研究開発論文

1995年度

住友化学 技術誌 1995-Ⅱ(1996年1月30日発行)

LCDは表示特性の改良や新市場の開拓により、その市場規模を急激に拡大している。当社においてもLCDの表示特性を改良するために、位相差フィルム「スミカライト」、偏光フィルム「スミカラン」を上市以来これらLCD用光学フィルムの偏光性能の向上や表面特性、視野角特性の改良など様々な改良検討を進めている。本報では当社におけるLCD用光学フィルムの高機能化に関する検討状況について述べた。
(page 4~12 by 藤田 文男、坂倉 和明、康乗 幸雄、蔵田 信行、東 浩二、大西 敏博、荻野 和哉)

チトクロムP450は生物界に広く分布するヘム酵素で、分子状酸素を活性化し、多数の脂溶性化合物に一原子酸素を添加する反応を触媒する。分子生物学の進展により、P450が分子多様性を示すことが分子レベルで明らかになってきた。また、遺伝子工学の手法を用いることにより、ヒトを含む哺乳動物のP450分子種を酵母などの微生物で発現させることが可能になった。当社は、ヒト肝臓に存在し、外来薬物の酸化的代謝に関与する主要P450分子種11種類をそれぞれ酵母で発現させることに成功した。ヒトP450分子種を発現する組換え体酵母を用いると、新規開発化合物のヒトにおける代謝を、in vitroで容易に予測することが可能になる。特に、ヒトにおける薬物代謝の遺伝的多型に起因する個人差が知られており、これらP450分子種の関与や主要代謝物の分析、同定などは、新規化合物の開発に重要な情報を与えてくれる。
(page 13~21 by 薮崎 義康、秋吉 恵、林 浩司)

エチレン多元共重合体エマルジョンの基本的な品質設計要因の概要を解説した。また、接着剤及び紙、繊維分野用エマルジョンで、数種のグレードについて性能紹介を行なった。
(page 22~29 by 吉井 右治、富沢 長二、光武 達雄)

PPE系ポリマーアロイの衝撃強度発現機構についてSR-SAXSのデーターを中心に紹介する。PPE/ナイロン アロイではゴムの特性によりクレージングあるいはキャビテーションとその塑性変形過程は大きく変化した。PPE/PSアロイにおいて、PPE含量の高いバイモーダルゴム粒子系は単独粒子系と比べて多くの剪断変形とクレーズが生じることが定量的に確認された。それは剪断変形がマトリックスの配向を高めクレーズの成長を安定化させているためと考えられた。
(page 30~39 by 伊地知 靖人、佐賀 裕司、藤井 丈志、山本 圭作)

エチレン・アクリル酸エステル系ポリマーにP-ヒドロキシ安息香酸オリゴマーをグラフト共重合することにより、これまでの熱可塑性エラストマーにはない耐熱性と柔らかさを兼備した新規な熱可塑性エラストマーを開発することができた。
(page 40~49 by 庭野 正廣、真鍋 健二、村瀬 一基)

レスポンシブル・ケア活動の歴史および日本における状況を簡単にふれ、住友化学における社内体制・規程類の整備、内部監査および保安管理ガイドライン作成等の取組みについて記述した。また、当社のレスポンシブル活動をサポートする生産技術センターおよび生物環境科学研究所における取組みについても述べた。
(page 50~54 by 福永 忠恒)

毒性発現機構の解明研究の意義と重要性を、スミサイジンの光学異性体間の毒性の差、有機リン剤のラットにおける急性毒性の性差、α2uグロブリン腎症の検出マーカー、ラットにおける甲状腺ホルモンレベルの変動と肝薬物代謝酵素誘導剤の関係の研究例により紹介した。今後の研究として酵母発現ヒトチトクローム P450を用いた代謝研究、培養細胞内発現ヒトレセプターを利用した毒性研究の事例をあげ、毒性発現機構の解明研究の将来展望について述べた。
(page 55~63 by 斎藤 幸一、冨ヶ原 祥隆、斯波 久二雄、金子 秀雄、中塚 巌)

近年、生産をとりまく環境はボーダレス、価値観の多様化等によって大きく変化してきている。このような企業環境等の変化、技術革新の動きに対し、生産加工技術グループの化学プラントの自動化から加工組立プロセスまでの生産システムに関する技術開発の取組みを事例をまじえて紹介する。化学プラント自動化では、3K対策を中心に人にやさしい生産システムへのアプローチを、また加工組立プロセスでは必要技術、技術開発方法について装置開発及び要素技術開発面から概説した。
(page 64~72 by 中井 敏雅、山口 隆行、廣瀬 修、鈴木 孝志)

研究開発における情報の収集と活用が重要になっている。当社では、有機合成関連の研究推進のためデータベースの利用と活用に力を入れている。商用オンラインデータベースとインハウス反応データベースの現状を概観し、検討事例を紹介した。また、今後のデータベースの利用等について展望した。
(page 73~83 by 江本 義一、吉森 賢次、岡 紀子、谷井 久美子、片岡 みか、佐藤 洋)

住友化学 技術誌 1995-Ⅰ(1995年5月30日発行)

Resource*は、フルミクロラックペンチルを含有する新しいタイプの茎葉処理型除草剤であり、1994年、米国登録が認可された。本剤は低薬量でダイズ・トウモロコシ畑の重要広葉雑草を防除するが、特に最重要雑草のひとつであるイチビに卓効を示す。本剤は効力面だけでなく、毒性・環境面からも極めて安全性の高い剤として評価が高く、米国での上市のために既に原体を初出荷している。本稿では、スクリーニング研究の経緯、除草作用、製造法、物性・製剤、代謝・残留・毒性などについて報告する。
(page 4 - 18 by 橋本俊一、永野栄喜、大坪俊朗、南部健二、細川俊治、武元一樹)

ペンタシル型ゼオライト触媒の工業化プロセスの概観、並びに検討した3反応(形状選択的脱アルキル化、気相ベックマン転位、ピリジン気相合成)の概要を、酸性質制御という観点から解説した。
(page 19 - 29 by 佐藤 洋、北村 勝、広瀬賢一、石井典生)

高分子自体が発光し、直流・低電圧で、しかも高輝度を示す高分子発光ダイオードに有用な材料を開発した。これらの材料を用いて、70,000cd/m2の最高輝度、200cd/m2からの半減時間が約1,000時間である素子を作成した。
(page 30 - 40 by 大西敏博、野口公信、土居秀二)

高速情報処理および高周波を使用する通信機器用のプリント配線板は低誘電率および低誘電正接であることが要望されている。それらに適したプリント配線板用樹脂として、コンピュータ・ケミストリによる誘電率予測式を活用した分子設計によりスミ―エポキシLDXシリーズ及び新規シアネート樹脂を開発した。それらの樹脂の開発経緯および特性について紹介する。
(page 41 - 50 by 柴田充弘、上田陽一、渡部 久、遠藤康博、山崎 香、林 利明)

高純度アルミニウムの大量の需要が見込まれる新しい用途としての超電導電力貯蔵装置の開発状況を概観し、導体構造を中心に要点をまとめた。また高純度アルミの特性と、さらにそれを向上させるために当社で行っている安定化導体の開発状況も紹介する。
(page 51 - 66 by 高橋明彦、安田 均)

不定胚培養を利用したダイズの個体再生系の技術的な重要ポイントについて概説するとともに、本再生系を利用した遺伝子導入システムの確立についてまとめた。さらに、種子での組織特異的遺伝子発現のための、発現ベクター系の開発についても報告する。
(page 67 - 74 by 大江田憲治、長澤秋都、飯田朝子、渡辺英二郎)

ガスアシスト射出成形は、低圧射出成形法の一つであり、溶融樹脂を射出後、高圧の窒素ガスを樹脂内に注入し、中空部を形成する成形技術である。従来の射出成形にくらべ、高剛性でヒケや反りのない外観の優れた製品が得られる。本稿では、低圧成形について概説し、ガス射出成形については、原理と特徴、成形法、具体的事例およびCAE技術を用いた製品・金型設計技術について紹介した。
(page 75 - 86 by 東川芳晃、東 賢一、筒渕雅明、榧木 毅、下條盛康)

生理活性物質には光学異性体を有するものが多く、その生物学的あるいは物理化学的データを取得するためには、立体選択的分析法が必要不可欠である。本稿では、クロマトグラフィーによる光学異性体の分析について、高速液体クロマトグラフィー用光学活性固定相の最近の進歩と、それらを品質評価、代謝研究に応用した事例、さらに、近年新しく開発された手法であるミセル動電クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーの適用例について述べる。
(page 87 - 100 by 古田リツ子、岡本昌彦、高橋謙一、土井 侃)

暴走反応の圧力放散口を設計する際には、気液二相流の発生を念頭に置く必要がある。一般に二相流が発生すると、気体のみの放散を考えた場合より大きな放散面積を必要とする。本稿では、まず米国化学工学会の下部組織であるDIERSユーザーズグループの概要を紹介し、次にDIERSが開発した手法のうち、ベンチスケール熱量計と均質二相流を想定した簡略式について、その概要と具体的な適用事例を示す。
(page 101 - 117 by 菊池武史)

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