1998年度
住友化学 1998-Ⅱ(1998年11月30日発行)
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上水中の砒素等の有害微量不純物の対策として、通常大規模浄水場では凝集沈殿法が採用されているが小規模浄水場や簡易水道ではコンパクトな設備で容易に管理できる吸着剤方式による浄化法が採用され始めている。本稿では凝集沈殿法の概要と当社の開発した活性アルミナによる浄水中の砒素除去及び再生プロセスの開発状況について紹介する。
(page 4~10 by 堀ノ内和夫、蘆谷俊夫)
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情報機器の表示装置として、液晶表示素子(LCD)の伸びは著しい。本稿では、この液晶表示素子のカラー化のために必要なカラーフィルターの技術について述べる。平面表示素子のカラー化の方法、および要求される特性について考察した後、顔料分散法カラーフィルターの構成要素である顔料分散レジストによる着色層、ブラックマトリックス、透明導電膜(ITO膜)について、プロセスと材料の面より記述した。最後に、進展の著しいこの分野での今後の課題と展望についてふれた。
(page 11~19 by 郡浩武、新居崎信也、出口敏久、藤井幸男)
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栽培種のニンニクは種子を着けず、球根で増殖する。このため、ウイルス感染による収量と品質の低下が問題となっている。そこで、ウイルス汚染のない優良種苗の大量生産技術の開発を目指した。その結果、(1)培養室における生長点培養とin vitro(試験管内)小種球形成、(2)圃場における小種球の栽培によるリン片生産、及び(3)優良母株選抜技術から構成されるシステムの開発に成功した。小種球の大量増殖については1996年に住化テクノサービス(株)、リン片生産については1997年に(株)エム・ジー・エスにおいて実用化に至り、青森県において農家への供給を開始している。
(page 20~28 by 長久保有之、高市みゆき、大江田憲治、永田悟)
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住化カラー(株)では、数年前より建材部品などさまざまな製品の仕上げ工程での色彩管理において、遠隔測色方式による分光光度計を用いた自動色彩管理システムを開発し、商品名COLOR JUDGEシステムとしてビジネス化を行なってきた。今回、競合他社品とより差別化をはかることを目的として、ハードウエア、ソフトウエアの両面からグレードアップしたシステムの開発に成功した。
(page 29~37 by 高橋譲、新川貴久、中瀬道成、加藤直樹)
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SBラテックスの主用途である塗工紙の製造技術に、各面2度の塗工を行うダブル塗工がある。従来、ダブル塗工では仕上げ塗工であるトップ塗工により塗工紙全体の品質が決まると考えられており、下塗りであるアンダー塗工には安価な塗料によるコスト面でのメリットを求めていた。しかしながら、我々の最近の研究では、アンダー塗工層が最終ダブル塗工紙の品質に大きく影響することを示唆する結果が得られており、その結果およびそれに対する考察を行い、アンダー塗工の重要性を報告する。
(page 38~43 by 服部芳彦、山崎健一)
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2、4-ジクロロ-3-エチル-6-ニトロフェノール(DCENP)は印画紙用シアンカプラーの重要中間体である。
我々はエチルベンゼンを出発原料とする工業的に有利なDCENPの製造方法を開発した。特に、m-エチルフェノールの塩素化により得られる4-クロル-3-エチルフェノールのスルホン化工程以降は何ら中間体を取り出すことなく、大部分が水系で実施可能であり、かつ高収率のプロセスとすることができた。
(page 44~48 by 堀川泰彦、山下雅也、森野和貴、小山慎一、和田光弘、牧征二)
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近年の遺伝子研究や発生工学的技術の進歩により、特定の遺伝子を導入して発現させたトランスジェニック動物、特定遺伝子に突然変異を導入して遺伝子の機能を欠損させた遺伝子ノックアウト(不活化)動物を人為的に作製することが可能となった。
これらの遺伝子操作動物は、化学物質の安全性評価研究の分野において有用性が期待されており、本稿では、遺伝子操作動物の化学物質の変異原性(遺伝毒性)評価系および発癌性評価系としての有用性について報告する。
(page 49~56 by 宇和川賢、尾崎圭介、山田徹、須方督夫)
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計算機の高性能化とソフトウェアの改良、理論化学自体の進歩により、オレフィン重合触媒の理論化学的解析は、より実際的な系に適用できるようになった。本稿では、これまで当研究グループ等で行った理論化学を用いた研究成果について紹介したい。具体的には、均一系触媒においては配位子の置換基効果やモノマー種の違いによる重合活性の違いや立体規則性への影響等を、固体触媒ではPIOによる配位場の活性への影響について解析した例を紹介する。
(page 57~64 by 栗林 浩、宮竹達也)
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シリコン半導体デバイスの微細化にともない、我々レジスト供給側にも高いレベルの欠陥検査能力が求められるようになった。昨年秋に導入した欠陥検査装置KLA-2132は、検査効率および検出精度に優れ、これまで困難だったパターン付きウェハの微小欠陥が容易に検出可能で、レジストの品質改良に大きな威力を発揮している。本稿では、ウェハ欠陥検査装置KLA-2132の概略と、いくつかの適用例について述べる。
(page 65~71 by 花元幸夫、宮川貴行、高橋祐幸)
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高分子材料は化学プラント装置の防食・耐食材料として欠かせないものになっている。材料の劣化やそれに伴う装置の損傷が起きた際、その原因を調査することは適切な対応を取り、同種事故の再発を防ぐためだけでなく、得られた知見を蓄積し装置材料としての安全性、信頼性を向上させるためにも重要である。
本稿では高分子材料の劣化現象について説明すると共に、劣化・損傷原因調査の実例を紹介する。
(page 72~79 by 中田幹俊)
住友化学 1998-Ⅰ(1998年5月25日発行)
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プラル®は当社が開発した新規化合物イミプロトリンを50%含有するゴキブリ用ノックダウン剤である。プラルT®(原体)、プラルC®(エアゾール)とともに1996年秋に薬事法製造承認を取得したものである。
本剤は衛生害虫、特にゴキブリに対して極めて高いノックダウン活性を有し、ユーザーを充分満足させ得るものである。
本稿ではプラルTの研究の背景と経緯、作用特性、MUP(プラル)の開発経緯、製剤と効力、物化性、安全性などについて紹介する。
(page 4~15 by 平野雅親、松永忠功、金子秀雄、古田リツ子、横井重喜、横井重)
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MR-AS板はハードコート層に特殊な帯電防止剤を入れ、表面硬度、透明性、帯電防止性能を持たせた板であり、透明性に優れるが、耐久性と帯電防止性が少し弱い。
スミエレックは永久制電板であり、耐久性、帯電防止性に極めて優れているが、透明性が少し劣る。
スミエレックFTは、スミエレックの透過率を改良したもので、耐久性、帯電防止性、透明性に優れた永久帯電防止板である。
(page 16~22 by 康乗幸雄、落合伸介、中川佳美、山本努、山本努)
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ピリジン塩基類は、その生体親和性から、医薬・農薬の骨格成分の原料としてますます重要なものとなっている。当社では、分子形状選択性の高いゼオライトを修飾した触媒と新しい脱コーキング(再生)法の開発により、有用なピリジンおよびピコリン類の収率を高め、しかも触媒寿命の長いプロセスの工業化に成功した。
本稿では、これらの検討例の一端を、ピリジン塩基類の一般的な用途、合成方法と共に紹介する。
(page 23~30 by 阿部伸幸)
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オレフィン重合用メタロセン触媒の最近の研究動向をプロピレン重合触媒を中心に概説するとともに、最近特に研究が活発となってきている非メタロセン触媒の研究動向として当社で開発したビスフェノキシ型錯体の特性や、Ni、Pdなど後周期遷移金属錯体触媒の特性などを紹介した。非メタロセン触媒はポストカミンスキー触媒として、特にこれまで知られていない新しいタイプのポリマー合成にとって有力な武器となりうると思われる。
(page 31~45 by 宮竹達也、今井昭夫)
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芳香族硫黄化合物は医薬、農薬、高屈折率素材、酸化防止剤など高機能性物質として重要性を増している。他方、芳香族硫黄化合物の合成技術に関しては、従来法では化合物毎に有利な製造方法を採用していたために、汎用性に欠けていた。本技術は、アルキルメルカプタンを硫黄源として用い、「チオアルキル基の導入と硫黄-アルキル結合の開裂」の基本的に2つの工程から成る、高機能性芳香族硫黄化合物の汎用的新規合成法の開発に関するものである。
(page 46~50 by 五田博、加賀野宏和)
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生物環境科学研究所では大型汎用コンピュータをホストコンピュータとする毒性試験データ処理システム:New-TOPS(New-Toxicity data total Processing System)をパーソナルコンピュータによるクライアント/サーバー型の新システム:New-TOPS21に再構築した。
本稿では、システム再構築の経緯および再構築による効果ならびに新システムの特徴について述べる。
(page 51~56 by 松本安雄、磯部直彦、川崎一)
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クリーンルーム空気中の粒子清浄度が著しく改善されたのに対し、有機性ガスなどの分子状物質による汚染はほとんど対策されていない。半導体など集積度の高密度化が進展するに伴い分子状汚染が問題視されてきている。この分子状汚染物質に焦点をあて、その発生源と半導体などの製造工程に及ぼす影響、クリーンルーム内空気中の分析・評価方法、シリコンウェーハ表面への付着挙動、汚染防止対策例などについて紹介する。
(page 57~67 by 藤本武利、竹田菊男)
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最近の質量分析技術の進歩はめざましく、マトリクス支援によるレーザー脱離イオン化(MALDI)法と呼ばれるイオン化法の開発により、昔は想像もつかなかった分子量が万を越える高分子化合物も分析対象となってきている。有機工業化学の分野においても、この方法を用いて質量分析による合成高分子の構造解析が可能になりつつある。
本稿では、このMALDIとMALDIに適した飛行時間型質量分析計(TOFMS)の原理と特徴を紹介するとともに、これまでに取り組んできた測定技術に関する検討と当グループでの精密化学品への応用事例の一部を紹介する。
(page 68~78 by 浅野哲、山本潔、広明修、加藤三典)
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農薬の最終使用形態である農薬製剤について、その目的および剤型について説明し、最近15年間の生産量の推移を紹介した。最近は省力化、安全性の向上、効力の向上などが要望され、いくつかの新しい製剤が開発されている。最近開発された新しい製剤の主なものとして水性製剤(フロアブル、濃厚エマルション、サスポエマルション、マイクロエマルション)、顆粒水和剤(ドライフロアブル)、ジャンボ剤、1キロ粒剤、水面展開剤、マイクロカプセル、農薬入り肥料、物理的防除用製剤などを取り上げ、それらの製剤について概説しその特徴を説明した。
(page 79~90 by 辻孝三)
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非相溶ポリマーアロイの界面に微量に存在すると考えられる、相容化剤を介した異種ポリマーの反応物の化学構造を解析する方法として、溶媒分別やポリマーの選択的分解などの化学的な手法と高磁場による二次元核磁気共鳴(2D-NMR)法とを組み合わせた新しい構造解析法を開発し、ポリフェニレンエーテル-ポリアミドアロイの構造解析に適用した。
(page 91~98 by 岡田明彦、横田絵美子、大橋一俊、佐々木俊夫)
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ニッケル-ホスフィン錯体触媒を用いるプロピレンの二量化反応において、強スルフォン酸やジアルキル硫酸の存在下で調製した触媒は、活性および選択性が顕著に増大することを見出した。ホスフィンの立体効果は二量体の分布に、電子効果は触媒活性に重要な役割を演ずる。この触媒系を用いると効率よく2、3 -ジメチルブテンを合成できる。触媒調製の各段階で1 H-、31 P-、27 Al-NMRを測定し、触媒活性種の構造についても新知見が得られた。
(page 99~111 by 野村琴広、鈴鴨剛夫、山本三千男、板垣誠)
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