自然資本の持続可能な利用

基本的な考え方

住友化学は、水や土壌といったさまざまな自然資本を利用して事業を行っています。自然資本の持続可能な利用のため、グループ全体で多様な取り組みを実施してきました。2022年12月に開催されたCOP15において「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、その中で「2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せることを目指す」、いわゆる「ネイチャーポジティブ」の方向性が示された今、当社は、生物多様性保全や自然資本の持続可能な利用を改めて重要課題と認識し、さらなる取り組みを進めていきます。
ネイチャーポジティブ実現に向けた取り組みについては、「責務」、「貢献」の両面から検討・推進しています。

  • 基本的な考え方の図

マネジメント体制

自然資本の持続可能な利用のマネジメント体制に関しては、「省資源・廃棄物削減のマネジメント体制」をご参照ください。

目標・実績

住友化学グループでは、重要な環境保全項目を共有化目標として設定しています。グループ各社の結果をフォローアップしていくことを通じて、計画的な環境分野への貢献に取り組んでいます。

環境パフォーマンス

住友化学は、当社と国内グループ会社を対象にエネルギー、資源投入量、製品生産量、さらには大気・水域などへの環境負荷などのデータを集計し、活動量の把握に努めています。

2022年度 主要な環境パフォーマンス(住友化学および国内グループ会社)

  • 2022年度 主要な環境パフォーマンス(住友化学および国内グループ会社)の図

  1. エネルギー(原油換算)および温室効果ガス(全7ガス)の指標は、GHGプロトコルに基づいて(「環境・社会データ算定基準」参照)、売上99.8%以内の主要な国内連結グループ会社について算出している
  2. GHGプロトコル基準では、従来算定に含めていなかった住友化学グループが外部に販売した電気や蒸気を生産するためのエネルギー使用量とこれに伴うCO2排出量、住友化学および国内グループ会社の非生産拠点のエネルギー使用量とこれに伴うCO2排出量、「地球温暖化対策推進法」算定対象外の非エネルギー起源CO2排出量を含めている
  3. 鉄、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉛、白金、チタン、パラジウム、ガリウム、リチウムの12金属が集計対象
  4. レアメタル(希少金属)のうち供給構造が極めて脆弱で、国家備蓄を行っているニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウムの7金属が集計対象蛍光灯・水銀灯安定器、汚染物(ウエスなど)は、台数および保有量に含んでいない
  5. 生産品目によっては重量ベースでの取りまとめが困難なものがあるため、一定の条件を仮定し推算している
  6. 住友化学および国内グループ会社の産業廃棄物排出量、産業廃棄物埋立量に含まれる住友共同電力株式会社の石炭灰は乾燥重量ベース

廃棄物処理施設の維持管理計画書・維持管理記録書

各事業所の廃棄物処理施設の維持管理計画書および維持管理記録書をPDFファイルにてご覧になれます。

「責務」に対する取り組み事例

グループ各社および各事業所では、生物多様性保全、大気環境保全、水資源の有効利用、土壌の持続可能な利用、そして化学物質の適正管理などの各分野における目標を掲げ、その達成に向けた取り組みの充実を図っています。

生物多様性保全

住友化学は、生物多様性保全への対応を、サステナブルな社会の構築のために取り組むべき重要な柱の一つと考えています。「住友化学生物多様性行動指針」を策定し、全事業所において指針に即した生物多様性保全をISO14001の活動目標に掲げるなど取り組みを強化しています。また、「生物多様性民間参画パートナーシップ」に参加するなど、化学会社として特に配慮すべきことは何かを念頭に置きつつ、事業を通じた取り組みを推進しています。

住友化学生物多様性行動指針

  1. 生物多様性保全を経営の最重要課題のひとつと位置づけ、一層の地球環境の保全に取り組みます。
  2. 生産活動および製品・サービスの開発・提供を通じて、またサプライチェーンとも連携して、環境負荷の継続的な削減を実現し、生物多様性の保全に取り組みます。
  3. 社員に計画的に教育を実施し、生物多様性保全の重要性について、正しく認識・理解させることで、活動の充実を目指します。
  4. 社会の皆様から高い評価と信頼が得られるような環境保全に資する社会貢献活動を継続的に行います。
  5. 取り組みの結果について公表し、社会の皆様とのコミュニケーションを促進します。

取り組み事例

  • 桜ケ池の生態保全(三沢工場)
  • プレーリーの再生(ベーラント バイオサイエンス LLC)

大気環境保全

固定発生源対策の強化を通じて、ボイラー、ガスタービンなどからのばい煙排出、冷凍機からのフロン漏洩、産業廃棄物焼却による水銀排出、製造プラントからの化学物質、VOC排出、さらには建築物解体時のアスベスト飛散など各種環境負荷低減に努めています。また、法規制などへの的確な対応として以下の実現に注力します。

  • CFCおよびHCFC冷凍機について、低GWPのHFCもしくはノンフロンを冷媒に使用する機器への計画的更新(オゾン層保護法)、および廃棄するフロン冷凍冷蔵・空調機器内のフロン処分を確実に実施する(フロン排出抑制法)
  • PCB使用電気機器(保管および運転中)の2025年3月までの処理期限前倒しの全数処分(PCB特別措置法)

取り組み事例

  • PM2.5 排出抑制に向けて
  • フロン排出抑制の対応
  • 廃棄物焼却炉からの水銀大気排出

水資源の有効利用

事業所における生産継続や周辺の水環境保全のため、各生産拠点における水リスク評価に基づき、排水の適正管理、活性汚泥処理の高度化や、効率的な水利用の推進などに努めています。

取り組み事例

  • 水環境の保全
  • 主要生産拠点が立地している地域の水リスク評価
  • 吉岡泉の有効活用および管理(愛媛工場)

土壌の持続可能な利用

土壌の保全や回復も、自然資本の持続可能な利用のための重要な取り組みと認識しています。また、土壌汚染対策法への的確な措置として、工事計画を掌握・管理下に置き、「有害物質使用特定施設に係る土地の形質変更時の届出」「土壌汚染状況調査の契機の拡大」への適切な対応を図ります。

取り組み事例

  • 地下水の定期モニタリング
  • 土壌汚染の未然防止

化学物質の適正管理

第一種指定化学物質(PRTR法)やVOCについて、環境中への排出量の多少にかかわらず、環境リスク評価を行い、使用量削減および排出量削減の対策を講じています。また、PRTR法への的確な対応として、新たに選定される見込みのPRTR指定化学物質に対する環境リスクの評価・管理の充実を図ります。

取り組み事例

  • 自主環境目標値の遵守
  • 大気排出量の削減
  • 全社 PRTR 集計システムの運用

「貢献」に対する取り組み事例

生産拠点における対応を重点的に、大気・水質・土壌・廃棄物の各分野で、今後も継続して中長期的な自主管理目標の達成に努めるとともに、立地する事業所などの地域特性に合わせ、各事業所にて独自の取り組みも推進します。

  • 自然保護活動

  • 土壌環境の改善

今後に向けて

住友化学グループにおける環境分野への取り組みの基本方針は、2000年代前半より「法規制対応から自主管理強化」にシフトしてきました。地球規模での環境問題への対応に迫られている中、各事業所で講じられている諸施策を、さらに実効あるものにするには、従来以上に、国際的な環境問題や資源循環、生物多様性保全、水リスク、土壌汚染への対応などの潮流を把握し、先を見据えた対応が必要だと考えています。

引き続きリスク管理の観点から、中長期的にリスクが高いと評価する課題に重点的に取り組み、自主管理の充実を通じた適切な対応を行い、自然資本の持続可能な利用へ貢献して行きます。