スミカエクセル PESの耐熱性

スミカエクセルPESについて設計に必要な熱的性質を表3-1-1に示します。

表3-1-1 スミカエクセルPESの熱的特性

耐熱性 テスト方法 単位 非強化 ガラス繊維強化
4100G
4800G
3601GL20
4101GL20
3601GL30
4101GL30
荷重たわみ温度(0.45MPa) ASTM D648 210 - -
荷重たわみ温度(1.82MPa) ASTM D648 203 210 216
荷重たわみ温度(0.45MPa) ISO 75 214 222 223
荷重たわみ温度(1.80MPa) ISO 75 205 221 221
ヴィカット軟化点(1kg) ASTM D1525 226 - -
ヴィカット軟化点(5kg) ASTM D1525 222 - -

アレニウスプロット

樹脂が持つ熱安定性によって、その樹脂の長期間使用できる温度範囲が制限されます。UL準拠の相対温度指数(RTI)において、エージング試験は、観察の対象となる特性値が初期値の半分に低下するまで続けられます。何段階かの異なる温度でエージング試験を行い、そのデータをもとにしてアレニウスプロットを作成します。アレニウスプロットは、特性値が初期値の半分に低下するまでに要するヒートエージング時間(半減期とも呼ばれます)を、エージング温度(K)の逆数に対してプロットして得られるグラフです。

図3-1-1 4800Gの引張強度半減時間の温度依存性

図3-1-1 4800Gの引張強度半減時間の温度依存性

図3-1-2 4101GL30の引張強度半減時間の温度依存性

図3-1-2 4101GL30の引張強度半減時間の温度依存性

長期耐熱性

スミカエクセルPESは優れた長期耐熱性を有します。スミカエクセルPESの相対温度指数(RTI)は以下のとおりです。RTIは、電気的特性(Elec)、機械的特性(Mech)の衝撃強度(Imp)と引張強度(Str)において、10万時間のエージングの後に、その初期値が半分の値になる温度を示します。一般に薄い試験片の方が劣化速度は速いことから、ULでは試験片の肉厚に応じたRTI評価を行っています。

表3-1-2 スミカエクセルPESの相対温度指数(UL746B)

グレード 厚み(mm) RTI
電気的 衝撃 引張
3600G 0.41 - - -
0.75 180 170 180
1.6 180 170 180
3.0 180 170 180
4100G 0.41 180 170 180
0.75 180 170 180
1.5 180 170 180
3.0 180 170 180
4800G 0.30 180 170 180
0.46 180 170 180
1.5 180 170 180
3.0 180 170 180
3601GL20 0.43 180 180 180
3.0 180 180 180
3601GL30 0.43 190 190 190
3.0 190 190 190
4101GL20 0.43 180 180 180
1.5 180 180 180
3.0 180 180 180
4101GL30 0.43 190 190 190
1.5 190 190 190
3.0 190 190 190

弾性率の温度依存性

図3-1-3に曲げ弾性率の温度依存性を示します。弾性率は100℃~200℃までほとんど変化しません。特に100℃以上では非晶性樹脂のポリカーボネート、結晶性樹脂のPPSのガラス繊維強化グレードよりもはるかに優れており、あらゆる熱可塑性樹脂の中で最高の部類に属しています。

図3-1-3 4100Gと4101GL30の曲げ弾性率の温度依存性

図3-1-3 4100Gと4101GL30の曲げ弾性率の温度依存性

エージング特性(空気中および熱水中)

熱エージング性

スミカエクセルPESを150℃の空気中でエージングした場合でも強度低下はなく、耐熱性に優れています。

図3-1-4 引張強度の150℃空気中エージング特性

図3-1-4 引張強度の150℃空気中エージング特性

耐熱水性

スミカエクセルPESを水中(23℃)または熱水中(100℃)において、無負荷でエージングした場合、引張強度はほとんど変化しません。
衝撃強度は熱水中(100℃)では初期に低下を起こしますが、その後は十分に高い耐衝撃性を維持して安定しています。

図3-1-5 引張強度の水中におけるエージング時間依存性

図3-1-5 引張強度の水中におけるエージング時間依存性

図3-1-6 衝撃強度の水中におけるエージング時間依存性

図3-1-6 衝撃強度の水中におけるエージング時間依存性

耐スチーム性(スチーム殺菌サイクルの影響)

スミカエクセルPESを温度143℃、3.2気圧のスチーム圧と室温の真空乾燥サイクル試験の結果、衝撃強度に変化は見られませんでした。
しかし、スミカエクセルPESをスチーム中で使用する場合は、それぞれの用途に応じて実使用雰囲気下でテストを行うことが必要です。

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