コンプライアンス

基本的な考え方

住友化学グループでは、コンプライアンスを企業経営の根幹と位置づけ、事業活動を行っている世界各国において、諸法令だけでなく、企業倫理の遵守を徹底するための活動に注力しています。

コンプライアンス重視の精神は会社創業から今日に至るまで脈々と受け継がれ、その姿勢は従業員が守るべき行動規準として住友化学企業行動憲章に具体化され、また日々のコンプライアンス活動のバックボーンとなっています。

特に昨今、企業が社会的責任を果たすことが従来以上に期待される中、グローバル化した当社グループの事業活動におけるコンプライアンスの徹底をさらに深化させるべく、住友化学グループはトップマネジメントによる強いリーダーシップのもとで、グループ一丸となってコンプライアンス活動をさらに推進しています。

住友の事業精神や経営理念を支える住友化学企業行動憲章および住友化学企業行動要領

住友化学では、住友の事業精神、経営理念およびサステナビリティ推進基本原則を支えるものとして、住友化学企業行動憲章を定めています。また、企業行動憲章をより具体化し、従業員に分かりやすく説明するために、住友化学企業行動要領(以下、コンプライアンスマニュアル)を社則として制定し、従業員に配布しています。

  • コンプライアンスマニュアル

住友化学グループ コンプライアンス体制

(1)コンプライアンス委員会

住友化学は、社長を委員長とするコンプライアンス委員会を設置し、最低年1回(必要があれば随時)開催しています。
その委員会で議論された内容は、取締役会および監査役会に報告されフィードバックを受けています。

同委員会はグローバルな視点から、住友化学グループ全体でのコンプライアンス基本方針を定め、コンプライアンスを徹底するための体制の確立・運営について、各事業部門および国内外のグループ各社に対して指導・支援しています。

コンプライアンス委員会 体制図

  • コンプライアンス委員会 体制図

(2)実効性を重視したグループコンプライアンス体制(“Think globally, Manage regionally, Act locally”)

事業のグローバル化が深化するにつれ、各国、各社の状況に即したコンプライアンス体制のきめ細かい運営が一層重要となることから、主要な事業地域に地域法務・コンプライアンス統括(Regional Legal and Compliance Office(RLCO))を設置し、各社個別の具体的な課題やニーズを把握し、必要とする施策の立案・実施、コンプライアンス体制の構築および運営などについて協働するとともに、支援・指導しています。

住友化学グループコンプライアンス体制

  • 住友化学グループコンプライアンス体制

(3)当社およびグループ会社におけるコンプライアンス体制の導入およびその運営

住友化学グループ全体でコンプライアンスを徹底するためには、住友化学およびグループ各社がそれぞれコンプライアンス体制を確立し、運営することが重要です。そのような観点から、基準となるコンプライアンス体制および活動を示した住友化学グループコンプライアンス標準を制定しています。住友化学およびグループ各社は、これに従い、主に以下の取り組みを行っています。

  1. コンプライアンス委員会の設置・運営(通報対応、コンプライアンス違反調査対応を含む)
  2. コンプライアンスマニュアルの導入と定期的な見直し
  3. 内部通報制度(スピークアップ制度)の導入・運営
  4. コンプライアンスリスクを踏まえたコンプライアンス活動(啓発、研修)の実施など

コンプライアンス体制運営のイメージ

  • コンプライアンス体制運営のイメージ

内部通報制度(スピークアップ制度)

(1)通報制度はコンプライアンス徹底の鍵

住友化学グループでは、コンプライアンス違反の早期発見・未然防止を図るため、コンプライアンス違反またはそのおそれを知った場合に、直接コンプライアンス委員会または社外の弁護士等に通報できる、いわゆる内部通報制度(当社ではスピークアップ制度という)を導入しています。当社の役職員(契約社員などを含む)の他、役職員の家族、グループ会社の役職員とその家族、当社およびグループ会社の退職者ならびに当社グループの事業に何らかの関与のあるすべての方々(取引先など)がこのスピークアップ制度を利用できます。

さらに、より確実に情報提供してもらえるよう、①グループ各社のコンプライアンス委員会、②RLCO、③住友化学本体のコンプライアンス委員会および④同委員会が指定した社外弁護士等、それぞれにおいて、通報を受け付けるスピークアップ通報窓口を設け、通報者が最も適切と考える通報先を選ぶことができるよう体制を整備しています。また、匿名での通報であっても、通報を受領し、対応しています。

(注)

  • 欧州連合地域内における事態に関する通報については、同地域あるいは域内各国の個別の諸法令を遵守して対応している
  • 公的研究費を用いた研究の研究不正または研究費不正にかかる告発(通報)については、何人もこのスピークアップ制度を利用可能

内部通報制度(スピークアップ制度)に基づく通報の流れ

  • 内部通報制度(スピークアップ制度)に基づく通報の流れ

(2)社外監査役を含めた監査役会による指導・監督

住友化学およびグループ会社のコンプライアンス委員会に寄せられたスピークアップ通報およびコンプライアンス違反案件については、ガバナンスの観点からも重要なものであることから、監査役会に定期的に、また重要なものについてはその都度、こうした案件を報告し、指導・監督を受けています。なお、公益通報者保護法に基づき経営幹部に関する通報対応の独立性をより強化するため、経営幹部に関する通報については、監査役会のみに報告し、監査役会の助言およびモニタリングを受けながら通報対応業務を行うこととしています。

(3)内部通報制度(スピークアップ制度)の利用を促進するために

住友化学グループでは、通報に基づく調査にあたり、通報者のプライバシーや秘密保持に対し最大限の配慮がなされ、また誠実に通報を行った通報者が、通報を行ったことを理由として解雇、配転、差別などの不利益を受けることがないこと、また、自ら行ったコンプライアンス違反について自主的に会社に報告・通報し、かつコンプライアンス委員会の調査に協力した場合、本来受けるべき懲戒処分の減免がありうること(社内リニエンシー)をコンプライアンスマニュアルで明示し、従業員に周知しています。さらに、スピークアップ制度が真に有効に機能するよう、従業員に対し、このような秘密保持、不利益取扱禁止および社内リニエンシーについて研修、社内報などを通じて周知を図るとともに、制度の利用状況について情報共有するなどして、利用を検討する従業員に、通報しても不利益がないことを理解してもらえる工夫をしています。

(4)最近の通報制度運用実績

通報制度の利用促進の取り組みの結果、2022年度、住友化学およびグループ各社(当社持株比率50%超の上場会社を含む)のコンプライアンス委員会に寄せられた通報は、全体として223件となり、前年度に比べ33件の増加となりました。いずれの通報についても、迅速かつ慎重な調査が実施され、コンプライアンス違反や、違反の温床になりかねないような事態が発見された場合には、必要な是正措置などが確実に実施されています。また、かかる是正措置については、必要に応じてグループ全体で共有し、各社で同種の問題が発生することのないよう徹底しています。

通報件数(住友化学グループ※1

 2020年度2021年度2022年度
件数 135 190 223
  1. 当社持株比率50%超の上場会社を含む

コンプライアンス違反時の対応

住友化学およびグループ会社では、役職員がコンプライアンス違反またはそのおそれのある事案を発見した場合に、直ちに関係部署ならびにコンプライアンス委員会へ報告することとしています。報告後、直ちに調査対応がなされるほか、コンプライアンス違反が発見された場合には、是正措置および再発防止策が策定され、当該部署だけでなく住友化学グループ全体にも横展開され、再発防止を徹底しています。また、内部統制・監査部およびレスポンシブルケア部は、コンプライアンスの視点からの監査も行っています。この監査により、コンプライアンス違反が発見された場合には、その都度直ちに是正を行うこととなっています。2022年度については、住友化学グループの事業継続に関わる重大なコンプライアンス違反の発生はありませんでした。

■ 2022年度 コンプライアンス違反件数(住友化学グループ※1

内容件数
重大なコンプライアンス違反件数

0

   各国競争法の重大な違反 0
   腐敗に関する法令の重大な違反 0
   上記以外の社会経済分野に関する法令の重大な違反 0
  1. 当社持株比率50%超の上場会社を含む

住友化学グループにおける主なコンプライアンス活動実績

(1)コンプライアンス委員会の開催状況

住友化学およびグループ会社では、コンプライアンス委員会を設置し、定期的(少なくとも年1回)、または随時に開催することとしています。住友化学では、2023年4月20日にコンプライアンス委員会を開催しました。また、その結果について、取締役会および監査役会に報告し、フィードバックを受けています。

(2)コンプライアンスマニュアルの見直しおよび改訂

住友化学およびグループ会社では、コンプライアンスマニュアル見直しの検討を定期的(少なくとも年1回)に実施することとしており、検討の結果、見直しの必要があれば直ちに改訂を行っています。住友化学では、コンプライアンスマニュアルの見直しを関係部署にて行い、その結果を踏まえて、2023年4月に改訂を行いました。

(3)コンプライアンス推進活動

①コンプライアンスリスクマネジメント活動(コンプライアンス推進月間など)
住友化学および一部のグループ会社では、毎年9月を「コンプライアンス推進月間」と定め、製造、研究、営業、間接の各部門の全ての職場の全員が参加・議論をして、各職場で発生しうるコンプライアンスリスクの洗い出し、リスクに対する具体的な発生予防策の検討・立案、さらに既に発生予防策が策定されている場合には、その再点検を実施しています。この活動を継続的に実施することで、各職場における具体的なコンプライアンスリスクの低減とともに、従業員一人ひとりの意識向上に役立てていきます。
2022年度の推進月間では、「情報管理」を検討必須項目とし、全ての部署で重要リスクを洗い出し、またその発生予防策の立案を行いました。各部から提出された報告書については、外部弁護士を加えた評価チームにて客観的な評価を行い、評価結果の良い部署およびその取り組みを社内で共有し、さらなるレベルの向上を図っています。

■ これまでのコンプライアンス推進月間における必須検討項目一覧

実施年度検討必須項目
2016 偽装
2017 癒着、ハラスメント
2018 秘密情報の漏えい、会社資産の管理
2019 業法の順守
2020 新型コロナウイルスの流行に伴う環境変化
2021 自部署の手続で起こりがちな不適切事例
2022 情報管理

②コンプライアンス研修
コンプライアンスの徹底のためには、個人のコンプライアンス意識を高める必要があることから、継続的な教育の実施を重視しており、住友化学およびグループ各社の経営幹部対象の研修、昇進時の階層別研修を実施しています。また、個別、各論をテーマにしたface-to-faceの研修やeラーニング研修も実施しています。2022年度については、住友化学全従業員(約7,400人)を対象にしたコンプライアンスeラーニング研修を実施し、全ての従業員が受講しました。また、国内外グループ会社においてもコンプライアンス研修を実施しています。

2022年度 コンプライアンス研修実施状況

 実施状況
住友化学

コンプライアンスeラーニング研修(改正公益通報者保護法およびスピークアップ制度を含む):受講率100%(全ての事業所、部門にて実施)
(その他、昇進時研修、腐敗防止・品質・安全・物流・情報セキュリティ等に関する個別研修を対象者に対して実施済)

住友化学グループ※2

コンプライアンスに関する研修を受けた従業員の割合(受講率)
国内グループ会社の受講率:98.6%
海外グループ会社の受講率:88.5%

  1. 住友化学は含まず

③従業員コンプライアンス意識調査

以上のコンプライアンス活動および研修等の効果を測るため、住友化学および国内外のグループ会社では従業員コンプライアンス意識調査を定期的に実施しています。2022年度に、住友化学では第7回目の従業員コンプライアンス意識調査を実施しました。さらに、2019年度から2021年度にかけて国内外グループ会社(37社)においても、同様の従業員コンプライアンス意識調査を実施し、住友化学とグループ会社の比較やグループ会社間の比較による分析を行い、グループ各社におけるさらなるコンプライアンス向上に向けた課題発⾒および対策⽴案につなげています。

(4)人権尊重、腐敗防止に向けた取り組み

住友化学グループでは、特に近年、人権尊重に関する取り組み(人権尊重参照)、贈収賄や業者との癒着等の腐敗防止施策を通じたサプライチェーン全体の健全性維持に関する取り組み(腐敗防止参照)を強化しています。

(5)競争法遵守に向けた取り組み

住友化学では、競争法遵守の徹底のため、取締役会・監査役会の指導・監督のもと、住友化学グループ全体での競争法遵守体制の構築・運営を担う、独禁法遵守・贈収賄防止委員会(委員長:社長)を設置しています。また、住友化学では、「独占禁止法遵守マニュアル」を導入し、国内外のグループ会社においても同マニュアルを導入のうえ、このマニュアルを利用した研修も積極的に実施しています。

このほか、事業部門に属する役職員と競争事業者との接触を原則として禁止し、業務上必要不可欠な場合のみ、例外的に、事前に許可を与えた場合に限り接触を許すという制度(同業者面談伺い制度)を導入しています。また、製品の販売価格は、常に独自の判断に基づき自主的に決定されなければなりません。当社はこれを実践するため、当社製品の販売価格や価格フォーミュラを一律改定等する場合には価格審議委員会を開催し、同委員会における厳正な審議を経て改定等を決定しています。

競争法に関する研修状況(周知等啓発活動含む)

 実施状況
住友化学 対象となる事業所、事業部門にて実施済(計27回実施/2018年度以降累計)
住友化学グループ※3

国内グループ会社※4:63.6%(2021年度以降累計)
海外グループ会社※4:52.5%(2021年度以降累計)

  1. 住友化学は含まず
  2. 実施した会社の割合

(6)コンプライアンス監査

当社各部門およびグループ各社におけるコンプライアンス体制の運営や活動などが適切に実施されていることを監査することも重要であることから、内部統制・監査部やレスポンシブルケア部によりコンプライアンス監査が実施されています(レスポンシブルケア部による監査の詳細については、レスポンシブル・ケア監査(RC監査)参照)。コンプライアンス監査で発見された事項については、適切に是正措置を講じています。

住友化学グループ コンプライアンス活動方針(2023年度)

住友化学グループ全体での「コンプライアンスの徹底と安全・安定操業の継続」を基本方針の一つとする中期経営計画のもと、

  • スピークアップ・コンプライアンス違反調査への適切な対応
  • コンプライアンス教育・啓発活動
  • コンプライアンス監査

など、これまでのコンプライアンス推進活動をグループ全体で着実に実践していくほか、グループコンプライアンスのさらなる強化、クロスオーバーするコンプライアンス課題への対応にも重点的に取り組むことで、当社グループコンプライアンス体制の運用を強化・拡充し、その実効性をさらに高めていきます。

2023年度 住友化学グループ コンプライアンス活動目標

項目2023年度の目標2022年度の実績2021年度の実績2020年度の実績

内部通報※5
(スピークアップ
通報)

通報1件あたり、従業員数について前年度比100%を維持(173人/通)

173人/通

226人/通

316人/通
コンプライアンス
研修

95%のグループ会社において、コンプライアンス研修を実施

住友化学※6:100%
国内グループ会社※7:97.8%
海外グループ会社※7:92.5%

住友化学※6:100%
国内グループ会社※7:91.1%
海外グループ会社※7:82.0%

住友化学※6:100%
国内グループ会社※7:95.7%
海外グループ会社※7:93.9%

  1. 当社持株比率50%超の上場会社を含む
  2. 受講率(従業員の割合)
  3. 実施した会社の割合

今後に向けて

住友化学コンプライアンス委員会、RLCOおよびグループ各社は、住友化学グループコンプライアンス基本方針の実施を通じて、グローバル企業としてコーポレートシチズンシップの責任を果たしていきます。