研究開発論文

1997年度

住友化学 技術誌 1997-Ⅱ(1997年11月28日発行)

液晶表示装置用新規位相差フィルムとして、レターデーションが温度で可逆的に変化する温度補償型位相差フィルムの報告をする。本位相差フィルムを用いることでSTN-LCDの表示できる温度範囲を広げることが可能である。
(page 4~11 by 桑原眞人、野口公信、大西敏博、坂倉和明、黒岩秀夫)

リンバー®は、当社が開発した新規化合物フラメトピルを含有する新しいタイプのイネ紋枯病防除剤である。
イネ紋枯病は、わが国ではいもち病に次ぐ水稲の重要病害で毎年各地で発生し大きな被害をもたらしている。そのような中、当社では水面施用でも高い防除効果を有する紋枯病防除剤としてリンバー®を選抜し、1989年より日本植物防疫協会委託試験を通じて実用性評価を精力的に進め、1996年10月にイネ紋枯病防除用殺菌剤として国内における農薬登録を取得し販売が開始された。
本稿ではリンバー®の研究の背景と経緯、構造活性相関、作用特性、作用機構、圃場評価、製剤、安全性、動植物代謝、環境挙動などについて紹介する。
(page 12~23 by 森達哉、今井正芳、小栗幸男、磯部直彦、谷亨、葉賀徹)

SRSエアバッグは、最近標準装備化が進行し、大衆車に搭載されるまでになっている。エアバッグは通常カバーと呼ばれる部品で覆われているが、カバーに予め設けられた薄肉部がエアバッグの膨張で破断し、エアバッグの展開を許す構造となっている。現在、この材料として熱可塑性エラストマー(TPE)が広く用いられている。
本稿では、この用途に必要な物性として低温衝撃性能等を挙げ、材料と用途の関係をオレフィン系TPEの適用例を用いて解説する。
(page 24~29 by 浜中達郎、大山博、小島啓太郎、菊地利注、日笠忠)

Sumifix Supra染料を用いた環境に与える負符が小さく、生産性の高い染色方法“LET’S染色”を開発したので、開発に至る経緯と特長について紹介する。
(page 30~39 by 山本かすみ、鷲見武志)

最近の質量分析法は目覚しく進歩しており、特にソフトイオン化法と言われるESI、MALDIなどのイオン化法の開発により低分子有機化合物は勿論のこと、生体高分子や合成高分子までが分析対象となって来ている。
本稿では当社におけるバイオテクノロジー分野への質量分析法の応用について得られた成果の一端を紹介する。
(page 40~50 by 岡本昌彦、三上寿幸、柳和則、瀧本善之)

化学プラントでは取り扱う環境の複雑さや過酷さから設備を構成する材料の腐食が問題となることが多く、何らかの対策を講じて設備の安定化・長寿命化に努めなければならない。そのためには設備の腐食状況を把握して適切な設備管理や防食管理を行うことが重要となる。このような設備材料の腐食状態を的確に把握する方法として腐食モニタリング法がある。
本稿では当社で比較的よく用いられている腐食モニタリング法の概要と適用事例について紹介する。
(page 51~59 by 藤田和夫、永山正昭、越野一也、徳増善久)

住友化学 技術誌 1997-Ⅰ(1997年5月31日発行)

住友化学が見い出し、開発上市した幼若ホルモン類縁体ピリプロキシフェンの研究の経緯、生物効力、物性、製剤、製造法、安全性についてまとめた。
(page 4~20 by 波多腰 信、岸田 博、川田 均、大内 晴、磯部 直彦、萩野 哲)

半導体製造用のポジ型i線レジストの開発に関して、当社の独自技術であるノボラック樹脂及び感光成分であるジアゾナフトキノン化合物の材料設計技術を中心にまとめた。
(page 21~29 by 花畑 誠、高橋 祐幸、上谷 保則、尾崎 晴喜)

アクリル系の光拡散板に関して、光拡散性の付与方法に関する技術および特許から見た開発動向について概説した。また、独自の考え方に基づいて光拡散に関するシミュレーション技術を開発し、この技術を用いて優れた性能の光拡散板を開発した。このシミュレーション技術と開発した光拡散板の特性について説明した。更に、照明器具においては蛍光管の進歩によりこれまでと違った光拡散板を開発していく必要があることについても触れた。
(page 30~40 by 前川 智博、金光 昭佳、真鍋 健二)

リチウム二次電池用正極材料LiNiO2の欠点であった高容量でのサイクル性を、ガリウム添加により充放電時の結晶構造変化を制御することで改善できた。さらに円筒型電池を試作し、1600mAhの高容量を達成した。
(page 41~48 by 中根 堅次、西田 裕紀、西方 源次郎、山本 武継、加美 謙一郎、舘野 辰男、三浦 等、佐藤 朋有)

家庭用殺虫剤の室内挙動を把握するため、ハエ蚊用またはゴキブリ用エアゾールを種々の条件下で使用し、有効殺虫成分の気中濃度や床残留量等を実測するとともに、殺虫剤の室内挙動を予測できるシミュレーションモデル InPestを開発した。さらに、幼児を含む居住者の殺虫剤の曝露量を見積る手法を確立し、定量的な安全性評価を可能にした。
(page 49~60 by 的場 好英、大西 純一、松尾 昌季)

メタジオールは重合用触媒や樹脂改質剤として用いられるジアルキルパーオキサイドの原料となる。メタジオールはレゾルシン中間体のハイドロパーオキサイドの還元によって製造できる。今回、この需要増に対応するため、従来の亜硫酸ソーダ還元法からPd触媒を用いるスラリー水添法を開発し、工業化した。
(page 61~66 by 中山 敏男、石野 勝、徳増 重文、真木 洋)

ボーキサイト中のアルミナ・溶解性シリカのアルカリに対する抽出速度差を利用して、従来のアルミナ製造プロセスと比較して、苛性ソーダの消費量を約50%削減するプロセスを開発した。この苛性ソーダ削減プロセスは、(1)2流体方式の溶解システム、(2)高圧での高速固液分離、(3)種添加による脱硅反応システム、(4)高速固液分離・洗浄システムからなり、コスト削減だけでなく、プロセスで発生する廃棄物の有効利用の可能性が示唆された。
(page 67~72 by 原戸 卓雄、石橋 和久、石田 隆浩、加藤 久勝、稲見 道和、村上 光明)

核磁気共鳴法(NMR)、質量分析法(MS)や赤外線吸収法(IR)などのスペクトルを用いる有機化合物の構造解析についての概要と、構造解析全般の自動化、および最近の構造解析システムの動向を概観した。その内、構造解析システムは、ライブラリー検索、スペクトル予測、候補構造提案の三レベルに分類され、それぞれのシステムについて紹介した。また、産学国際共同プロジェクトの一つとして、二次元NMRスペクトル解析システム(Spec2D)の開発を、住友化学で主体的に進めている。Spec2Dは、H-H COSY、1H-NMRスペクトルを用いて、未知化合物の構造を提案するシステムで、その概要と実行例について記述した。
(page 73~83 by 銅金 巌、増井 秀行、中井 清)

住友化学は、全五工場でISO9002の認証を取得した。同規格は、審査対象工場が顧客満足のために、効果的な品質保証システムを有してることを保証する国際品質保証規格である。具体的には、認定を受けた第三者審査機関による審査で、同規格に適合していることが認証されて、初めて対象工場は登録されることになる。ここでは、ISO9000の現在の世界の動向と住友化学の取組みについて述べた。
(page 84~91 by 石本 良三、加藤 隆)

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