技術誌 住友化学

2010年度

住友化学 2010-Ⅱ(2010年11月30日発行)

住友化学(株)は塩化水素から塩素を製造する触媒プロセスを開発し、イソシアネート類製造プラントから排出される塩化水素を塩素へ変換するリサイクル技術として世界で高く評価され活用され始めている。本稿では、塩化水素から塩素を製造する各種技術開発動向とその展望について概説した後、住友化学法における最近の触媒改良技術について解説する。
(page 4~12 by 安東 博幸、内田 洋平、関 航平、クナップ カルロス、大本 宣仁、木下 正博)

プロフルトリン(フェアリテール®)は、住友化学(株)が開発した新しい殺虫剤である。衣料害虫に対して高い防虫活性を示すとともに高い蒸気圧と哺乳動物に対する高い安全性を有するため、衣料用防虫剤の有効成分として優れた性質を持っている。さらに、衛生害虫や不快害虫にも高い効力を示し、日本では2004年よりさまざまな製剤が市販されている。本稿では、プロフルトリンの発明の経緯とその効力、物性、安全性および製造法について紹介する。
(page 13~23 by 氏原 一哉、菅野 雅代、中田 一英、岩倉 和憲、西原 圭一、加藤 日路士)

自動車の乗員保護を目的に搭載されるエアバッグ装置は、TPE製のエアバッグカバーと呼ばれる部品で覆われている。エアバッグカバーに用いられるTPEには、重要な要求性能として低温での衝撃性能、および経年後もその特性を保持する耐久特性が求められる。近年、エアバッグの搭載車種、部位の拡大に伴い、エアバッグの構造や形状の違いにより、エアバッグカバー用TPEに求められる要求特性も異なってきている。本稿では、運転席用、助手席用エアバッグを例に、エアバッグカバー用TPEの高性能化、高機能化への取り組みについて紹介する。
(page 24~31 by 大谷 幸介、佐々 龍生)

プラントの制御性を改善し、プラントの性能を維持する仕組みとして、制御診断システム(PID Monitor)とPIDチューニングツール(PID Tune)を開発した。診断結果はWeb上に出力され、それに基づいて改善することで、プラント全体の制御性を効率的に向上させることができる。特に、PID Tunは、プラントの運転データを使って、プラントに変動を与えることなく適正にチューニングできるという特長をもつ。本稿ではこれらの技術概要と実プラントへの適用事例について紹介する。
(page 32~39 by 久下本 秀和)

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と核磁気共鳴分光法(NMR)を組み合わせたLC-NMRは、一度の分析で混合物の分離と構造解析を同時に達成できるハイスループット分析手法である。近年、本手法は感度面などの性能向上を背景に、実用性の高い分析手法として幅広く活用され始めた。本稿では、最新のLC-NMRの性能向上の要素となる技術を解説するとともに、研究開発への適用事例について紹介する。
(page 40~49 by 徳永 隆司、岡本 昌彦)

クロマトグラフィーは有機低分子化合物を取り扱う上で必須の分析技術であり、質量分析等の解析技術と組み合わせたハイフネーテッド技術(Hyphenated Technology)はオンラインでの迅速な解析に威力を発揮する。医薬品原薬(active pharmaceutical ingredients:APIs)、中間体製造プロセス開発において、これらの技術は主として目的物生成の確認、副生物、不純物の把握、解析に用いられ、開発研究を支えている。本稿ではプロセス開発の加速化、製品品質向上に向けた開発支援について、具体例を交えて紹介する。
(page 50~61 by 上田 正史、藤井 好美、中村 智和)

住友化学 2010-Ⅰ(2010年5月31日発行)

自動車部品の軽量化・コスト低減が求められており、エンジニアリングプラスチック、金属等の材料からポリプロピレン(PP)系材料への代替が進んできている。この目的のためにPPと他の成分とを複合したPP複合材料の開発が精力的に行われている。本稿では、PP複合材に関するコンパウンド技術、機械的物性改良技術、機能性付与技術について概説する。また、射出成形時に生じる種々の不良現象およびその解決方法について解説する。さらに、近年特に注目されてきている環境負荷低減技術について述べる。
(page 4~17 by 森冨 悟,渡辺 毅,神崎 進)

次世代太陽電池として注目される有機薄膜太陽電池(OPV)の概要、利点や、住友化学(株)での開発状況、および、世界的な開発動向について報告する。住友化学(株)は、高分子有機EL等の共役系高分子を使った有機エレクトロニクス部材の開発に注力しており、その技術を活用してOPVを開発中で、既に効率 6.5%の世界最高レベルを達成している。更なる高効率化の鍵を握る長波長吸収材料開発にも成功しており、確立したモルフォロジー制御技術を元に、早期の効率10%達成と実用化を目指している。
(page 18~27 by 三宅 邦仁,上谷 保則,清家 崇広,加藤 岳仁,大家 健一郎,吉村 研,大西 敏博)

高機能拡散板、アンチグレアフィルム、高色濃度・高コントラストカラーフィルタ、超高性能偏光フィルムなどの光学特性の解析に当たってはナノ粒子またはナノ構造による光の多重散乱現象の理解が不可欠である。ここでは、光の多重散乱をスカラー・ラディエイティブトランスファー法(SRTE)によって、任意形状の誘電体または金属粒子がランダムに分散した層状体の反射率および透過率を求める方法について説明する。入射光は平行光、拡散光またはこれらの混合したものであって良い。層状体は分割して粒子のクラスタとして、3次元FDTD法により、散乱断面積、減衰断面積および位相関数を求めた。金属粒子の場合には 1次のドゥルーデモデルを使った3次元再帰的コンボリューションFDTDを用いた。このときFDTD法では散乱光分布の遠方解を求めるのは困難であるから、レイレイ-ゾンマーフェルトの回折積分により遠方解に変換した。
(page 28~35 by バナジー シヤツシテイー,中塚 木代春)

保温材下腐食(CUI)は、長年稼動している化学プラントにおいて近年特に深刻化してきている劣化現象の一つであり、保温材の取り外し作業を必要とせず、かつ防爆要求の多いプラント設備に対応したCUI検査技術の開発が強く求められている。そこで、光ファイバードップラーセンサが元々防爆性能を有していることに着目し、新しいCUI検査技術の開発を試みた。本検査技術の開発状況について解説する。
(page 36~46 by 多田 豊和,末次 秀彦,森 久和)

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