スミカエクセル PESの機械的特性

短期的変形

引張試験

スミカエクセルPESの引張試験における応力-ひずみ曲線(以下S-S曲線)を示します。応力があるレベルに達するまではひずみと応力が比例関係にあります。PESの強度設計を行う上では、応力とひずみが比例関係にならない部分がある点について考慮する必要があります。

図3-2-1 4100Gの引張強度のS-S曲線

図3-2-1 4100Gの引張強度のS-S曲線

図3-2-2 4101GL30の引張強度のS-S曲線

図3-2-2 4101GL30の引張強度のS-S曲線

曲げ弾性率の温度依存性

熱変形温度は200~220℃であり、連続使用温度はUL温度インデックスで180~190℃に認定されています。
弾性率は-100~200℃までの温度領域ではほとんど変化しません。特に100℃以上では、あらゆる熱可塑性樹脂で最高レベルです。

図3-2-3 曲げ弾性率の温度依存性

図3-2-3 曲げ弾性率の温度依存性

衝撃強度

スミカエクセルPESは強靱な樹脂であり、優れた耐衝撃性を有しています。アイゾット衝撃強度について他の耐熱樹脂と比較したものを示しますが、ノッチなしの非強化グレードでは破壊しないことがわかります。また、図3-2-6に衝撃強度の温度依存性を示します。スミカエクセルPESは0℃以下の温度、たとえば-100℃でも十分な衝撃強度を有していることがわかります。

図3-2-4 スミカエクセルPESの耐衝撃性

図3-2-4 スミカエクセルPESの耐衝撃性

ウエルド強度

射出成形をする場合、ウエルド部(樹脂の合流点)は非ウエルド部より強度が低くなります。ガラス繊維強化グレードのウエルド部の強度はガラス繊維の含有量に応じて低下します。図3-2-7には非ウエルド部強度とウエルド部強度の比較を、表3-2-1にスミカエクセルPESのウエルド部の引張強度を示します。
スミカエクセルPESは他樹脂と比較して、ウエルド強度が非常に高いことがわかります。特に非強化グレードはウエルド部の強化低下がほとんどなく、非ウエルド部と同等の強度を有しています。

ウエルド引張強度

図3-2-7 引張強度

図3-2-7 引張強度

表3-2-1 ウエルド部の引張強度

(単位:MPa)

グレード 非ウエルド部 ウエルド部
4100G 84 81
4800G 84 82
3601GL20 124 67
4101GL20 124 68
4101GL30 140 61

ウエルド曲げ強度

図3-2-8 ウエルド評価用成形品形状

図3-2-8 ウエルド評価用成形品形状

表3-2-2 ウエルド部と非ウエルド部の曲げ強度とアイゾット衝撃強度

グレード 曲げ強度(MPa) アイゾット衝撃強度(J/m)
ノッチなし 0.25ノッチ
非ウエルド部 ウエルド部 非ウエルド部 ウエルド部 非ウエルド部 ウエルド部
4100G 140* 140* >1960* 2156 68 49
4101GL20 190 110 411 117 68 29
4101GL30 180 110 362 98 68 29
PPS-GF40% 170 70 166 29 49 19

*印=破断しない。

成形機: 住友重機械製
ネオマット N47/28
射出圧力: 130MPa
射出速度: 60%
シリンダ温度: 340℃(4100G)
350℃(4101GL20・4101GL30)
射出時間: 10秒
冷却時間: 20秒

薄肉成形品のウエルド強度

図3-2-9 成形品肉厚とウエルド部の引張強度との関係

図3-2-9 成形品肉厚とウエルド部の引張強度との関係

ウエルド強度の改善

ウエルドによる強度低下が実用上問題になる場合には、以下の方法により改善が図られる可能性があります。

  • アニールによる改善
    ガラス繊維強化グレードのウエルド部の強度は、150~180℃のアニール処理により15~20%向上します。
    適切なアニール条件は0.5~1.5mmの肉厚の場合150℃×20分、2mmの肉厚の場合180℃×180分です。

表3-2-3 アニールによるウエルド部の引張強度の改善

(単位:MPa)

グレード アニール前 150℃ 180℃
20min 20min 180min
3601GL20 68 76(113%) 76(113%) 77(114%)
4101GL20
3601GL30 61 75(123%) 75(121%) 75(121%)
4101GL30

()内は、アニール前の強度を
100%とした場合の比率

  • 金型温度による改善
    ウエルド強度は成形時の金型温度が高い方が高くなりますので、金型温度を160~180℃と高くして検討してください。

長期的変形

クリープ

実用部品の強度計算に当たって、標準テスト(例えばASTM)による強度・弾性率のみを使用することは避けなければなりません。最適デザインを決定するにあたっては、クリープ特性と温度による特性変化を基に、使用条件下での成形品の寸法変化および強度変化を考慮する必要があります。図3-2-10に、非強化グレード4800Gの20℃および150℃における引張クリープ特性を示します。図から明らかなようにスミカエクセルPESは耐クリープ性に優れています。非強化グレードでは20℃で20MPaの負荷で3年後のクリープ変形がわすか1%であり、150℃では10MPaの負荷でも3年後のクリープ変形が1%にすぎません。図3-2-11にガラス繊維強化グレード(3601GL30、4101GL30)の150℃における曲げクリープ特性を示します。結晶性のPPS(ガラス繊維40%強化グレード)に比べ、スミカエクセルPESは優れたクリープ特性を有していることがわかります。

図3-2-10 非強化グレード(4800G)の
引張クリープ特性

図3-2-10 非強化グレード(4800G)の引張クリープ特性

図3-2-11 ガラス繊維強化グレード(3601GL30、4101GL30)の
曲げクリープ特性

図3-2-11 ガラス繊維強化グレード(3601GL30、4101GL30)の曲げクリープ特性

図3-2-12 非強化グレード(4100G)の
引張クリープ特性

図3-2-12 非強化グレード(4100G)の引張クリープ特性

図3-2-13 ガラス繊維強化グレード(4101GL30)の
引張クリープ特性

図3-2-13 ガラス繊維強化グレード(4101GL30)の引張クリープ特性

図3-2-14 曲げクリープ特性

図3-2-14 曲げクリープ特性

疲労特性

長時間変動する荷重下にある材料は疲労破壊を起こします。引張疲労試験による応力ー寿命曲線を示します。
温度23±1℃、湿度60±5%RHの条件において、30MPaの繰り返し荷重でも1.0×107回程度まで疲労破壊しません。

図3-2-15 スミカエクセル非強化グレード
(3600G, 4100G, 4800G)の応力-寿命曲線

図3-2-15 スミカエクセル非強化グレード(3600G, 4100G, 4800G)の応力-寿命曲線

図3-2-16 スミカエクセルガラス強化グレード
(3601GL20, 4101GL30)の応力-寿命曲線

図3-2-16 スミカエクセルガラス強化グレード(3601GL20, 4101GL30)の応力-寿命曲線

※右矢印(→)付きのシンボルは、その繰り返し回数において試験片が破断していないことを示す。

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