研究開発論文

1999年度

住友化学 技術誌 1999-Ⅱ(1999年11月25日発行)

ポリエチレンの強度発現に関わる延伸破壊の動的挙動を把握するため、二つの有力な動的観察手法、1)放射光X線による散乱観察、2)延伸機能を持つ試料ホルダーを用いた透過型電子顕微鏡観察、によって破壊のその場観察を行なった。その際、特に破断に注目し、破壊挙動と分子構造の関係を検討した。
結果として、破壊挙動には三つのタイプが存在し、それらが短鎖分岐度や長鎖分岐で規定される低密度ポリエチレンの分子構造によって分類できることがわかった。
これをもとに、破壊挙動と材料強度の関係について述べた。
(page 4~14 by 笠原 達也,山口 登,水沼 考二,藤井 丈志)

p-アラミド繊維・トワロン®について説明し、その応用分野を紹介する。新規用途として開発したトワロンTPLシート(トワロンパルプ/PTFEシート状複合材料)は、従来と全く異なった抄造法により製造される。このシートは、積層して成形体を作ったり、接着剤を用いずに金属板の表面に貼り付けることができるという特性を有する。また、このシートの機械的特性や摩擦磨耗特性は、市販のGF/PTFE複合材料を遥かに凌駕するものであり、摺動材として優れた性能を有している。
(page 15~22 by 浅黄 康策,山林 稔治)

近年、地球環境保全の意識が高まる中、製紙業界では、有害大気汚染物質削減の自主管理を計画的に進めており、例えばホルムアルデヒドを放出しない製紙用薬剤への代替等を図っている。このような背景を受け、我々は、原料にホルムアルデヒドを全く使用しない塗工紙用ノンホルマリン型印刷適性向上剤としてスミレーズレジン®SPI-100を開発した。本稿では、当該開発品の要求品質と基本特性の関係について紹介した。
(page 23~32 by 谷河 顕,吉田 義史)

コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニが原因であるダニアレルギーは、環境衛生上の問題として重要視されている。屋内塵中のダニ数は、飽和食塩水浮游法を用い、顕微鏡で数えるのが一般的だが、これには熟練度によりバラツキを生じるという欠点があった。マイティチェッカーは、酵素免疫測定法(ELISA)を基に、水平展開クロマト方式に展開させたダニ簡易検査キットである。検出感度は低下させず、簡単・迅速・確実(良好な再現性)を基本コンセプトに完成したキットである。
(page 33~40 by 上原 弘三,寺崎 真理子)

催奇形性初期評価試験の効率化の一環として軟X線テレビ検査装置(軟X 線TV)を導入し、従来の骨格標本作製を省略することで期間短縮を図った。軟X線TVを導入するにあたり、標本回転装置を考案し、これを装置化することで、骨格観察用の軟X線TVとして特許を申請した。本装置により、従来の骨格染色標本と同様にリアルタイムで立体的な骨格観察が可能となった。今後は、本装置の特徴である非破壊検査機能を生かした研究に応用展開を図る予定である。
(page 41~48 by 岸本 憲幸,樋口 敏浩,川村 聡,関高 樹,甲田 彰)

高性能液体クロマトグラフィー用の低分子系キラル固定相を開発した。第1のタイプはアミノ酸のアミド・尿素誘導体をシリカゲルに固定化した水素結合電荷移動型固定相、第2はキラルな配位子を用いた配位子交換型固定相、そして第3はシクロデキストリン誘導体を用いた固定相である。これらの固定相を用いて多くの光学異性体分離が可能であり、特に溶出順を逆転できる特長を生かしてD-アミノ酸の微量分析や光学活性体の分取精製にも利用できた。
(page 49~59 by 西岡 亮太,青黄 史子,木須 直子,中島 久子,松本 米蔵)

多元素同時分析法について、無機材料の工業分析法の観点から、その現状及び課題をまとめた。
工業分析法として、XRF、DCA-CID、GD-MS、ICP-AES、ICP-MS等が実用化され、品質管理・品質保証に利用されている。これらの方法は、分析精度の確保、迅速性、低コストを要求されるが、当社での高純度アルミニウム、高純度アルミナ等への応用例について述べた。
将来は、試料分解、抽出技術等の前処理技術の発展と装置の進歩改良に伴ない、ICP-MSの利用が増加するものと思われる。
(page 60~70 by 近石 一弘,野網 靖雄,吉岡 克朗,村上 肇)

作業上、やむを得ず自動機械などの稼動部分に人体または人体の一部(手、足等)を接近させなければならないような作業に対し、作業者の安全確保のために、人体の稼動部への過接近を検知する安全センサを開発した。このセンサは、非導電物質には作動しないので、機械への樹脂やゴム等の材料投入作業や製品の調整作業でも樹脂やゴム等は検出せずに、人体または人体の一部だけを検出する。さらに、本センサは、センサ装置の故障や設置環境の変化によるセンシングレベルの変化を確実に検出できる自己診断機能を備えたフェールセーフな安全センサである。
(page 71~75 by 鈴木 孝志,鷲崎 一郎,梅崎 重夫)

内分泌撹乱物質問題は、人も含めた「種の存続」に関わる問題として、多くの関心を集めたが、国内、海外の政府機関がこの問題に対する冷静な見解や対応方針を相次いで提出してきており、やや落ち着いた状況となりつつある。化学産業界は、国際的な連携のもとにこの内分泌撹乱物質問題に取り組んできたが、この問題を契機に国際的な化学品安全に関する長期的な研究体制を構築することで合意した。このような最近の内分泌撹乱物質問題をとりまく状況について紹介した。
(page 76~85 by 川崎 一)

住友化学 技術誌 1999-Ⅰ(1999年5月25日発行)

近年の環境保全意識の高まりから、繊維産業の分野でも環境に与える負荷の小さい商品が求められるようになり、加工に用いる染料に対しても環境負荷の小さいものが要求されている。セルロース系繊維用染料で最も使用量の多い反応染料は、染色時に使用する無機塩の量が多く染着率が低いため比較的環境に与える負荷の大きな染料とされており、その改善が望まれていた。我々は、少ない無機塩量で高い固着率の得られる反応染料の開発に取り組み、昨年高固着型反応染料 Sumifix HF 染料を上市した。その開発に至る経緯と性能について紹介した。
(page 4~15 by 宮本哲也、堰八淳一、鷲見武志)

ラノー®テープは有効成分として1g/m2のピリプロキシフェンを含有する新規な農薬製剤である。ラノー®テープを作物の近傍に設置すると、黄色によってコナジラミ類の成虫が誘引され、製剤とコナジラミ類とが接触することによって有効成分が付着し、そして有効成分の作用によって次世代の発生を抑制するという全く新しい発想に基づく非散布型製剤である。
本製剤は、防除の省力性、長期間にわたる優れた防除効果、および総合病害虫管理(IPM)への適合性という特徴を備えている。本稿では、ラノー®テープの製剤設計、物理化学的性質、施用方法、および生物効力について報告した。
(page 16~24 by 井上雅夫、中村知史)

農産物輸入拡大、高齢化と後継者不足といった内外の問題に直面している日本の農業は、生産性や収益性の向上を目指し施設園芸技術の開発に力を入れている。また環境保護や安全性への配慮から、被覆フィルムではポリ塩化ビニール製からポリオレフィン製へのシフトが進んでいる。
本稿では、新しい施設園芸用被覆フィルム―クリンアルファ®―の開発を例に、被覆フィルムの技術動向を紹介するとともに、将来の施設園芸に対する当社の取り組みについて述べた。
(page 25~33 by 阪谷泰一、中 西美都子、南 部仁成、藤田勉、中川原誠)

近年、MRSA、O157等の細菌による感染症が社会問題化しており、安全で有効な抗菌剤が強く求められている。このようなニーズをターゲットとして、銀クロロ錯塩を有効成分とする新規抗菌剤アルゲセルル®を開発した。アルゲセルル®は、水で希釈して処理するだけで対象物の表面に塩化銀微粒子を付着できるというユニークな特性をもつ。また、光、温度、酸化剤等に対する安定性、細菌に対する抗菌活性も従来の銀系抗菌剤より優れている。本稿では、アルゲセルル®の物理化学性、抗菌活性、用途などについて紹介した。
(page 34~41 by 副田康貴、井上悟、浅野聡)

ポリエチレン(PE)は食品包装用フィルムをはじめ幅広い分野で使用されている。最近、メタロセン触媒系PE(m-PE)が新たに加わり、いよいよ実用化段階をむかえた。m-PEは従来のチーグラー触媒系PEと比較して均一な分子構造分布を有しており、強度、ヒートシール性、抗ブロッキング性など包装用フィルムに要求される様々な品質において優れる。一方、m-PEが市場に展開される中で新たな課題が見え始めている。
本稿では、m-PEの高性能化技術および特徴を活かした用途開発について解説した。
(page 42~50 by 近成謙三、鈴木靖朗)

化学物質の危険性評価に際しては、安全物性ばかりでなく実際のプロセス条件にさらされた場合に発現する特性をも把握しておく必要がある。本稿では、液体・固体の発火・爆発危険性評価を中心に、その概要と測定データの評価方法について、現場技術者や研究者の参考になるようフローチャートを使って解説した。さらに、最新の反応危険性評価ソフトについても、適用例を含めて紹介した。
(page 51~61 by 菊池武史)

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