研究開発論文

2012年度

住友化学 技術誌 2012(2012年6月29日発行)

スピネトラム(spinetoram)は土壌放線菌Saccharopolyspora spinosaが産生する活性物質(スピノシン類)に由来し、Dow AgroSciences社によるスピノシン誘導体の探索研究において、天然物のスピノシン類を化学修飾することによって創製された化合物である。また、本剤は広い殺虫スペクトラム、速やかな効果発現、収穫前日まで使用可能という特長を有している。2005年から住友化学(株)が日本における開発を開始し、2011年3月にディアナ®SC、ディアナ®WDG、スタウト®ダントツ®ディアナ®箱粒剤として農薬登録された。本稿では、その開発経緯、作用特性、実用効果、安全性評価などについて紹介する。
(page 4~16 by 下川床康孝、佐藤直樹、山口尊史、田中仁詞)

ポリプロピレンは代表的な汎用樹脂の一つとして多くの製品で使用されている。近年では、エネルギーや環境問題への関心の高まりから、省エネルギー化や低環境負荷の実現に貢献する付加価値の高いポリプロピレンの材料開発が盛んである。高付加価値化が進むにつれて、材料の構造や物性の発現機構は複雑化してきており、材料開発における解析的な課題に対して、効果的な解析技術をいち早く構築し、適用していくことが重要である。本稿では、構造解析技術のポリプロピレン材料開発への適用について、フィルムや複合材料の解析事例を通して紹介する。
(page 17~26 by 桜井孝至、山越静人、渡邊堅二、梅垣直哉)

2010年6月に欧州化学品庁がホウ酸をEU REACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)規則の高懸念物質(SVHC)の候補物質に指定した。偏光板において、対象となるのは偏光板中の(未反応)ホウ酸であり、PVA(ポリビニルアルコール)と架橋しているホウ素は対象外であるが、偏光板中の未反応ホウ酸を架橋ホウ素と区別する分析法は未確立であった。我々は、鋭意検討の末、偏光板を凍結粉砕して微粒子化することと、室温でのキレート抽出法を採用することで、固体状態の偏光板から未反応ホウ酸を選択的に抽出し、定量する分析法を開発した。
(page 27~35 by 國政誠也、田崎誠、山田公美、森本真次、栂井学)

産業上有用な化学製品、例えば、医薬や農薬を合成するための標準的な技術として、生体触媒を用いた反応が多く報告されている。生体触媒の優れている点は、一般的に立体選択性や位置選択性が高く、また、温和な温度や圧力条件下で反応を触媒できる点である。本稿では、不斉還元反応に適用可能な生体触媒の最近の開発例について紹介する。
(page 36~43 by 朝子弘之)

気体、液体、固体が混在して運動するプロセス(混相流プロセス)は化学工業において多様な利用がされてきた。本稿では、当社で取り組んでいる混相流シミュレーション技術を紹介する。事例として特に、これまで注力してきた気泡塔内液混合性のシミュレーション、微粒子流動層のDEM-CFDカップリングシミュレーション、界面追跡型モデルを用いたシミュレーションを紹介する。
(page 44~50 by 島田直樹、児林智成、鈴田哲也)

化学物質の甲状腺ホルモン系(視床下部-下垂体-甲状腺軸:HPT軸)への作用は、ヒト健康および環境生物における内分泌撹乱に関連する重要な毒性として認識されている。両生類変態アッセイは、カエルのみならずヒトを含めた脊椎動物全般におけるHPT軸への作用を評価するOECDおよびEPAガイドライン試験である。本稿では、カエルの変態過程や甲状腺ホルモン制御機構に関する科学的知見の考察に加え、当研究所で検討された本評価技術の内、精度の高い安全性評価に必須である病理組織学的検査手法について紹介する。
(page 51~58 by 宮田かおり、於勢佳子)

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