スミカエクセル PESの機械的特性

長期的変形

クリープ

実用部品の強度計算に当たって、標準テスト(例えばASTM)による強度・弾性率のみを使用することは避けなければなりません。最適デザインを決定するに当たっては、クリープ特性と温度による特性変化を元に、使用条件下での成形品の寸法変化および強度変化を考慮する必要があります。
図1に非強化グレード4800Gの20℃および150℃における引張りクリープ特性を示します。
図から明らかなようにスミカエクセル PESは耐クリープ性に優れています。ナチュラルグレードでは20℃で20MPaの負荷で3年後のクリープ変形がわずか1%であり、150℃では10MPaの負荷でも3年後のクリープ変形が1%にすぎません。
図2にGF強化グレード(3601GL30、4101GL30)の150℃における曲げクリープ特性を示します。結晶性のPPS(GF40%強化グレード)に比べ、スミカエクセル PESは優れたクリープ特性を有していることがわかります。

図1
スミカエクセル 非強化グレード(4800G)の
引張クリープ特性
図1 スミカエクセル 非強化グレード(4800G)の引張クリープ特性
図2
スミカエクセル GF強化グレード
(3601GL30、4101GL30)の曲げクリープ特性
図2 スミカエクセル GF強化グレード(3601GL30、4101GL30)の曲げクリープ特性

衝撃強度

スミカエクセル PESは強靱な樹脂であり、優れた耐衝撃性を有しています。
図3にアイゾット衝撃強度について他の耐熱樹脂と比較したものを示しますが、ノッチなしのナチュラルグレードでは破壊しないことがわかります。
部品設計に当って、鋭角部分や鋭角なネジ切りをなるべく作らないことが大切です。また、スプルーやゲートをきれいに切断したり、金型の表面をきれいにすることも応力集中を防ぎ、スミカエクセル PES本来の強度を引き出せることになります。
図5に衝撃強度の温度依存性を示します。スミカエクセル PESは0℃以下の温度、たとえば、-100℃でも十分な衝撃強度を有していることがわかります。

図3 耐衝撃性

図3 耐衝撃性

ウエルド強度

ウエルド強度

射出成形をする場合、ウエルド部(樹脂の合流点)は非ウエルド部より強度が低くなります。GF強化グレードのウエルド部の強度はGFの含有量に応じて低下します。図6には非ウエルド強度とウエルド強度の比較を、表1にスミカエクセル PESのウエルド部の引張強度を示します。

図6 ウエルド部と非ウエルド部の曲げ強度

図6 ウエルド部と非ウエルド部の曲げ強度

表1 ウエルド部の引張強度

グレード 非ウエルド部 ウエルド部
4100G 84 81
4800G 84 81
3601GL20 124 67
4101GL20 124 68
4101GL30 140 61

スミカエクセル PESは他樹脂と比較して、ウエルド強度が非常に高いことがわかります。特に非強化グレードはウエルド部の強化低下がほとんどなく、非ウエルド部と同等の強度を有しています。

4100Gのウエルド強度

4100Gのウエルド強度の説明図

表2 ウエルド強度

樹脂 曲げ強度
(MPa)
アイゾット衝撃強度(J/m)
ノッチなし 0.25ORノッチ
非ウエルド部 ウエルド部 非ウエルド部 非ウエルド部 非ウエルド部 ウエルド部
PES 4100G 140* 140* >1960* 2156 68 68
4101GL20 190 110 411 117 68 29
4101GL30 180 110 362 98 68 29
PPS(GF40%) 170 70 166 29 49 19

*印=破断しない。

注1)
成形機: 住友重機械製ネオマット N47/28
射出圧力: 130MPa
射出速度: 60%
シリンダ温度: 340 ℃(4100G)
50 ℃(4101GL20・4104GL30)
射出時間: 10秒
冷却時間: 20秒

薄肉成形品のウエルド強度

図7 成形品肉厚とウエルド部の引張強度との関係

図7 成形品肉厚とウエルド部の引張強度との関係

ウエルド強度の改善

ウエルドによる強度低下が実用上問題になる場合には、以下の方法により改善が図られる可能性があります。

  • アニールによる改善
    GF強化グレードのウエルド部は、150~180℃のアニール処理により15~20%向上します。
    適切なアニール条件は0.5mm~1.5mmtの肉厚の場合150℃×20分、2mmtの肉厚の場合180℃×180分です。

表3 GF強化グレードのアニールによるウエルド部引張強度の向上

(単位:MPa)

グレード アニール前 50℃ 180℃
20min 20min 180min
3601GL20 68 76(113%) 76(113%) 77(114%)
4101GL20
3601GL30 61 75(123%) 75(121%) 75(121%)
4101GL30

()内は、アニール前の強度を
100%とした場合の比率

  • 金型温度による改善
    ウエルド強度は成形時の金型温度は高い方が強くなりますので、金型温度を160~180℃と高くして検討してください。

成形収縮率

スミカエクセル PESの成形収縮率は非強化品で0.6%と小さく、かつ異方性がありません。GF強化グレードはMD方向0.2%、TD方向0.4%と異方性を有します。

図8 成形収縮率の比較

図8 成形収縮率の比較
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