研究開発論文

2002年度

住友化学 技術誌 2002-Ⅱ(2002年11月30日発行)

当社が開発したITO(In2O3-SnO2)粉末は狭い粒度分布幅を有し、高結晶性と高純度であることが特徴である。当社ITO粉末はインジウムと錫を含む混合水溶液をアルカリ水溶液で中和した後に焼成する方法にて製造される。得られるITO粉末のBET比表面積は3~6m2/gで、一次粒子径は0.1~0.3μmである。平均凝集粒子径は2~6μmであるが、この凝集は弱いため容易に平均凝集粒子径が0.6μmにまで解砕することが可能である。この粉末の成形及び焼結条件を最適化することで、焼結温度1500℃にて、相対密度99.5%以上の超高密度焼結体を得ることが可能である。
(page 4~8 by 藤原進治, 黒飛義樹, 沢辺佳成, 三枝邦夫)

近年、液晶ディスプレイ市場の成長は目覚しいものがある。その用途も、ノートPCからモニター、さらには薄型TVや小型情報端末などに拡大しており、今後も大きな成長が期待されている。このような市場の要求に応え、かつコスト競争力の強化を図るため、われわれは、メートル角を越える大型ガラス基板が流動する最新鋭の第5世代カラーフィルターラインの建設に着手した。本稿では、第5世代ラインのキーテクノロジーである精密コーティング技術、とりわけ毛細管現象を利用したキャピラリーコータに焦点をあてた検討状況を紹介する。
(page 9~14 by 松本力也, 酒井昭雄, 高橋一司, 村上則夫)

液晶ディスプレイに用いられるバックライトを構成する材料としてアクリル材料(PMMA)が用いられている。ノートパソコンや液晶モニターでは極めて透明性の高いアクリル材料がバックライトの導光板用材料として用いられ、大型の液晶テレビでは拡散板が用いられている。本稿では、導光板用アクリル材料と拡散板について述べるとともに、当社で開発した大型液晶モニター用導光板の新規成形技術について述べる。
(page 15~22 by 真鍋健二, 山崎和広, 西垣善樹, 前川智博)

液晶表示装置に欠かせない光学的異方性を示す材料に二色性色素がある。現在、主に染料系偏光フィルムに使用されているが、更なる偏光性能と耐久性の向上要求に応え、新規二色性色素の開発に取組んでいる。本稿では偏光フィルム用色素の分子設計指針について紹介する。また、別表示モードであるゲストホスト型液晶表示装置に用いる色素として、液晶中での二色比が世界最高レベルの新規ジオキサジン色素を見出したので、その開発経緯についても紹介する。
(page 23~30 by 栢根豊, 荻野和哉, 太田義輝, 芦田徹, 田中利彦)

FCAW(Flux Cored Arc Welding)は、高能率で経済的な溶接法のため、当社のプラント構成部材にも採用される機会が多いが、低靭性あるいは曲げ試験で割れを発生するなどの問題点が顕在化している。FCAW継手の機械的性質を調査した結果、溶接条件によっては、溶接金属中の高酸素に起因した介在物が多数認められ、機械的性質の低下が著しい場合があるため、化学プラントへの適用制限を行った。
(page 31~41 by 星加貴久, 森久和)

住友化学では、ポリオレフィン、特にポリエチレンの加工性を向上させる新規高性能加工安定剤(Sumilizer GP)を開発した。Sumilizer GPは、分子内相乗効果を得るために、リン部位とフェノール部位を持つ世界初のリン系二次酸化防止剤である。ここでは、SumilizerGP の開発経緯、その化学構造に由来する性能などについて紹介する。
(page 42~49 by 児島史利, 福田加奈子, 三宅邦仁)

自動車用PP内装材において、高流動性および高耐衝撃性を有するグローバルな新規高性能統一材が望まれていた。衝撃吸収機構の理論的背景を踏まえ、PP中にエラストマーを微分散させた固体構造モデルを提案した。PPとエラストマーの界面制御を行うため相溶化剤の検討を行い、特定のSEBSが優れた性能を発現することを見出した。また、金型内流動解析および部品の外観品質など実用性能評価を並行して行うなど提案型で開発を進め成功に至った。
(page 50~55 by 下條盛康, 東賢一, 大川健一, 近藤慎一)

我々は農医薬に含まれる0.1%以下の不純物成分でも質量分析することができるオンライン濃縮前処理装置付きミクロ液体クロマトグラフ質量分析システムを構築した。このシステムはLC装置、ミクロLC装置、分画用ループ、プレカラムが二流路八方切替えバルブに接続された構成となっている。LCで検出された目的成分は溶出液に水を添加しながら分画ループに導入された後、オンラインでプレカラムに濃縮され、最後にグラジェントをかけてミクロLCカラムで分離させ、ESI-TOFで分析する。このシステムによりpmoLレベルの成分についても精密質量を含む質量情報を得ることができる。
(page 56~64 by 山下和子, 岡本昌彦, 中井清)

住友化学 技術誌 2002-Ⅰ(2002年5月30日発行)

最近の高機能性高分子材料は耐熱性・耐溶剤性が高く分析・構造解析が困難であるが、ポリマーの前処理や分析・構造解析手法に工夫を凝らすことにより詳細な解析が可能になってきた。本稿では、その例として、(1)超臨界流体による選択的分解反応を用いたコポリマーの新しい組成分析法、(2)高速溶媒抽出(ASE)法を用いた不溶・不融のポリマーからのモノマー・オリゴマー成分の抽出・分析法、(3)ポリマーの末端構造や配列規則性を高磁場核磁気共鳴(NMR)法で解析する際に有効な手法(多次元NMR法、WET法)について紹介する。

有機合成において化学構造や反応機構の解明に最も有効な核磁気共鳴(NMR)分析手法について、研究効率の向上を目的として当社で取り組んでいる「自動前処理ロボット(AutoPrep)を利用したNMR測定自動化と集中体制化」および「NMRスペクトルの自動構造解析システムの導入と開発」について紹介する。
(page 13~22 by 藤田邦彦, 増井秀行, 森本真次)

独自の光学顕微鏡である収束光顕微鏡(CBOM)を開発した。通常の光学顕微鏡では試料を平行光で照明するのに対し、収束光顕微鏡は収束光で照明する。このことにより回折像および光学像の両像を同一視野内で観察できる。さらに回折像の空間フィルタリングにより、回折像に対応した新たなコントラストを光学像に付与することができる。本顕微鏡の原理、特徴について述べ、収束光顕微鏡で初めて解明された新規構造を中心に収束光顕微鏡について紹介する。
(page 23~31 by 内海晋也, 藤井丈志, 美濃部正夫)

新しい農薬の創製を目指し、容易に入手可能な2、3-ジクロロ- 5 -トリフルオロメチルピリジンを用いて活性化合物の探索を行っていた。その過程で、このピリジンと酢酸ナトリウムの反応により得られた副生物を単離・構造決定した結果、[1(2 H)-3、3’-ジクロロ-5、5’-ビス(トリフルオロメチル)-2’-ビピリジン]-2-オンが殺虫活性を有し、新規な化合物であることが判明した。この化合物の構造展開によりいくつかの候補化合物を見出した。また誘導体合成展開時、本化合物の特異な化学反応性および新規なペルフルオロアルキル化反応を発見した。
(page 32~43 by 坂本典保, 松尾憲忠)

超臨界流体に対する芳香族化合物とその異性体の溶解度推算法として、多サイトモデルモンテカルロ法を提案し、その効果を検討した。本法を用いれば、グループごとに決められた共通のパラメータを用いて溶解度を計算でき、さらに異性体の識別も容易にできることが示された。本稿で得られた結果は、超臨界状態のように測定が難しい系や安全面で問題ある系の模擬実験として分子シミュレーションが代用できることを示唆するものである。
(page 44~50 by 森康彦)

発達神経毒性は、重金属や化学物質などの曝露による胎児期あるいは生後発達期の神経系の構造および機能に対する有害作用である。近年、化学物質がヒト、特に子供の発達に影響を及ぼす可能性に対する社会的な懸念が強まっている。化学物質の発達神経毒性評価は、米国や経済開発協力機構の試験ガイドラインのもとに、精度の高い評価が求められている。本稿では、化学物質の発達神経毒性ガイドライン試験の実際と問題点、今後の発達神経毒性研究に対する私たちの取組みを紹介する。
(page 51~59 by 吉岡孝文, 小林久美子, 串田昌彦, 池田真矢, 佐々木まどか, 辻良三)

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