企業価値向上に向けた取り組み

1.企業価値向上に向けた基本的な考え方

住友の事業精神である「自利利他 公私一如」の考えに基づき、経済価値と社会価値を一体的に創出することで、企業価値の向上を目指します。

住友の事業精神を表す「自利利他 公私一如」は、「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない」という意味で、当社グループが創業から大切にしてきた考え方です。
当社は、事業ポートフォリオを長期的に変革することで、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを目指します。これにより、経済価値(自利)と、社会価値(利他)の一体的な創出(公私一如)を実現し、企業価値を向上させてまいります。

2.経済価値の創出:ROIC志向経営の徹底

住友化学は、ROE、ROICなどの財務指標の目標を安定的に達成し、持続的な企業価値の向上を目指しています。事業再構築や合理化、コスト削減、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)短縮などにより、有利子負債残高やD/Eレシオを統制することで財務基盤の健全性を維持しながら、メリハリの利いた積極投資による事業拡大・強化を進めます。

(1)基本方針

①ROIC志向経営

当社では、管理会計制度において1999年から各事業部門の業績に資本コストを考慮するなど、ROIC、ROEなどの資本効率向上に早くから取り組んできました。ROICについては、WACC(加重平均資本コスト)を上回るレベルを求め、7%以上を目標としています。

ROIC志向経営の徹底

・CF創出力/収益安定性の向上

・メリハリのある資源投入

・投資成果の確実な獲得

・CCC改善に向けた取り組み

②健全な財務体質と安定的な株主還元

当社では、D/Eレシオについては、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、0.7倍程度を目安としています。また、各期の業績、配当性向ならびに将来の事業展開に必要な内部留保の水準などを総合的に勘案の上、安定的な配当を継続することを基本とし、中長期的に配当性向30%程度を安定して達成することを目指しています。

(2)現状分析(2024年度)

①全社投下資本・ROIC・ROE

投下資本については、事業再構築や在庫削減などの短期集中業績改善策により、2022年度から総額を約20%削減し、AGL部門やICTM部門などの成長ドライバーが占める比率が高まりました。また、NOPATについては、AGL、ICTM部門において農薬や半導体材料などの出荷が増加したほか、連結子会社である住友ファーマにおける基幹3剤の拡販や再編・合理化によるコスト削減が寄与したことにより、昨年比で大幅に改善しました。これらにより、2024年度の全社ROICは2.2%となりました。ただし、目標である7%に向けては、さらなる改善が必要です。

②セグメント別投下資本・ROIC

③有利子負債、D/Eレシオ

前中期経営計画期間中の大型戦略投資と2023年度の業績悪化により、有利子負債は2023年度末で1兆5,635億円まで膨らみ、D/Eレシオは1.34倍まで上昇しました。2024年度末には短期集中業績改善策によるキャッシュ創出により有利子負債は1兆2,861億円まで減少、D/Eレシオは1.20倍まで低下しましたが、当社が中長期的に目標としている0.7倍台までにはさらなるキャッシュ創出と有利子負債の削減が必要です。

④配当性向

2023年度は、最終赤字を計上したことを受け、一株当たり9円(中間配当6円、期末配当3円)の配当とさせていただきました。2024年度については、短期集中業績改善策によりV字回復を達成しましたが、傷んだ財務体質の改善を優先するため、2023年度と同様に一株当たり9円(中間配当3円、期末配当6円)の配当とさせていただきました。また、2024年度の配当性向は38.2%となりました。

(2)今後の取り組み

①全社投下資本・ROIC・ROE

中長期的な目標である全社ROIC7%に向け、2027年度は5.5%を見込んでいます。
2024年度と比較すると、農薬大型剤の上市・拡販、半導体材料事業の拡大など、収益力強化策で2.0pt、成長ドライバーへのリソース集中、石化の構造改革等、投下資本適正化策で1.3ptの改善を見込みます。また、これと並行して、ポートフォリオ高度化を継続して議論する事業ポートフォリオ審議会の新設や投資審議プロセスの見直しなど、ROIC志向経営を下支えする経営システムも強化し、早期に資本コストを上回る7%のレベルを目指していきます。

②セグメント別ROIC・投下資本

③キャッシュ創出策とキャッシュ・アロケーション

2025-2027年度中計期間中に、以下の施策により2,000億円のキャッシュを創出し、3年間の営業キャッシュフロー9,300億円と合わせた計1兆1,300億円を確保する計画です。この資金は、事業投資9,200億円、借入金の返済1,400億円、株主還元700億円に配分し、これによりD/Eレシオは0.8倍台まで改善する見込みです。
また、将来的には一株当たり年間24円以上の配当を早期に実現することを目指します。

3.社会価値の創出:社会課題解決への貢献と成果の見える化

当社は、「自利利他公私一如」の考え方を基軸に、長期的に目指す企業像を「Innovative Solution Provider」と定めました。この目指す企業像に向け、当社が強みを持つ技術や事業のアセットから、取り組むべき社会課題を「食糧」「ICT」「ヘルスケア」「環境」に定めるとともに、これらの4つの課題に対応して事業部門を再編しました。100年以上の歴史の中で培った6つのコア技術、そしてそこから生まれる3つのX(GX・DX・BX)を切り口とした重要アセットを活用することで、革新的なソリューションを次々と生み出し、広く社会へ提供していきます。
また、事業を通じて社会課題の解決に貢献するだけでなく、その成果を見える化することにより、創出する社会価値とそのインパクトを広く周知し、当社の社会的な評価を高めていきます。

(1)事業を通じた社会課題解決への貢献

(2)社会価値創出の見える化

①Sumika Sustainable Solutions(SSS)
~気候変動対応、環境負荷低減、資源有効利用の分野で貢献する当社グループの製品・技術~

製品のライフサイクル全体の視点で、温暖化対策や環境負荷低減などに貢献する当社グループの製品・技術を認定し、その開発や普及を促進しています。

②Science Based Contributions(SBC)~製品・技術を通じたGHG削減貢献量~

SSSに認定した環境負荷低減製品・技術による社会でのGHG削減貢献量を定量化し、社会課題解決への貢献インパクトのひとつとして開示しています。

4.エンゲージメント

当社は、上記の基本的な考え方に基づいた、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた経営方針、事業戦略および業績動向等について、株主・投資家等のステークホルダーと積極的にコミュニケーションを行うことで説明責任を果たし、市場からの信頼の維持・向上を図るとともに、当社への正しい理解を通じた、適正な株価形成と企業価値向上に努めています。

(1)エンゲージメントの状況

2024年度においても、トップマネジメントによる定期的な説明会のほか、さらなる議論の深堀のためのスモールミーティングや投資家訪問の実施など、ステークホルダーとの建設的な対話を実施し、相互理解を進めました。

(2)エンゲージメントのツール

当社では、各種説明会等の資料に加え、住友化学レポート(統合報告書)、インベスターズハンドブック、サステナビリティデータブックを毎年発行し、株主・投資家等のステークホルダーの方々の当社への理解を深めるツールとして活用しています。