研究開発論文

2007年度

住友化学 技術誌 2007-Ⅱ(2007年11月30日発行)

アミドフルメト(パンダック®)は、当社が独自に発明、開発した殺虫剤であり、屋内に生息する塵性ダニ類全般に対し高い致死効力と速効性を有すると共に、既存の薬剤では防除が困難であったツメダニ類にも高い致死効果を有している。アミドフルメトは安定性に優れ、各種製剤に適応可能であり、実使用場面においても高い安全性を有していることから、既に屋内塵性ダニ防除剤の有効成分の一つとして実用化されており、今後とも屋内塵性ダニ特効剤として大きく期待されている。
(page 4~13 by 森 達哉,松尾 憲忠,波多腰 信,田中 康順,於勢 佳子)

シンクロトロン放射光や中性子などの量子ビームを利用した散乱法は、数オングストロームから数1000オングストロームの幅広いレンジにわたる高分子の階層構造の研究をはじめ、構造と物性との相関を理解する上で有益な情報を与える実験手法である。当社では、研究開発の更なる促進を図るため、放射光施設や中性子施設など社外研究施設を活用した研究を積極的に押し進めている。本稿では、量子ビームの利用技術ならびにポリオレフィンの構造物性研究への応用について、フィルム延伸挙動の観察技術や成形加工品の構造解析などの事例を通して紹介する。
(page 14~23 by 桜井 孝至,野末 佳伸,笠原 達也,山口 登)

医薬原薬、中間体の製造プロセスの多くは反応・後処理・晶析・ろ過・乾燥操作の流れで構成されている。ろ過操作でトラブルが発生すると品質低下、生産性低下および作業効率の大幅な低下につながることが多く、医薬品製造プロセスにおいてろ過工程を安定化することは重要である。本稿では遠心分離機によるろ過操作における、スラリー給液・ろ過ケーキ洗浄操作条件、ケーキ脱液操作条件を設定するための「小スケール実験から製造スケールへのスケールアップ技術」について紹介する。
(page 24~30 by 高橋 邦壽,塩尻 進)

ボールミルは容器内にボールと砕料を入れ、その容器を運動させることによって粉砕を行う装置である。その装置設計や条件選定の手法は経験的な知見に依存する点が多く、装置のスケールアップも容易ではない。本稿では、転動ミルおよび揺動ミルを対象にして、離散要素法シミュレーションと粉砕実験を組み合わせたボールミルのスケールアップ手法ならびに設計条件の最適化手法について紹介する。
(page 31~38 by 木村 真喜男,鳴海 雅之,児林 智成)

住友化学(株)の化学物質管理の大きな特徴は、化学メーカーとしての幅広い技術力と広い知見をベースにした総合的な体制を組んでいるところにある。またリスクコミュニケーションの実践に向けては、「地域とともに発展することが企業の使命である」との考え方に基づき、様々なステークホルダーへの「情報公開」と「対話」を積極的に進めている。2007年2月にはこうした当社の取り組みが認められ、化学企業として初の「PRTR大賞2006」の大賞を受賞した。本稿ではこうした当社の取り組みについて概説した。
(page 39~51 by 奈良 恒雄)

住友化学 技術誌 2007-Ⅰ(2007年5月31日発行)

液晶TVに代表される大画面の液晶バックライトシステムの多くは、直下型と呼ばれる方式が採用されている。この直下型バックライトユニットには、冷陰極管ランプのイメージを隠蔽するため、また、薄い光学フィルムを支える支持板として、光拡散板が用いられている。本報告では、この光拡散板に要求される諸特性と、その特性を得るための開発状況について述べ、併せて、最近の新しい動きについても概説する。
(page 4~12 by 金光 昭佳,坂本 隆,井山 浩暢)

コシヒカリなど倒伏しやすいが食味の良い「長稈・良食味品種」専用の基肥一発肥料"楽一®"を開発した。"楽一®"は肥料成分と共に倒伏軽減剤ウニコナゾールPの溶出をコントロールする世界初の基肥一発肥料で、基肥時に一回施肥するだけで肥効を生育後半まで持続させると共に、倒伏を軽減することで最適穂肥時期に肥効を高めることを可能とした。本報告では"楽一®"の特長と水稲の生育、収量、玄米品質に及ぼす影響について概説する。
(page 13~23 by 柴田 秀之,竹林 禎浩)

当社の高純度アルミナは、アルミニウムアルコキシドの加水分解法による量産技術を1981年に確立し、現在の生産能力は1500t/Yに達する。高純度アルミナの需要は、表示材料、エネルギー、自動車、半導体やコンピューター等の分野において広がりを見せている。本稿では、高純度アルミナの最近の用途展開例を紹介し、当社が新規に開発したアルミナ製品について述べる。
(page 24~32 by 藤原 進治,田村 泰章,真木 一,東 紀史,竹内 美明)

加硫ゴム製品の生産は、インターナルミキサーやオープンロールなどの混練、押出成形、熱空気加硫などいくつかの工程を要し、これらが高い生産コストの理由の一つとなっている。近年、我々は生産コストを削減できる易加工性エチレン-プロピレンゴム(GP-EPDM)の開発に注力しており、連続加硫用スポンジ材料に設計したGP-EPDM"エスプレン®7456"を上市した。今回は、過酸化物架橋に適した防振ゴム用GP-EPDMを紹介する。本防振ゴム用 GP-EPDMは、EPDMの比率が高い低充填配合でも優れたロール混練加工性を示し、次世代の自動車用マフラーハンガーに対応した優れた防振特性を示す。
(page 33~39 by 中野 貞之,佐々 龍生)

膜分離は分離機能を持つ膜を用い、分子量や化学的性質の違いから混合成分を分離する技術であり、相変化を利用する蒸留と比較して省エネルギープロセスであるのが特長である。一方で膜は乳化技術やメンブレンリアクターとしての利用も可能であり、その応用は分離用途だけにとどまらない。筆者らは、膜技術プロセス開発に取り組んでおり、本稿では樹脂溶液の分離、排水処理、色素の高度精製(脱塩)プロセスへの応用展開と新規技術について紹介する。
(page 40~48 by 車谷 昌彦,北浦 武明)

ES細胞は自己複製能と多分化能を有する多能性幹細胞である。最近、ES細胞を化合物の安全性評価へ応用する試みが開始され、心筋細胞への分化能を利用したin vitro発生毒性試験(EST)がドイツで確立された。当社でもEST技術を導入し、欧州で行われた検証試験と同等の成績を得て、開発初期のスクリーニング系などへの利用を検討している。さらに、国家プロジェクトに参画して、より簡便で高精度な試験系の開発にも取り組んでいる。
(page 49~55 by 堀江 宣行,樋口 敏浩,川村 聡,斎藤 幸一,鈴木 紀之)

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