2009年度
住友化学 2009-Ⅱ(2009年11月30日発行)
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当社はプロピレンオキサイド(PO)製造プロセスにおいて副生するアセトフェノンを水素化して、スチレンモノマー(SM)の原料となるα―フェニルエタノールを製造する新規な固定床水素化プロセスを開発した。また、本プロセスに使用する新規銅系触媒を開発した。新規銅系触媒においては高活性が発現し、副反応である水素化分解の抑制がみられるので、高選択性である。本水素化技術をPO/SMプロセスに組み込むことによって、従来のプロセスと比べ、プロセスのコスト競争力が格段に向上した。
(page 4~9 by 日比 卓男,伊藤 真哉,奥 憲章,岩永 清司,小池 弘文)
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代表的な汎用樹脂のひとつであるポリプロピレン(PP)は、比重が低く、剛性、耐熱性、加工性に優れるという物性上の特徴を有し、また比較的低価格であることから、フィルム、自動車・家電などの工業部品、雑貨など、様々な用途に用いられている。近年、PPに対する品質の要求性能高度化に伴い、その製造プロセスにも様々なアイデアや工夫が組み込まれてきている。本稿では、主に特許・文献情報に基づき、PP製造プロセスのこれまでの変遷とその現状について、当社開発技術も交えて概括する。
(page 10~18 by 佐藤 秀樹,小川 弘之)
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高分子添加剤(安定剤)として、顧客ニーズにマッチした独自開発品SUMILIZER® GP、SUMILIZER® GS、SUMILIZER® GM、SUMILIZER® GA-80は、従来にない特徴を有する製品であり、その特異な性能を生かし、幅広い用途へ展開を図っている。本稿では、ポリオレフィンの安定化メカニズム、市場の環境変化による顧客ニーズの変遷と、それに対する当社添加剤での対応事例、及び、新規なGシリーズの開発に向けての取り組みについて紹介する。
(page 19~27 by 高橋 寿也,相馬 陵史,木村 健治,乾 直樹)
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ダニアレルゲンの簡易測定システムの開発に続いてアレルゲン低減化剤の開発を進め、酵素免疫測定法を用いてタンニン酸のアレルゲン低減化剤としての評価と製品開発を行った。さらに新規のアレルゲン低減化剤として種々の化合物のスクリーニングを行い、無機系として希土類塩、ジルコニウム塩等を、有機系としてカチオン性化合物等を見出した。またこれらの化合物について、散布剤、フィルターや掃除用具用加工剤等への応用展開を行った。
(page 28~37 by 乾 圭一郎)
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SYNSUPは、目的化合物を与えると、逆合成により可能性のある合成ルートを網羅的に探索するシステムである。情報指向型、非対話型という特徴がある。研究者のPCからe-mailでSYNSUPを実行できる環境を構築し2000年に公開した。現在、住友化学(株)、およびグループ会社数社で年間700 件程度利用されている。合成経路設計システムの歴史と当社の取り組み、SYNSUPの動作原理、ユーザ実行環境、実行例、および今後の課題について概説する。
(page 38~47 by 高畠 哲彦)
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新規 in vivo 変異原性試験として、コメット試験が注目されている。各種臓器で高感度にDNA損傷を検出できるものと期待される一方、標準的な試験法が定められていないという問題もある。近年、標準化された試験法の確立に向け、OECDガイドライン化を視野に入れた国際バリデーション試験が開始され、当研究所もこれに参画している。本稿では、in vivo コメット試験採択についての国際的な規制動向や、当研究所における試験手法の検討について紹介する。
(page 48~56 by 松山 良子,緒方 敬子,北本 幸子,太田 美佳)
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近年、欧州連合(EU:European Union)で環境汚染防止の対策として、特定の物質の使用制限に関する先進的な規則が制定されている。電気電子機器に対するRoHS指令に続き、すべての工業製品に対しても特定の物質の使用制限が検討され、REACH規則が施行された。REACH規則では高懸念物質として15物質を指定している。また、欧州委員会(European Commission)はRoHS指令の改訂版を提案した。改訂版RoHS指令案では従来の6物質に加え、4物質について新たに優先評価が提案された。製品中の物質管理は、このような背景から重要性が益々増大している。本稿では工業製品中のEU規制物質の分析法について紹介する。
(page 57~66 by 大西 雅之)
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住友化学グループでは、情報セキュリティ確保を経営課題の一つとして捉え、グループ全体を対象とした情報セキュリティマネジメントを進めてきた。グループにおける情報セキュリティマネジメントは、単一の会社で実施する場合と比べ、考慮すべき点やアプローチが異なる。本稿では、住友化学グループでの事例に基づき、グループにおける情報セキュリティ確保の進め方や課題、課題解決に向けた対策、および、更なるセキュリティ強化に向けた今後の取り組みについて述べる。
(page 67~76 by 鈴木 龍大)
住友化学 2009-Ⅰ(2009年5月29日発行)
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押出ラミネートとは、異種の材料を積層する手法の一つで、積層体は食品包装などに用いられる。異種の材料を積層することで各々の材料の長所を生かし、短所を補うことができ、機能性や意匠性に富んだ製品が得られる。本用途には、従来そのネックインの小ささからオートクレーブ型低密度ポリエチレン(PE)が用いられているが、昨今の薄膜化や高速加工性の要望から、さらにドローダウン性の良好な樹脂が望まれてきている。一般にドローダウン性はチューブラ型PEの方が優れるが、ネックインは大きい。そこで、この度 当社において、ネックインに考慮し、かつドローダウン性に優れるチューブラ型PEグレードを開発した。また、押出ラミネート加工性に及ぼすディッケル形状や位置、ロッドの位置等の検討を行い、それらの関係を明らかにした。さらに、押出ラミネート加工について、CAE技術を用いてシミュレーションを行うことで、ネックインや幅方向の厚み分布の予測が可能となった。
(page 4~13 by 森川 誠,桝谷 泰士,城本 征治)
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セラミックス分散液製造技術を駆使し、高活性な可視光応答型光触媒ILUMIO®を開発した。ILUMIO®は光触媒粒子が分散している為、塗布後乾燥するだけで光触媒活性を発現する。ILUMIO®から得られる塗膜は、蛍光灯照射下でアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、トルエンを分解し、更に可視光照射下で超親水性を示した。
(page 14~23 by 酒谷 能彰,奥迫 顕仙,須安 祐子,村田 誠,井上 勝喜,沖 泰行)
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ゴッツA®は天敵糸状菌ペキロマイセス テヌイペスを用いた新規微生物殺虫剤であり、施設野菜類の難防除害虫コナジラミ類に有効な防除資材として開発された。著者らは、本剤の工業化検討において大量培養および製剤化に成功するとともに、効力、保存安定性および安全性に優れる独自のオイルフロアブル剤として製品化するに至った。また、天敵昆虫などに影響が低いことから、IPM技術確立を推進するための有効な手段として提案することが可能となった。本稿では、ゴッツA®の開発経緯、生物学的特性、殺虫効力評価、製剤処方の最適化、製造法の確立、安全性評価について紹介する。
(page 24~33 by 丸山 威,新田 英二,木村 晋也,高島 喜樹,松村 賢司,出口 慶人)
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回折角と回折効率や偏光分離度などその他の特性とを実質的に独立に調整できる二段階設計法を開発した。この設計法を用いて、導光板、プリズムシート、拡散シート、および輝度向上フィルムを一体化した多機能光学シートの設計と試作を行った。試作した多機能光学シートの特性はほぼ設計値どおりであった。
(page 34~40 by 金 起滿,窪田 雅明,中塚 木代春)
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当社では1970年代の高度成長期に建設された設備を中心に、30年を超えて稼動している高経年化プラントを数多く保有しており、これらのプラントの安全、安定操業を維持していくことが重要な課題である。本稿では、使用中設備の健全性評価である供用適性評価(Fitness For Service:FFS)の概説を行い、国際的なFFS規格の一つであるAPI 579-1/ASME FFS-1の減肉損傷評価について、破壊試験と有限要素法シミュレーションにより検証を行った結果を紹介する。
(page 41~51 by 戒田 拓洋)
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