研究開発論文

2018年度

住友化学 技術誌 2018(2018年7月31日発行)

有機EL素子は自発光であり、薄型・軽量等の優れた特徴を有することから、次世代ディスプレイ技術として活発な研究開発が進められてきた。特に、高分子有機EL材料は、大型パネルを低コストで製造するための溶液製膜法に適した材料であり、大きく期待されている。本稿では、当社における高分子有機EL材料の開発を振り返りつつ、高効率化及び長寿命化のための材料設計について議論するとともに、最近の材料特性の進捗、そして今後の展望について紹介する。
( page 4~12 by 秋野 喜彦、津幡 義昭、山田 武 )

iPS細胞は体内の様々な組織や臓器の細胞に分化することが可能であり、再生医療への活用が期待されている。大日本住友製薬(株)においても神経系疾患領域や眼疾患領域を対象とした複数のiPS細胞由来細胞加工製品の開発を進めている。今回、自社で権利を有しているセンダイウイルスベクター法を用い、GMP等のレギュレーションに準拠して臨床用途に使用可能な他家iPS細胞を樹立し、高品質の細胞加工製品を安定的に製造するための原料となるセルバンクを作製した。
( page 13~20 by 大原 英剛、安藤 覚、岸野 晶祥 )

近年、低温領域においてもゴム弾性を有する、すなわち、耐寒性に優れるゴム製品の要求が高まってきている。ゴム製品の耐寒性を向上させるためには、主成分である合成ゴムの耐寒性を改良することが極めて重要となる。我々は、当社独自の技術によって、組成分布や共重合性を制御することにより、従来のEPDMを上回る耐寒性を示す新規エスプレン・ EPDM を開発した。本稿では、耐寒性に優れるEPDMの開発状況について紹介する。
( page 21~28 by 渡部 健太、中野 貞之 )

「STRONTEC® 屋外用蚊よけ KA・KO・I」は屋外空間での蚊成虫の忌避を効果・効能とした、医薬部外品の殺虫剤製剤である。超音波霧化を利用した害虫対策デバイスとしては、国内で初めて医薬部外品製造販売承認を取得した。本製品はだれでも簡単にコンパクトで持ち運びできる「屋外空間用の蚊よけ」デバイスで、屋外にて有効成分エミネンス・を定期的に霧化し、継続的・安定的に蚊よけ空間を作り出す。本稿では「STRONTEC® 屋外用蚊よけ KA・KO・I」の開発の歴史と製品の主な特徴について報告する。
( page 29~37 by 梶原 知紘、岡本 央 )

GaN単結晶基板の製造法に関して、これまで提唱・試験された各種の手法を概観するとともに、現在青色LDや高出力LED用途で広く採用されている、我々の開発したボイド形成剥離法(VAS法)によるGaN単結晶基板製作技術を紹介する。更に、次世代デバイス応用へ向けたGaN単結晶基板のより一層の高品質化、大口径化へ向けた取り組みについても紹介する。
( page 38~47 by 藤倉 序章、井上 敏寿、北村 寿朗、今野 泰一郎、鈴木 貴征、藤本 哲爾、吉田 丈洋、柴田 真佐知、齊藤 俊也 )

静電気放電は可燃性物質の最も懸念すべき着火源の1つである。適切な静電気着火防止対策を講じるためには、帯電現象や放電現象を正しく理解する必要があり、その技術を習得するためにはかなりの訓練が必要である。さらなるステップとして、リスクアセスメント技術の適用が望まれる。本稿では、住友化学(株)が開発した静電気リスクアセスメント技術を実施例とともに紹介する。
( page 48~59 by 太田 潔 )

多くの化学プロセスでは気体、液体、固体の2つ以上が共存し、それらの間に成り立つ相平衡の把握はプロセスや装置の合理的な設計に不可欠である。相平衡の基本理論は確立されているが、これに従わないケースも存在する。それらの多くには各相内や異相間での反応が影響しており、特異な挙動を表現するためには反応の考慮が必要になる。本稿では反応をともなう系に対するモデルと、それらを実際の工業プロセスに適用し成果を得た例を紹介する。
( page 60~68 by 鈴田 哲也 )

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