水環境の保全

水使用量削減の取り組みに加え、安定かつ高度な排水処理設備の稼働により、事業所から排水の徹底した浄化を実現しています。

  1. 活性汚泥処理の高度化対応
    環境負荷の一層の低減につながる水処理の管理技術を開発、応用して、安全かつ安心な排水処理の実現に向けて全工場で取り組んでいます。
    従来、焼却処理が主であった難分解性の工場排水に対して、微生物固定化技術を利用した活性汚泥処理を開発し、安定した排水処理および処理コスト削減を実現しました。引き続き適用排水の拡大に向けて検討を継続しています。
  2. 水質総量削減規制への対応
    排水処理設備から海域・河川などへ排出される排水中のCOD、全窒素、全リンの継続的な削減の自主管理を強化しています。また、排水処理設備における管理技術の向上を図ることで、安定した処理水質を実現しています。COD、窒素、リンの水質総量規制制度が施行されている東京湾をはじめとした閉鎖性海域への工場からの排水負荷削減を継続的に進めています。
  3. 効果的な水利用の推進
    各事業所、国内外グループ会社に対し、取水・排水などに関わる水リスクの調査を行い、諸課題を抽出し、リスクの評価・管理を行っています。また、事業所から海・河川などの公共用水域への排水について、水質の維持・向上はもとより、用途別に水のより効率的な利用を検討して、使用量の削減に取り組んでいます。

水使用量の推移(住友化学グループ)

(百万トン)
 2018年度2019年度2020年度
住友化学グループ 950 1,017 980
 (内訳1)      
住友化学 255 267 249
国内グループ会社 688 743 723
海外グループ会社 7.34 7.40 7.99
 (内訳2)      
海水 848 918 878
淡水 102 99.4 102

(注)・水使用量には海水を含む
  ・住友化学の工場で、工業用水と地下水の取水量が一部含まれていないことが判明し、2018年度および2019年度における住友化学および住友化学グループの数値を修正している

排水無害化の取り組み(三沢工場)

三沢工場の排水は、一般的な活性汚泥処理法の後に、凝集沈殿により浮遊物質などの除去や活性炭吸着の三次処理を終えた後、分析計を用いた水質監視を行い、公共用水域に放流しています。

  • 活性汚泥処理施設

吉岡泉の有効活用および管理(愛媛工場)

吉岡泉の名前はここに吉岡家の住居と池があったことに由来しています。水不足で苦労していた川東地区に水を供給するため、地域住民により1917年に造られ、1921年に用水路が完成しました。その後、いくつかの企業の所有を経て、現在では当社が管理を行っています。
吉岡泉は標高差を利用した動力のかからない水として、当社の重要水源だけでなく、灌漑用水としても市内各地区で利用されており、水環境維持のため愛媛工場では週3日程度の泉や敷地内の清掃および除草を実施しています。

  • 現在の吉岡泉

水関連問題の評価の実施

住友化学グループでは、水需給リスク、水質汚濁への脆弱性リスクの二つの観点から、各生産拠点における水リスクの評価を実施しています。

水需給リスク評価

プラントが立地している地域のベースライン水ストレス、地下水ストレス、季節による水供給変化量干ばつ深刻度、流域の水貯留力、将来的な水ストレスの変動、流域の水源地の保護割合を評価

水質汚濁への脆弱性リスク評価

飲料水へのアクセス未達率、水質汚濁、下流域の保護地域、淡水域のIUCN(国際自然保護連合)指定の絶滅危惧種の生息を考慮し、水需給および脆弱性を評価

上記の評価の結果、水リスクが高いと評価されたプラントについては、今後リスク低減に向け具体的な対応を実施していきます。

高い水リスク地域での生産活動継続の取り組み(住友化学インド)

住友化学グループは、世界各地で広く事業活動を展開していますが、その中には「Aqueduct 水リスク地図」によって、高いベースライン水ストレス(物理的リスク)と分類される国、地域で生産活動を行っているグループ会社もあります。住友化学インドのバーヴナガル工場も、その一つです。

バーヴナガル工場は、生産に必要な水の確保のため、地元の自治体から河川水を購入していましたが、近年、周辺地域の人口の増加、農業用水の需要増に加えて年間降水量の減少などの理由から、生産活動に必要な水量の確保が難しい状況となっていました。

そこでバーヴナガル工場では、周辺自治体が処理している家庭排水の一部を購入し、自社内でその排水を処理し、生産に利用することとしました。バーヴナガル工場は、まずその家庭排水を工場まで輸送する2kmにも及ぶ配管を敷設しました。さらにユニークな点は、排水処理の方法として、一般的な活性汚泥法ではなく、家庭排水の汚染分を養分としたミミズ養殖(Vermiculture)の技術を採用したことです。

この取り組みによって、従来自治体から購入していた河川水を70%以上削減することができ、生産活動に必要な水量を安定的に確保するという工場の長い間の課題を解決するとともに、水購入費も半分程度に抑える経済効果も達成することができました。

ミミズの養殖による汚水浄化風景

CDP「水セキュリティAリスト2021」

水セキュリティ対応で特に優れた活動を行っている企業として、CDPにより2年連続で最高評価の「水セキュリティAリスト2021」に選定されました。水リスクや生物多様性への対応などの水セキュリティ情報を開示した約3,400社の中から、Aリストに選定されたのは、世界では119社、そのうち日本企業は37社です。