人材マネジメント

基本的な考え方

人材は最重要の経営資源であり、高い意欲と能力を持つ人材を確保することは事業運営の礎です。加えて、ビジネス環境がより複雑かつ高度なものとなる中、多様な知識・技能を持つ人材を確保し、その能力を最大限に発揮しうるよう育成することが、極めて重要となっています。
こうした背景から、中期経営計画(2022~2024年度)では、人材の確保と育成を長期的な視点で推進するとともに、エンゲージメントの強化を通じて、持続的成長を実現していくこと、を基本方針の一つとして掲げています。
この方針のもと、採用力をさらに強化するとともに、「育成と成長」を基本理念とする現行の人事制度と研修体系を効果的に推進しています。また、多様な人材が健康でいきいきと働くことができる環境づくりを進めています。

人事制度諸施策

住友化学では、各人の役割や責任の大きさと達成した業績に、その過程で発揮した能力や行動を加味して処遇する人事制度としています。本制度によって、意欲と能力がある社員は早期に上位の役割にチャレンジすることが可能となり、社員の「成長したい」という自発的な意欲の醸成を図っています。

毎年の成績評価においては、各人が期待される役割・成果をどの程度果たしたのかという点だけではなく、求められている知識・スキルと能力の発揮レベルといった点も評価しており、短期的な成果に偏ることなく、一人ひとりの育成や成長に資する制度としています。

また、上司は配下の部下全員と面談を実施し、成績評価結果の通知や年度の取り組み項目を認識合わせするとともに、行動面で良かった点や改善すべき点をフィードバックすることとしています。加えて、今後の各人への期待やキャリアプランなどについても話し合う場としており、社員の能力・意欲の向上に務めています。

なお、このような人事制度は海外グループ会社のマネージャー層に対しても適用しており、グローバルレベルでの人材育成や、活躍機会の提供を推進しています。

人事制度の理念・狙い

  • 人事制度の理念・狙いの図

人事制度の特徴

①キャリア・ディベロップメント・フィールド(CDF)

キャリアに対する考え方が多様化している現在、社員一人ひとりの育成・成長を促すためには、各人が目指すキャリアの方向性(キャリアイメージ)に基づき、能力や適性を踏まえながら中長期的な視点で配置・育成を推進することが重要です。こうした考え方から「キャリア・ディベロップメント・フィールド(CDF・各人のキャリア区分)」を人事制度に組み込み、キャリアの方向性を踏まえた計画的な配置・育成を推進するとともに、社員自身も主体的に自身のキャリアについて考えることを後押ししています。

CDF

Xフィールド 特定の役割を担いつつ、中長期的に住友化学の事業の維持や発展を支える業務に従事するキャリア
Yフィールド 一定範囲の役割において、プロフェッショナルとして事業の発展に貢献する業務に従事するキャリア
Zフィールド 新規技術の開発や事業の高度化・複雑化などに対応する各種業務に従事するキャリア

②スペシャリストに対するキャリア

課⻑・部⻑といったライン職階を昇進していくことを主に想定した従来型のキャリアだけでなく、複雑かつ高度な知識が求められる業務や研究開発などの分野では、⾼い専門性を有する⼈材が、⼀層能⼒を発揮し成果をあげることができるよう、スペシャリストを適正に処遇する仕組みを導⼊しています。

スペシャリストのためのキャリア

  • スペシャリストのためのキャリアの図

マネジメント体制

人事担当役員のもと、本社人事部と事業所人事担当部、事業部門人事、地域統括会社人事、さらには国内外グループ会社人事などと密に連携を取りながら、各種施策を推進・展開しています。また、育成ローテーションについては、上記の人事部門に加え、研究・生産・工務など他のコーポレート機能をもつ部門とも情報共有を行いながら、各人毎の具体的な育成計画に基づいてローテーションを実施しています。

人材マネジメント体制

  • 人材マネジメント体制の図

すみか「こうします」宣言

住友化学従業員が住友化学で働くことに意義と誇りを感じ、心身共に健康で充実した人生を送ることができるよう、大切にしたい価値や考え方を「すみか『こうします』宣言」として宣言しています。第1弾から第5弾までのシリーズごとにアクションアイテムを5つずつ設定し、それぞれの施策を推進しています。また、「すみか『こうします』宣言」推進労使委員会を設置し、取り組みの進捗状況や方向性について情報共有・意見交換を行っています。

  • すみか「こうします」宣言の図

アクションアイテム

従業員とのコミュニケーション

住友化学と住友化学労働組合(以下、労働組合)は、相互理解と信頼に基づく労使関係のもと、お互いに力を合わせて諸課題の解決に取り組んでいます。
労働協約においては、組合員の人事、勤務、給与、災害補償、福利厚生施設、安全衛生、労使協議会、団体交渉などの内容を幅広く締結しています。この労働協約に基づき、労使代表の意見交換の場として「中央労使協議会」を年2回、また、各事業所において「事業場労使協議会」を年2回開催しています。また、組合員の安全と健康の確保・向上のため各事業所において「安全衛生委員会」を設置しています。
なお、当社と同労働組合は、ユニオンショップ協定を締結しており、当社における一般社員の同労働組合加入率は100%となっています。また、当社全従業員に占める組合員の割合は68%です。

ワーク・ライフ・バランス推進

基本的な考え方

ワーク・ライフ・バランスを推進し、社員一人ひとりのやりがい、働きがいのさらなる向上を目指します。また、フレックスタイム制の導入や在宅勤務の活用、事業所内保育所の設置などにより、働きやすい職場環境の整備を推進しています。

マネジメント体制

住友化学では、2010年からワーク・ライフ・バランスおよびDE&Iの推進について、労使委員会を設置し、その推進のための情報共有、意見交換、労使それぞれの取り組みに関する進捗状況の確認を行ってきました。
2020年からは、「すみか『こうします』宣言」推進労使委員会に本機能を引き継ぎ、より発展的に取り組んでいます。

目標・実績/取り組み事例

ワーク・ライフ・バランス促進のため、①長時間労働の是正、②年次有給休暇の取得促進、③柔軟な働き方の促進についてKPIを設定し、その目標を達成するための各種取り組みを実施しています。

  • ワーク・ライフ・バランス推進の取り組み
  • ワーク・ライフ・バランスのための諸制度・諸施策、妊娠・出産・育児の際に利用できる制度・措置
  • ワーク・ライフ・バランスに関する諸制度の実績
  • 社員意識調査(調査委託先独自の指標にて実施)
    回答人数:6,118人、回答率:97% (2022 年度)
  • 事業所内保育所
  • 出産・育児と仕事の両立支援
  • くるみんマーク

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進

基本的な考え方

住友化学は「サステナビリティ推進基本原則」に基づき、経営として取り組む重要課題の一つとして「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進」を掲げています。当社グループ共通のDE&I推進に関する基本的な理念を制定し、グループ各社の状況に応じた施策を推進しています。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進に関するグループ基本原則

多様な発想と価値観は、住友化学グループの競争力の源泉の一つです。新たな価値の創造に挑戦し続けるために、従業員一人ひとりの個性や属性の違いを尊重し、相互に緊密なコミュニケーションのもと多様性を受け入れ活かすことができる組織風土を醸成します。こうした考え方のもと、私たち住友化学グループは、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(Diversity, Equity and Inclusion)を推進します。

職場における差別やハラスメントなどを防止し、さまざまなバックグラウンドを持つ人々がいきいきと活躍できるよう各種取り組みを推進しています。

マネジメント体制

DE&I推進のマネジメント体制に関しては、ワーク・ライフ・バランスのマネジメント体制をご参照ください。

目標・実績

DE&Iを当社グループとして推進するため、主要グループ会社約100社において、DE&I推進に関するグループ基本原則に基づく具体的なKPIを設定し、取り組みを進めています。なお、KPIの設定にあたっては、DE&Iを推進するために実施すべき最重要プロセスとして次の3点を定めています。

最重要プロセス

  1. 経営層を含めた多様な人材の確保、育成・登用
  2. 多様な人材の活躍を促進するための施策の実施
  3. 経営層、管理社員、一般従業員の各層における多様性に対する意識向上、ならびに多様性を受け入れ活躍を促進する組織風土の醸成に資する施策の実施

住友化学(単体)KPI(2016~2022年度)実績

  1. 課長相当職以上の女性社員の割合を10%以上とする
  2. 男性社員の育児休業取得率を70%以上とする

■課長相当職以上の女性社員比率(女性管理職比率)

■男性育児休業取得率

住友化学(単体)新KPI(2023~2027年度)

住友化学の人事基本方針である「中長期的視点から育成と成長を重視する」という考え方に基づき、採用、育成、昇進、環境整備等、一連の女性活躍推進施策の進捗を反映しうるものとして「管理社員への登用率」に焦点をあてたKPIを設定しています。当該目標への取り組みを通じて、さらなる女性活躍推進を図っています。

  1. 管理社員(課長職相当)登用者における女性比率
    目標:2023~2027年度の5年間平均で15%以上
  2. 子が出生した男性社員の育児休業もしくは育児関連休暇取得率
    目標:当年度中90%以上取得

国内外グループ会社におけるKPI設定状況

各社で設定されたKPIは、「女性の積極活用や活躍推進」「ワーク・ライフ・バランス」「国籍・人種・世代の多様化」に関するものが多く、今後グループ各社とともに、このKPI達成に向けた取り組みを推進していきます。

取り組み事例

  • 女性の活躍推進
  • DE&I推進に資する社内講演会の実施
  • ダイバーシティ・マネジメント研修
  • 男性従業員の育児休業取得促進
  • イクボス企業同盟への加盟
  • 多様な能力・資質をもった人材の採用
  • グローバル人材の活用・活躍推進
  • 障がい者雇用の推進
  • 同一労働・同一賃金への対応

人材の育成・成長

基本的な考え方

「育成と成長」を基本理念とする現行の人事制度を具現化すべく、目的および社員区分別に各種研修プログラム、諸施策を実施しています。
具体的には、ポジションや役割に応じた階層別研修、管理職層のマネジメント力強化研修、グローバルビジネス展開に応じた語学力向上プログラムなど、ステップワイズかつ目的に応じた研修体系を整え、意欲・能力のある全ての従業員の能力向上・人材育成を進めています。

研修体系図

  • 研修体系図

(注)コンプライアンス、人権、サステナビリティ、健康管理・増進に関する教育については、各種社内研修コースに組み入れて実施する

目標・実績/取り組み事例

2022年度より、年齢や職種などに関わらず、従業員が必要な時に必要なタイミングで知識・スキルのアップデートを行えるよう「SUMIKA ラーニング・スクエア」と称して、学びのプラットフォームを整備し、自律的・自発的な「学び」を支援しています。

  • SUMIKA ラーニング・スクエア
  • 教育関連投資額
  • 教育関連時間
  • グローバル人材の計画的育成
  • マネジメント力強化研修
  • 技能伝承および人材育成のための制度

今後に向けて

住友化学は、「育成と成長」を基軸とする人事制度を具現化すべく、今後も従業員の成長に向けた諸施策を推進していきます。特に研修プログラムにおいては、オンライン研修を拡充するなど、従業員が自身で研修内容を選択し、学びを習慣化していくような施策を実施していきます。

従業員の健康

基本的な考え方

住友化学では、従業員が心身共に健康な生活を送り、豊かな人生を実現できるよう、従業員の健康課題の解決・改善に向けたさまざまな健康支援施策を推進しています。

マネジメント体制

取締役会や経営会議では、従業員の健康状況や課題に対する取り組みの方向性について、機会を捉えて報告を受け、議論しています。毎年開催している産業医連絡会において、全社統括産業医や各事業所の産業医が議論し、全社施策や目標の決定にあたり、意見をいただいています。そのうえで、各事業所の産業医、医療スタッフ(保健師、看護師など)、健康管理担当者が一体となり、さらには会社と健康保険組合が協働で健康保持増進施策に取り組んでいます。
また、健康管理担当者会議では、各事業所における全社施策の進捗状況や事業所ごとに取り組んだ施策の共有・効果検証などを行い、健康管理事業推進委員会では、健康保険組合の保健事業や医療費などの財政状況を共有しています。
グループ会社に対してはグループ会社人事担当役員の参集する連絡会を通じて、健康管理に関する法改正のポイントなどを発信し、適切な対応を図るよう周知しています。

健康保持増進施策の推進体制

  • 健康保持増進施策の推進体制の図

目標・実績/取り組み事例

従業員のからだとこころの健康維持のため、以下の取り組みを実施しています。

  • からだの健康
  • こころの健康
  • 健康経営優良法人 ~ホワイト500~
     各事業所健康管理施策推進費用:11,250千円(2023年度)
     女性の健康セミナー:参加者206名、満足度94%(2023年度)
     ストレスチェック 総合健康リスク*:96(2022年度)
     *職場における負担感が労働者の健康におよぼす影響の程度を示す指標であり、数値が高い(100を超える)ほど労働者の健康リスクが高い状態であることを示している。

今後に向けて

住友化学では、人材は最重要の経営資源であるとの考えのもと、従業員の健康保持増進のためのさまざまな取り組みを立案、実施していきます。また、これらの取り組みの結果を検証、改善し、PDCAサイクルを回すことで、より効果的な健康保持増進施策を展開し、従業員の健康を支援していきます。