• TOP
  • ニュース
  • お知らせ
  • 社長メッセージ 「住友化学グループ 海外グループ会社幹部社員の皆さんへ」

ニュース

社長メッセージ 「住友化学グループ 海外グループ会社幹部社員の皆さんへ」

2020年08月06日

住友化学株式会社
代表取締役社長
岩田 圭一

住友化学グループの幹部社員の皆さん、こんにちは。

本年4月、新型コロナウイルス感染拡大が世界に衝撃を与える中で、新年度のスタートにあたって私からのメッセージをお送りしました。それからはや4カ月が経過しましたが、収束の見通しは立たず、いまだ多くの国で感染者が増え続けています。コロナウイルスと人類の闘いは長期化を覚悟せざるを得ない状況ですが、私は、この困難な時期を皆さんとともに乗り越えていきたい、そして必ずや乗り越えていけるという思いを新たにしています。本日は、そのことを皆さんに申し上げるとともに、皆さんの日頃のご尽力に対して謝意を表したいという強い思いを持ってこの場をつくりました。

はじめに、新型コロナウイルス感染症に罹患された社員やご家族の皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、感染の危険が身近に迫るという緊張感の高い状況下で、事業運営にご尽力いただいているグループ会社社員の皆さんに衷心より感謝申し上げます。また、私は難度の高い業務を実行している皆さんを誇りに思いますし、皆さんを支えてくださっているご家族の皆さまに対しても、マネジメントを代表して(日本語で)「ありがとう」と申し上げたいと思います。

住友化学グループでは、ロックダウンの影響を受けて稼働率を下げざるを得なかった会社はありましたが、幸い操業面では全体として大きな影響は出ていない状況です。住友化学グループには、皆さんが理解されているとおり、社会を支える基幹産業としての供給責任を果たすという大きな社会的使命があります。そのことが、社会の維持・発展につながっています。今日のコロナ禍でも、化学製品の役割が再認識され、化学産業の間口の広さがクローズアップされました。社会的使命を果たすため、引き続き、皆さん一人一人が、感染防止に留意し、心身の健康を維持するようお願いいたします。

今回のコロナ禍の影響を考えると、経済活動の停滞、人・モノの動きの制約によるサプライチェーンの分断にとどまらず、社会構造や価値観、生活スタイルの変化まで多岐にわたります。私自身も、生活が一変し、リモートワークを初めて経験しましたし、夜の会食や週末のゴルフ、国内外の出張が軒並みキャンセルとなりました。家族と過ごす時間が増えたおかげで、特に妻とはコミュニケーションが良くなったことは良いのですが、体重が増えてしまい、エクササイズをして調整中です。皆さんもご注意くださいね。一方で、何より寂しく思っているのは、社長就任2年目の今年、世界の各拠点を訪問して現場で奮闘、活躍する皆さんと意見交換し、また激励したいと意気込んでいた矢先に、その機会が奪われてしまったことです。

リーマンショックを上回る世界的な景気停滞になるといわれる中、当面厳しい時期が続くことは覚悟しなければなりませんが、必ずやこの困難な時期を乗り越え、1世紀を超える当社グループの歴史の一コマとして、皆さん一人一人が「コロナの時代を乗り越えた先人」として長く語られることを信じて疑いません。

今回、この機会に住友化学グループの動向について三つ報告したいことがあります。一点目は業績です。当社は、8月4日に、今年の4-6月期の連結業績を発表しました。世界的な経済減退の中、コア営業利益は202億円を確保することができ、マーケットにポジティブなサプライズを与えました。2020年度の見通しについては、コア営業利益800億円、前年度に比べ500億円程度の減益となる見込みですが、医薬品部門での大型新剤の先行開発費用や、コロナウイルス感染拡大にともなう需要減、石油化学関連設備の定期修理などの一時的な影響が1,000億円以上あることを考えると、前年度を、逆に500億円を上回る実力はあると考えています。健康・農業関連事業、情報電子化学、エネルギー・機能材料など高機能化学部門を中心に収益力の強化が進んでおり、過度に悲観的になるべきではありません。将来のV字回復に向けて正しい道を進んでいると考えています。従って、4月にお伝えしたとおり、中期経営計画の基本方針を変更する必要はありません。今なすべきことを着実に、ただし従来以上にスピード感をもって推進していただくようお願いいたします。

二点目は中期経営計画の進捗についてです。5月下旬に機関投資家、マスコミ向けに説明した映像が英語の通訳音声とともにHPに掲載されていますので、詳しい内容はそちらをぜひご覧いただきたいと思います。ここではトピックスを簡単にご紹介します。幸運だったと考えているのは、コロナウイルス感染拡大前に医薬品部門におけるロイバント社との大型提携と、南米農薬拠点の買収というポートフォリオ高度化についての重要な投資を実現できたことです。また、同じくコロナ以前に、社債を良いタイミングで発行し、余裕資金を確保することができました。結果的にコロナ下での事業運営に対して資金面での心配は不要であると考えています。

中期経営計画の重点項目の一つである「次世代事業の創出」については、伝統的な化学合成とは別の技術体系である合成生物学に注目しています。これは、微生物の設計と培養から発酵プロセスの工業化によって新しい事業領域を狙うものであり、スタートアップへの出資やアカデミアとの連携等、イノベーション・エコシステムから生まれた成果の一つです。また、コロナ禍で、2年分の変化が2カ月で起きたと言われるデジタル革新については、スマートファクトリー化に向けた取り組みや、マテリアルズインフォマティクスによる材料設計の推進、人材の育成などの取り組みで生産性向上の成果が出てきています。皆さんの各社、各部署においても、それぞれの業務にデジタル革新技術を活用し、働き方の改革に取り組んでいただくようお願いします。

また、コロナ禍によって、企業と地球環境との関わりもより重視されるようになりました。廃プラスチックの問題は原料メーカーとして見過ごすことのできないテーマです。当社はこの抜本的な解決を目指し、ケミカルリサイクルの実現を目指しています。本年2件の研究プロジェクトに着手し、石油化学部門の新しい展開として研究体制の拡充も図ったところです。

三点目は、コロナウイルスとの闘いへの住友化学グループとしての貢献です。当社グループは、治療や感染拡大防止に関連する多くの製品を供給しています。例えば、アビガンやレムデシビルをはじめとする治療薬向けの原料や、飛沫防止用アクリル板、抗菌剤などがあります。また、コロナウイルスに関する研究を支援するため、医療分野のデータベースを無料公開する国際的コンソーシアムに参画している例もあります。さらに、マスクやガウン等の医療資材として石化製品が使われていることも忘れてはなりません。グループとしての多大な貢献に、そのグループに属する企業人として誇りと自信を持っていただきたいと思います。

歴史を紐解けば、疫病や公衆衛生、食糧など困難な状況に直面するたび、人類はイノベーションにより活路を開いてきました。課題を解決し、社会の変化に伴う新たなニーズに応えていくことが化学産業に携わるわれわれの使命と言えます。住友化学グループとして衆知を集め、イノベーションを先導する気概を持って取り組むとともに、変革の時代に果敢に挑戦していきましょう。

私自身も引き続き先頭に立って全力で頑張っていきます。グループ会社マネジメントの皆さんには、社員全員が、健康で、大いなる希望と夢を持ってこの困難な時期を乗り越えていけるよう、引き続きリーダーシップを発揮いただきたいと思います。再び、皆さんと直接お会いして奮闘をたたえ合うとともに、新たな成長に向けた前向きな議論ができることを楽しみにしています。そのときまでお互いに健康に留意しながら力一杯頑張りましょう。4月のメッセージと同じく、チャーチル元英首相の言葉を最後に贈ります。“A pessimist sees the difficulty in every opportunity; an optimist sees the opportunity in every difficulty.”(悲観主義者はあらゆる機会の中に困難を見いだす。楽観主義者はあらゆる困難の中に機会を見いだす)

以上