技術誌 住友化学

2024年度

住友化学 2024(2024年7月31日発行)

液晶ポリマー(LCP)は、高周波数領域で低い誘電特性を有し、次世代高速通信用途での展開が期待される樹脂である。当社はこれまでに培ってきた技術を基にこの用途で活用可能な樹脂/コンパウンドの検討を進め、さまざまな部品に適用可能なLCP材を開発したので、ここに報告する。
( page 4~11 by 並河 正明、伊藤 豊誠、齊藤 慎太郎、髙木 航、土佐 桃波、間藤 芳允 )

メチルテトラプロールは住友化学が開発した新規殺菌剤である。メチルテトラプロールは真菌の複合体Ⅲユビキノール酸化酵素Qo部位を標的とするQoI剤に属する。QoI剤は汎用性が高く1990年台末から種々農作物において広く使われてきたが、既存のQoI剤では耐性菌による効力低下が問題となっている。一方、メチルテトラプロールはQoI剤でありながら、そのユニークな化学構造により既存のQoI剤耐性菌にも感受性菌と同等の効果を示す。本化合物はコムギ、オオムギ、ダイズ、ワタ、テンサイなど各種作物の重要病害に適用可能である。また、実用場面における残効性、耐雨性などの効力特性も優れている。人畜および環境に対しての安全性も高い。本剤は、日本国内ではムケツDXとして2023年に販売を開始したほか、欧州、南米などでも開発が進んでいる。
( page 12~25 by 松崎 雄一、吉本 祐也、有森 貞幸、岩橋 福松、倉橋 真、鳥海 達也、伊藤 理紗、近藤 美和、田淵 美穂 )

急性白血病は、遺伝子変異に基づく予後分類・治療法が確立されつつあるもののMLL遺伝子が座位する染色体11q23領域の転座を有する患者群は極めて予後不良であり、革新的な治療法の開発が望まれている。われわれは、MLL染色体転座の結果生み出されるMLL融合蛋白質たんぱくしつとMENINの結合が白血病発症・維持に必須であることに着目し、MENIN-MLL結合阻害剤(DSP-5336)を創生し、非臨床試験においてMLL遺伝子転座およびNPM1遺伝子変異を有する白血病に対する強い有効性を確認した。本剤は、アンメットメディカルニーズの高い特定の急性白血病に対する新規治療薬として現在臨床試験が進められている。
( page 26~34 by 清水 崇史)

粘弾性シミュレーションとBayes推定を適用した機械学習との組み合わせにより、粘弾性および分子量分布の実験値から高分子の分子構造を推定した。試料として分岐鎖を有する高圧法低密度ポリエチレンを用いた。本解析方法により、実験値を正確に再現できる分子構造が得られた。分子鎖1本を直接観察した報告と分子構造を比較した。その結果、1本の分子鎖あたりの分岐鎖数、分岐鎖長と主鎖長の比が観察結果と概ね対応することが確認された。
( page 35〜44 by 城本 征治、工藤 寛之、板東 晃徳 )

植物保護製品指令91/414/EECの発効から、活性物質の承認には申請者は共同体の要求を満たすドシエを提出することになった。植物保護製品規則1107/2009下では活性物質の承認更新にもドシエ提出が必要になった。ドシエの様式が幾度か改訂されたため活性物質の承認更新用のドシエ作成には提出済ドシエの書き直しや再構成に多大な時間が費やされることとなった。本稿では「その1 」としてドシエ様式の変更を概説し、次回に予定している「その2 」では最近作成の構造化され調和した様式やデータの電子的提出などについて概説する。
( page 45~63 by 原田 浩子、龍 みを、太田 美佳)

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