分間乾燥

スミカエクセル 5003P接着剤系の性質

高温下での接着強度に優れます。例として、18-8ステンレス同士をPES 5003P接着剤系を使用して接着した場合、温度を220℃まで上昇させた時の接着強度の変化と150℃でエージングした場合の接着保持力についての結果を表8と表9に示します。

表8 剥離強度と温度の影響

温度(℃) 剥離強度MPa
23 37
150 26
220 14

剥離強度の測定は剥離速度12.5mm/minで行った。

表9 剥離強度と高温保持時間の影響

150℃で保持時間(hr) 150℃での剥離強度MPa
保持なし 26
1000 21

150℃、1000時間保持しても初期の接着強度の81%を保持している。

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