技術誌 住友化学

2013年度

住友化学 2013(2013年7月31日発行)

近年、液晶ディスプレイは従来のテレビ、モニター用途に加えて、スマートフォンやタブレットPCといったデバイスとして益々の発展を遂げた。しかし、高精細化に伴うカラーフィルターの開口率の低下やモバイル用途での電池容量の不足といった課題が挙げられており、改善方法の一つとして、カラーフィルターの輝度向上が望まれている。我々は、新規染料含有液晶ディスプレイ用カラーレジストDyBright®シリーズを開発し、カラーフィルターの輝度向上に寄与できる製品を上市した。本稿では、DyBright®シリーズ開発における新規染料開発について紹介する。
(page 4~9 by 井上雅人、芦田徹)

高純度アルミニウムは、酸化皮膜の制御が可能なこと、不純物元素や異物が少ないことなどから、電解コンデンサー用陽極箔、ハードディスク基板、半導体の配線材などエレクトロニクス分野で広く使用されている。また、低温での電気や熱の伝導性を活かして、超電導電磁石周辺部材としても使用される。本稿では、高純度アルミニウムの精製技術の進展、低温での物性評価と応用について報告する。
(page 10~19 by 星河浩介、田中一郎、恵智裕)

昨今の電力受給の逼迫から大型蓄電池の需要が増大している。我々は、室温で作動する大型蓄電池の候補として、資源的に豊富で、かつ安価な材料で構成されるナトリウムイオン二次電池の開発を進めてきた。本稿では、その負極材および正極材の開発動向を紹介するとともに、我々が開発した負極材および正極材の特性と、それらを組み合わせたナトリウムイオン二次電池の基本特性および安全性について報告する。
(page 20~30 by 久世智、影浦淳一、松本慎吾、中山哲理、牧寺雅巳、坂舞子、山口滝太郎、山本武継、中根堅次 )

本稿はフィルム等の外観検査に関する先進技術を解説する。一般に、長尺フィルムのようなウェブ状製品において欠陥を検査するためにはラインセンサが用いられる。しかし、ラインセンサによる1次元画像は欠陥に関して限られた光学情報しかもたない。そのため欠陥検出能力には限界がある。エリアセンサを用いることにより、多くの欠陥情報を含んだ2次元動画像を取得することができる。我々は2次元動画像をベースとして、欠陥の見え方を強調する新しい画像生成技術を確立した。また、フィルム製造工程に適用可能なインラインウェブ検査システムを開発した。
(page 31~42 by 廣瀬修、尾崎麻耶)

近年、量子化学計算は反応機構解析やスペクトルの帰属など様々な領域で使用されるようになっている。この背景には、計算機能力の向上、理論計算手法の発展、特にDFTの精度の向上に依るところが大きい。しがしながら、DFT計算の精度は用いる汎関数に大きく依存するため、その計算手法は適切に選ぶ必要がある。また、理論計算のみで反応機構解析等を実施することは誤った結果に至る可能性があるため、実験結果との整合性を確保する必要がある。本稿では、触媒反応の理論計算による機構解析、及び分光学的な短寿命反応中間体の観測事例を紹介する。
(page 43~52 by 田中章夫、前川健典、鈴木机倫)

ルラシドン塩酸塩は、現在、米国およびカナダで販売され(製品名LATUDA®)、国内で開発中の統合失調症治療薬である。ルラシドンは、ドパミンD2受容体およびセロトニン5-HT2受容体に対して拮抗薬として働き、5-HT7受容体や5-HT1A受容体に対する高い結合親和性を特徴とし、副作用に関連する受容体に対する親和性を低減した化合物である。本稿では、構造活性相関や非臨床データを交えながら、ルラシドンの研究経緯を紹介する。
(page 53~62 by 丸山潤美、堀澤智子)

アイミクス®配合錠は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるイルベサルタンとカルシウム拮抗薬であるアムロジピンを含有する高血圧症治療用配合錠であり、本邦において2012年12月19日に上市されている。本稿では、以下降圧剤の変遷、配合剤の現状を解説し、アイミクス®配合錠の開発コンセプト、薬効薬理作用及び臨床成績を紹介する。
(page 63~69 by 森雅哉、加藤浩)

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