スミカスーパー LCPの成形機選定・金型設計

射出成形機の選定

スミカスーパー LCPは、通常のインラインタイプの射出成形機やプランジャー(プリプラ)タイプの射出成形機で成形することが可能です。E6000系、E4000系は、成形温度が<400℃であるため、一般の射出成形機でもヒーター容量は問題ありませんが、E5000系は成形温度が最高420℃になるため、高温仕様(450℃仕様)が必要です。

スクリュ、シリンダ

  • スミカスーパー LCPの一般グレートは、GFなどを多く充填しているため、耐摩耗性の材質が好ましい。
  • スクリュデザインは、標準的なフルフライトタイプが適している。サブフライト付きスクリュや高混練スクリュの使用は、計量時間が長くなるため、好ましくない。
  • スクリュヘッドは、逆流防止機構付きスクリュヘッドを推奨する。
  • スミカスーパー LCPの流動特性は、温度に敏感であるため、シリンダの温度制御は、制御性が良好なPID制御方式が好ましい。

ノズル

  • 材質は、スクリュ、シリンダに準ずる。
  • オープンタイプのノズルの使用が適している。シャットオフノズルは、デッドスペースが多く樹脂が滞留しやすいため好ましくない。
  • ノズルヒーターは、独立した温度制御器を使用し、制御性が良好なPID制御方式が好ましい。
  • 延長ノズルを使用する場合は、温度分布が均一になるように十分考慮されたものを使用する。

射出ユニットおよびその制御系

  • スミカスーパー LCPは、一般的なオープンループ制御タイプやクローズドループ制御タイプの成形機が使用可能。
  • 薄肉成形品の場合は、スミカスーパー LCPが溶融粘度のせん断速度依存性が大きく固化速度が速いため、射出立ち上がり応答性が優れている成形機を用いることが好ましい。

成形機容量

  • 一般には、計量値が全射出容量の1/3~3/4となるような成形機を選定することが望ましい。計量値が小さいと、無用な樹脂滞留から様々な成形不良が発生することがある。

樹脂温度管理について

一般に、スミカスーパー LCPを含めて、LCPは機械物性や溶融粘度等の諸物性の温度依存性が大きく、温度管理を誤ると十分な特性が得られない場合があります。射出成形機は汎用樹脂の成形温度(~300℃)では、シリンダ内の樹脂温度と設定温度が比較的近くなるように設計されていますが、スミカスーパー LCPの成形温度領域(320~400℃)では、設定温度と樹脂温度にズレが生じるケースがあります。 以上より、スミカスーパー LCPの性能を引き出すにはシリンダ内の樹脂温度を把握し、それぞれのグレードの最適な温度にコントロールする必要があります。
上述の樹脂温度の測定には、微少面積(ストランドの径以下)の温度測定ができる、スポットタイプの非接触赤外線放射温度計を使用すると簡便に測定できます。

樹脂温度管理の説明図

高速射出成形技術

スミカスーパー LCPは、成形時の溶融粘度が低く、固化速度が速いため、バリが出にくい特徴があります。ただし、超薄肉製品の成形(<0.2mmt)においては、薄肉部で樹脂が固化し十分な流動長が得られない場合があります。こうした場合、対策としてアキュムレータ付のような射出時の立ち上がり特性に優れた成形機の適用が有効です。

図1 バリ発生を伴わない最大流動長

図1 バリ発生を伴わない最大流動長
油圧射出成形機: UH-1000
[日精樹脂工業(株)]
SGシリーズ
[住友重機械工業(株)
電動射出成形機: ロボショットα-Cシリーズ
[ファナック(株)]
パナジェクションPJ-30
[松下電産(株)]

図2 射出速度波形の比較

(汎用成形機と比較し、高速成形機は射出速度の初期立ち上がりが早く、
所定の射出速度で成形されていることを示している)

流動長測定金型: 図3のものを使用
成形温度: 360℃ 使用グレード:E6008
射出速度 600mm/sec
V-P切り替え圧力 60MPa
汎用成形機: 日精樹脂工業 PS-40E5 ASE
射出速度 90% 射出圧力 90MPa

金型設計

スミカスーパー LCPは射出成形する(せん断をかける)ことにより、分子が容易に流れ方向に配向することから、優れた流動性とともに高強度、高弾性が得られますが、一方で異方性が発生します。
金型の設計にあたっては、キャビティ内の流動パターンと異方性を十分考慮する必要があります。

スプル

  • スプルの抜き勾配は1゚~2゚(片側)が適当である。
  • コールドスラグを取り除くため、スプルエンドにはコールドスラグ溜りを設ける(4~5mmφ×5mm以上)。
  • スプル抜けを良くするため、スプルロックを設ける。
スプルの説明図

ランナ

  • 一般的な円形、半円、台形の断面形状のランナが適用できるが、圧力損失と加工性とから、円形もしくは台形を推奨する。
    スミカスーパー LCPは、優れた流動性を有しているため、ランナ径を細くすることができる。
    標準的なランナ径:2~5mmφ
    ランナ径の目安:PPS、PBTの2/3~1/2(最小2mmφ)

図3 薄肉流動長測定金型

図3 薄肉流動長測定金型

製品厚み:0.3mm
流動長は4キャビチィー

図4 薄肉流動長

図4 薄肉流動長
  • 多数個取りの場合、個々のキャビティに樹脂が同時充填するようランナバランスをとることを推奨する。
  • ランナ末端にもコールドスラグ溜まりを設ける。

ゲート

スミカスーパー LCPは、ウエルド強度が他のエンプラに比べ低いため、できるだけウエルドが発生しないよう、ゲートは、極力1~2点とし、ゲート位置を十分考慮する必要がある。

  • サイドゲート
    ランド長さは1mm以下、幅は5mm以下が適当である。ランド深さは、0.7×成形品厚みを目安とし、最小0.2mmが適当である。
  • ピンポイントゲート
    ゲート径は、0.3~1.5mm、ランド長さは1mm以下が適当である。
    ゲート径を太くすると、糸引きやゲートめくれの原因となる。
  • サブマリン(トンネル)ゲート
    ゲート径は、0.3~1.0mmが適当である。
  • フィルムゲート、リングゲートを用いることも可能であるが、LCPではあまり一般的でない。
ゲートの説明図

抜きテーパー

  • 抜きテーパーは、成形品厚みの浅いもので0.5°(1/90)~1°(1/60)、深いものでは、1°(1/60)~2°(1/30)とることが望ましい。
  • 良離型(MR)グレードは、一般グレードに比べて離型抵抗は約1/2であるが、成形品の深さが大きいものでは、抜きテーパーを大きくする必要がある。

エアベント(ガス抜き)

  • スミカスーパー LCPの成形では、高速射出条件である場合が多いため、製品部の空気を効率的に排除するために、エアベントを設けることを推奨する。
  • 薄肉製品や流動末端がウェルドの場合、ショートショットになりやすいため、エアベントを設ける。
  • スミカスーパー LCPは、溶融粘度が低く流動性に優れるが、固化速度が非常に速いため、エアベントを設けてもバリは発生しにくい。
  • エアベントの深さは、0.005~0.02mmが適当である。

異方性(成形収縮率)

  • LCPの成形収縮率は、流れ方向(MD)とその直角方向(TD)の違い(異方性)が大きいため、MDとTDの値の中間値をベースに、修正が可能な方向で成形収縮率を設定する。
  • 薄肉小型製品の場合、長手方向の収縮率は、0%として設計することを推奨する。

表1 異方性

項目 厚み 方向 単位 E5008L E5008 E4008 E6008 E6006L
成形収縮率 3mm MD % 0.05 0.08 0.10 0.18 0.19
TD % 0.81 1.25 1.32 1.16 0.74
1mm MD % 0.13 0.05 0.06 0.09 0.10
TD % 0.43 0.70 0.78 0.80 0.49
曲げ強度 3mm MD MPa 137 130 138 136 156
TD MPa 58 56 57 61 92
曲げ強度 3mm MD GPa 13.4 12.6 12.7 12.2 11.4
TD GPa 3.7 3.3 3.0 4.4 4.7

図5 E6008の成形収縮率

図5 E6008の成形収縮率

図6 E5008の成形収縮率

図6 E5008の成形収縮率

金型材質

  • スミカスーパー LCPの標準グレードは、GFが充填されているため、高寸法精度が要求される金型や量産型では、硬度がHRC55~62のSKD11相当品(HPM31、PD613、RIGORなど)かそれ以上の鋼材の使用を推奨する。
  • スミカスーパー LCPは、腐食性のガスをほとんど発生しないため、金型を腐食させることがなく、一般的な金型材質が使用できる。

ホットランナの適用

スミカスーパー LCPのホットランナ化については、以下の点に注意が必要です。
一般的に樹脂は長期連続成形において成形機内のデッドスペース部に滞留し、滞留樹脂が劣化、着色することがあります。溶融粘度が極めて低いLCPでは、このデッドスペース部の滞留が起こりやすいと考えられます。
このため、LCPには、これらを考慮したホットランナが望ましく、特に、樹脂の滞留による黒点、コールドスラグの発生に十分な注意が必要です。

スミカスーパー LCPへのホットランナの適用ポイント

  • 高温加熱が可能でシステム内の温度分布が均一であること。
    ヒーター一体型が望ましい。過度にマニホールド、ノズルの温度は高くしないこと。
    金型との接触部(ゲート部分)の温度を高温に保持できること。

      ホットランナの温度仕様(MAX)
    E6000シリーズ ~380℃
    E4000シリーズ ~400℃
    E5000シリーズ ~420℃
  • 流路にデッドスペースができにくい構造であること。
    (滞留による黒点の発生に注意が必要)
    加熱方式は、内部加熱方式より外部加熱方式の方がよく、流路は細いほうが良好。
  • コールドスラグが混入しにくい構造であること
    (製品のコールドスラグの混入に注意が必要。)
    オープンゲートの場合はサブランナの設置を考慮した方が良い(スプルレス成形)。

スミカスーパー LCPへのホットランナの適用

下記にスミカスーパー LCPへのホットランナの適用を示します。

表2 スミカスーパー LCPへのホットランナの適用

  ランナ部 ゲートシール スミカスーパー
LCPへの適用
備考
内部
加熱
外部
加熱
熱的
一定
熱的
ショット毎
ON,OFF
熱的
ショット毎
ON,OFF
完全
ホットランナ
スプルレス
成形
(株)十王
614システム
- - - - φ4
電磁誘導加熱
明星金属(株)
ミニランナ
- - - - - *1
世紀工業(株)
スピアシステム
Bタイプ(従来) - - - × ×  
EHタイプ - - - × *2
モールドマスター(株)
マスターショット
- - - × △~○  
斉藤工機(株)
プラゲートシステム
- - - ×  

◎: スミカスーパー LCPへの適用事例あり。
○: スミカスーパー LCPへの適用可
△: スミカスーパー LCPへの適用事例なし。
×: スミカスーパー LCPへの適用不可

*1: 多点ゲートで、且つミニランナ用延長ノズルを用いる場合は、各延長ノズルを個々に温度コントロールする方が望ましい。
また、成形温度の高いE5000系も各ノズルを個別に温度コントロールする方が望ましい。
*2: チップ部は内部加熱方式
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