スミカスーパー LCPの用途「コイルボビン」

ボビン用途のためのグレードガイド選定

ボビンの構造と材料への要求特性

ボビンとは、電線(巻線)を巻いてコイルを作る円形または多角形の筒を指します。使用する材料としては電気絶縁性のある樹脂が主に用いられています。一方端子部には、主に金属が用いられていますが、樹脂との2点部品となりコストが高くなってしまいます。そこで、樹脂で一体成形された樹脂端子ボビンが開発されています。

電線に電流を通すためには、端子に絡めた電線終端の被覆材(ウレタン等)を剥がす必要があります。被覆材を剥がす方法としては、高温(300~400℃)のハンダ浴にディップする方法が用いられています。

ボビンの構造と材料への要求特性の説明図

金属端子の場合、ハンダ浴にディップしてもボビン部分には熱が伝わらず、耐熱性の低い樹脂を使用することができます。一方、樹脂端子の場合には、端子が溶けたり変形したりしないよう、耐熱性の高い樹脂が使用されます。ただし、昨今の家電製品の軽薄短小化に伴いボビンも小型化しており、金属端子のボビンであっても短い端子からの熱が樹脂部に伝わるため、樹脂の耐熱性が必要になってきています。

このため、ボビン用樹脂材料に対する要求特性として、高い耐熱性(300℃~400℃×数秒)と軽薄短小化に伴う精密成形性が重要になってきました。さらに環境問題から熱可塑性樹脂が着目され、これらの中でもLCPはボビンに好適な材料として多く使用されるようになりました。

ボビン用途のためのグレード選定ガイド

樹脂端子ボビンの場合には、超耐熱グレードのE5000シリーズが必要になります。金属端子の場合でもE5000シリーズを使用できますが、耐熱面で過剰品質となる場合があります。E5000シリーズは短期的な耐熱は高いものの、成形温度が400℃と非常に高く、射出成形機内での滞留劣化によるトラブルが発生しやすいという問題があります。さらに、E4000、E6000シリーズと比較すると、成形機や金型のメンテナンスの頻度が高くなります。
このため、ボビンに必要な耐熱温度を把握し、可能であればE4000、より好ましくはE6000シリーズを使用されることを推奨します。

また、E52008は超耐熱グレードのE5008を高流動化したグレードです。ステッピングモーター用の超小型ボビン等、0.2mmt以下の肉厚のボビンに好適なグレードです。

ボビンの種類 推奨グレード
樹脂端子ボビン E5000シリーズ(E5008L,E5008等)
樹脂端子ボビン(超小型) E52008
金属端子ボビン(小型) E5000シリーズ(E5008L,E5008等)
E4000シリーズ(E4008L,E4006L,E4008等)
金属端子ボビン(中大型) E5000シリーズ(E5008L,E5008等)
E4000シリーズ(E4008L,E4006L,E4008等)
E6000シリーズ(E6006L,E6008等)
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