研究開発論文

2006年度

住友化学 技術誌 2006-Ⅱ(2006年11月30日発行)

オリセット®ネットは、ペルメトリンというピレスロイド殺虫剤を樹脂に練りこみ製造された繊維によりできたマラリア媒介蚊防除用の蚊帳である。最も重要な特徴は洗濯によりネット表面から薬剤が流亡しても繊維内部から薬剤が表面にブリードし再び効果を示すことである。また、繊維そのものが丈夫なため、アフリカにおいて少なくとも5年間の効力、耐久性が確認されている。
(page 4~11 by 伊藤 高明,奥野 武)

EPPE(Easy processing Polyethylene)は、成形加工性と強度のバランスを最適化した新規なポリエチレンである。EPPEの分子構造上の特徴は、長鎖分岐を有することであり、この構造に起因して、高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)に匹敵する優れた成形加工性と高い機械的強度を兼ね備えたユニークな材料となっている。EPPEは、低溶融トルクや高溶融張力などの特異な溶融特性により、低温成形や高速成形が可能である。これらの特徴に基づき、本稿では、低臭気、低味覚フィルムやクリーンフィルムなどの高品質フィルムの開発、成形加工時の消費エネルギーの削減など環境問題への対応、生産性の改善などの応用展開について紹介する。
(page 12~19 by 近成 謙三,永松 龍弘)

クロチアニジンは住化武田農薬(株)が開発・上市したチアゾール環を有する新規なネオニコチノイド系殺虫剤である。ネオニコチノイド系殺虫剤は浸透移行性を有し、半翅目、アザミウマ目害虫を中心とした吸汁性害虫に活性が高いのが特徴である。クロチアニジンは双翅目、甲虫目、鱗翅目などの害虫にも殺虫スペクトラムが広がり、さまざまな処理方法が可能な優れた殺虫剤である。本稿ではクロチアニジンの開発経緯、生物活性、安全性、製法等について紹介する。
(page 20~33 by 采女 英樹,高延 雅人,赤山 敦夫、,横田 篤宜,水田 浩司)

化学プラント装置の安全、安定操業を維持し、寿命延長を図るための新しい設備管理手法としてRBI(Risk Based Inspection;リスク基準検査)やFFS(Fitness For Service;供用適性評価)が取り入れられようとしている。これらの設備管理手法に必要な検査技術として、応力腐食割れの検査方法、運転中検査のための高温部位の検査方法、また、炭素鋼製反応器のバッフル下反応管の検査方法、そして、産学共同研究により転がり軸受診断技術を開発したので、本稿ではこれらの事例を紹介する。また、本稿で紹介する非破壊検査技術が回転設備等からの異物混入防止対策として応用可能であるため、この点についても紹介する。
(page 34~43 by 森 久和,末次 秀彦)

近年、EUで環境汚染防止の対策として、有害物質の使用制限に関する先進的な規制が制定されている。自動車のELV指令に続き電気・電子機器に対しても有害物質の使用規制が検討され、WEEE指令、RoHS指令が制定された。ELV指令では重金属4種(Cd、Pb、Hg、Cr6+)の使用が、RoHS指令では同重金属4種に加え臭素系難燃剤2種(ポリ臭素化ビフェニル、ポリ臭素化ジフェニルエーテル)の使用が規制されている。このような状況のもとで、製品中の有害物質管理の重要性が益々増大してきている。本稿では、規制元素であるCd、Pb、Hg、Cr、BrのXRFによるスクリーニング分析と、各種分析装置による精密分析について紹介する。
(page 44~51 by 小笠原 弘,田中 桂,真鍋 秀一朗)

住友化学 技術誌 2006-Ⅰ(2006年5月31日発行)

プロピレンオキサイド(PO)の既存製法には塩素を用いる単産法と有機過酸化物を用いる併産法とがあるが、副生物の問題や併産品の市況に左右されるといった問題があり、新しい単産製造法が強く望まれていた。当社は新規な高性能Tiエポキシ化触媒の開発を契機に、クメンを酸素キャリアーとする全く新しいPO 単産法技術を開発した。このクメン法PO単産技術は既存法に比べ高収率で副産物の少ないグリーンプロセスである。
(page 4~10 by 辻 純平,山本 純,石野 勝,奥 憲章)

高度情報化社会における電子機器の急激な進展に伴って、リソグラフィー技術が高度になり、その基盤材料であるフォトレジストには高い性能が求められている。当社は、1996年よりArFレジストの開発を始めて、1997年に他社に先駆けてPAR-101を上市した。その後リソグラフィーの微細化が進む中で、新しいコンセプトの素材開発、およびプロセスの最適化に努めて、市場ニーズに応えた新製品ArFスミレジスト®シリーズを上市してきた。
(page 11~16 by 武元 一樹,枝松 邦茂)

テクノロイ®は、高い両面平滑性を有し、高光沢で高い表面硬度を有するアクリル樹脂(PMMA)フィルムである。この特徴を生かし、有機溶剤系塗装代替を目的とした表面加飾材料として、自動車部品などで用いられている。更に、コーティング基材フィルムとしても採用が始まっており、今後、光学分野への適用の可能性も期待される。本稿では、テクノロイ®各種グレードの基本的な特徴並びに応用展開事例について紹介する。
(page 17~23 by 落合 伸介,佃 陽介,小山 浩士)

同一分子内にフェノール系酸化防止剤の部位とリン系酸化防止剤の部位の両方持ち合わせるユニークな構造のSumilizer®GPは、熱可塑性樹脂の加工時の劣化を効果的に抑制できる。本稿では、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂など種々の熱可塑性樹脂の加工時における安定化と同様に熱可塑性樹脂の新しい用途展開の可能性についても紹介する。
(page 24~29 by 木村 健治,阿波 秀明,乾 直樹)

我々は、新規なポリアミド微粒子の製造方法と漂白方法を見出した。本方法で製造したポリアミド微粒子の特徴は、平均粒子径5~10μmの真球状であり、その粒度分布幅が狭く、かつ白色度に優れたものであり、主として化粧品分野で使用されている。また、本製造方法は韓国のSH Chemical Co., Ltd. へ技術輸出を行った。我々はまた、比較的粒子径の大きな真球状ポリアミド粒子(平均粒子径20~100μm)の製造方法を見出した。今後、成形材料等の工業用途への展開が期待される。
(page 30~35 by 平野 雅親,山崎 健史,今井 宏)

反応、相間物質輸送、熱輸送を伴う混相流の状態を予測できる解析手法を紹介する。本数値計算手法は既存の解法の枠内で構成でき、またプログラムの修正も容易である。この特長から、パーソナルコンピュータを用いた反応器内の流動状態の計算がより身近になる。複数の対象に適用することによって、提案した手法が流体密度の温度、圧力、化学種依存性を正しく評価できること、また装置スケールや形状、運転条件が熱・物質収支に及ぼす動的な影響を直接評価できることを実証する。
(page 36~43 by 島田 直樹,尾崎 達也,鈴田 哲也)

魚介類における化学物質の濃縮性は、その物質の食物連鎖を介したヒトおよび環境生物への暴露量を決定する1つの因子になることから、安全性評価上も重要な評価項目となる。これは2004年に改正された化審法でも一定レベル以上の輸入・生産量の新規化学物質に対して原則必須とされる試験項目の1つに挙げられるが、その一方で評価の効率化などのために化学物質の疎水性などに着目した予測手法の適用も一部で認められることになっている。ここでは経済産業省の委託調査事業を通してその理論的背景を調査した分子量閾値の考え方を中心に、現在の化審法で認められている濃縮性予測手法について紹介する。
(page 44~52 by 仲井 俊司,高野 光太郎,齋藤 昇二)

高分子LEDをはじめ、最近の表示関連材料では、材料の発光吸収スペクトルが主要な特性である。これを予測する解析手法として時間依存密度汎関数法が注目されている。我々も数年前から、この手法を積極的に用いて材料設計に役立ててきた。代表的な高分子LED材料としてpoly(9,9-dialkyl- fluorene)などの光学スペクトルの解析を例に、我々が解析で用いた手法も含め、その特徴を説明する。その適用領域は広く、誘電関数も求めることができるため、今後の展開として半導体材料の解析も紹介する。
(page 53~59 by 善甫 康成,石田 雅也,秋野 喜彦)

バックナンバー